1995年に日本で開始されたプラスティネーション発明者のグンター・フォン・ハーゲンス氏の人体展
『Body Worlds』 (日本では最初『人体の世界』、次に『人体の不思議展』(初代) の名称で開催) が、2002年頃から出現した中国系の海賊版人体展 (日本では現在の『人体の不思議展』) に取って替わられたり市場が乗っ取られるという現象は日本に限らず海外でも起こっている事である。
それらに共通しているのが、中国から来た死体の出所も死因も献体の意思の有無も人体展主催者が把握していない、又は把握していると断言しながらその証明を全く行なわないか、書類の捏造を行なう例もあるなど、中国系の人体展の主催者が死体の出所の証明を行なった例が未だかつて一度もない事である。
そして米国とフランスの例では主催者が人体の出所を全く把握しておらず、中国側の口頭の説明を鵜呑みにしているだけで、人体供給元の業者の住所も知らず、その相手が実在する組織かどうかも把握しておらず、相手が中国だけにその証明の手段を持ち合わせてなく、ただ中国側の主張を繰り返すという状態だった。
2007年以降には米国各地で批判運動が起こり、各州で人体展規制法案が議論され始めるなど法的規制の動きも出て来ているが、労改基金会などの人権団体や、欧米の報道メディアや司法機関の調査の結果、中国公安局発の人体闇市場の存在が明らかになって来た。
中国人は遺体を傷つける事は不吉と考えるために医学献体や臓器提供が殆ど出ない状況で、医大の実習用献体も慢性的に不足しているため、死刑囚を用いるのは普通に行なわれており、移植用臓器の95%が死刑囚から取られている事は2005年のWHO会議で中国衛生局が公式に認めている。
そして欧米メディアや司法機関の調査では、公安局が死体ブローカーを介して各医大に「身元不明死体」を配布しそれが人体工場に転売されている事が明らかになっている。
その日の朝に死んだという、腹が切り裂かれ臓器が取られた銃殺死体が人体工場に配布されたという証言もあるが、これはつまり処刑死体から臓器を取られた余りが人体工場に配布されているという事を物語っている。
人体の出所が不明であるという事はこれは大きな問題であり、人身売買や死刑囚使用、死体盗難、殺人、医療献体の無断転用など、人権侵害や犯罪組織絡みの可能性すら払拭出来ない、倫理的に問題大ありの展示会 というのがその実態である。
展示会場に表示されている「故人の意思による献体」という耳障りの良い文言の裏には、中国の刑務所を管轄する中国公安局発の闇の人体売買の世界規模のネットワーク があり、今世界ではその疑惑の展示会を法的に禁止する動きが活発化している。
本シリーズは、この世界規模の人体展とその供給元である中国の人体闇市場をその全貌から見るために、主に英語や中国語など複数の言語の資料を一括して検証するために、それらを日本語に訳してデータ資料として提示し、証拠能力のある検証資料とする事を目的としているため、全体的に規模が大きく詳細にわたったエントリーであり、軽く読み流して概略を把握したい方には余り適してはいない。
しかし、世界の人体展と中国の人体闇市場の問題に関心のある方がより詳しく正確にこの問題を把握するための資料として役に立てればと思う。
目次:
特集『人体展と中国の人体闇市場』
特集シリーズ1「ABCニュースの報道から見る人体展問題」
1.
プラスティネーション発明者が中国から撤退 (2008.7.25)
2.
ニューヨーク州検察が人体闇市場の調査を開始 (2008.8.1)
3.
中国人人権活動家が人体展示に関して深刻な問題を提起する (2008.8.9)
4.
『20/20』の報道を受けて、議員達が人体展に関する徹底調査を議会に要求 (2008.8.20)
5.
人体輸入取引規制法案を全米21人の議員が支持 (2008.9.8)
6.
ニューヨーク州検事総長による人体展への厳重取り締まり (2008.9.13)
7.
大連のプラスティネーション死体企業の調査 (2008.9.28)
8.
ペンシルバニア州で人体展禁止法案を検討 (2008.10.14)
9.
カリフォルニア州の人体展禁止法案 (2008.11.9)
10.
プレミア社の献体同意書はニセモノだった (2008.12.22)
アップデート追加エントリー「2009年に入って以降の動き」
1.
ハワイ州で人体展禁止が法制化 (2009.8.8)
2.
フランスの裁判所、人体標本の展示に中止命令 (2009.8.12)
3.
プレミア社の経営悪化で株主が反乱 (2009.10.13)
番外編
1.
欧米の人体提供者は自らポーズを選んでいる (2008.9.2)
2.
「人体展:彼等はどこから来たのか?」米ABC"20/20"の特集番組 (2008.9.20)
特集シリーズ2「人体の不思議展の闇」
1.
南京死体事件と日本の『人体の不思議展』(1) (2009.10.27)
2.
南京死体事件と日本の『人体の不思議展』(2) (2009.11.6)
3.
『人体の不思議展』の謎の主催者 (2010.2.14)
4.
『人体の不思議展』の終了と告発 (2011.1.31)
番外編
1.
読売新聞社が人体の不思議展を擁護? (2010.1.26)
特集シリーズ3「中国の人体闇市場」
1.
プラスティネーション人体巡回展のビジネスモデルは日本製 (2011.2.13)
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当ブログでは2年半前から「人体展と中国の人体闇市場」と題して、中国系のプラスティネーション人体標本展が世界で展開する展示と人体売買ビジネスの裏に、中国公安局発の人体ネットワークが存在している疑惑に関して、欧米メディアや中国メディアの報道や、中国人権団体や米国司法の調査レポートなどを検証してまとめて来た。
そして第二シリーズではその人体ネットワークと繋がりのある日本の「人体の不思議展」の不透明な運営形態と人体の出所の謎に関して得られる限りの情報を総合して、主催者側の「人体標本は献体」との主張に根拠がない事を指摘して来た。
昨年12月に「人体の不思議展に疑問をもつ会」が中心となった反対グループによって「人体の不思議展」が死体解剖保存法などの法律に違反している疑いがあると刑事告発がされていたが、2月1日に京都府警が、7日に石川県警が正式に受理し捜査を開始したと報じられている。
今回は第三シリーズとして、人体展示の社会的問題が中国で言われ始めた2003年まで遡って、中国やヨーロッパの報道を中心に数回の特集にしてみようと思う。
現在のような国際社会からの倫理問題に対する批判や疑惑がまだ追求されていなかった時期に、それに対する明確な対策方針のなかった当事者達が何を発言しているかというものに何かヒントが隠れている事がある。
今回は第一回として、2003年までのプラスティネーション人体巡回展の成立に関する概略を時系列で見てみる。
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23日まで京都で開催されていた「人体の不思議展」に展示されている人体標本を厚生労働省が「遺体」との見解を出したニュースが19日に報じられ、更に同日に京都の教授が人体の不思議展実行委員会を提訴するなど、先日突如「人体の不思議展」が話題になり、当ブログの人体展関連エントリーや関連したYouTube動画にも相当数のアクセスがあった。
ミクシィのニュース日記やはてなブックマーク、2ちゃんねる辺りでも一部、なぜこの時期にこの問題が浮上し、どういう意図で訴訟が行なわれたのかが全く理解されてなく、今頃になってどうしてとか、宗川教授を批判する声も目立っていたので、この経緯に関してある程度詳しく解説してみようと思う。
11月に「人体の不思議展」が打ち切りを発表している
これは実際突然降って湧いた話ではなく、2006年以来の全国各地での批判運動の結果、4年半経ってようやく行政が動いた という事である。
右の写真の京都展の案内にも「最終公開」と表示されているように、「人体の不思議展」は京都展開催前月の昨年11月初めに2012年で開催を打ち切る事を発表している。[>>1 ]
2002年に開始した「人体の不思議展」に対して開催各地の医師や市民グループによる批判声明が出されるようになったのは2006年以降であるが、特に2008年からは
全日本民主医療機関連合会 (全日本民医連) と
全国保険医団体連合会 (保団連) の各地支部が「人体の不思議展」の各地の開催の度に批判や開催中止要求声明を発表するようになった。
それまでは主催や後援に地元メディアや自治体、教育委員会や医師会などが鈴なり状態だったのが、2008年には後援団体が開催前に降りてしまうケースが相次ぎ、その後には後援が全くつかない状態になっていた。[>>2 ]
そういった状況の中、昨年8月の金沢展に対しそれまでの民医連と保団連に加え、石川県医師会と金沢市医師会が反対声明を発表、10月に日本解剖学会が「人体標本の展示に関するガイドライン」を策定、それに続く12月の京都展に対し10月に京都府医師会から開催中止要望が出されるなど、「人体の不思議展」側が開催の継続が今後困難になると判断したのではないかと思われる。
写真:2010年12月4日から2011年1月23日まで京都市勧業館みよこめっせで開催された「人体の不思議展」京都展。
(トーカイブログ)
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『人体の不思議展』で展示されている中国製の人体標本は「生前の意思による献体」と主催者側は説明しているが、日本の『人体の不思議展』が中国で社会問題になり南京蘇芸生物保存実験工場が公安警察の取調べを受けるなど事件となった2003年当時の中国での報道を見たところ、日本に輸出された人体の出所が全く謎であり、これが献体との説明が成り立たない事は前回の2エントリー で扱った。
また同展示会は実質的な運営者、つまり人体標本の法的所有者および企画運営者の実体が表に出て来ない非常に不思議な運営体制であるが、今回はその謎の運営団体に関して扱ってみる。
画像:2003年の東京展のチケット (人体の不思議展実行委員会/日本アナトミー研究所) (クリックで実サイズ)
[A]
主催には地元メディアが名を連ねる
2007年の長野展。主催はNBS長野放送/信濃毎日新聞社/キョードー北陸。 (クリックで拡大) [B]
1999年にグンター・フォン・ハーゲンス氏の『人体の不思議展』(Body Worlds) が契約トラブルで日本から撤退した後[>>1 ] 、中国から人体標本を調達して2002年に開始した現在の『人体の不思議展』であるが、その全国ツアー展示会の主催は各展示会ごとに、各地元の新聞社や放送局などのメディアが名を連ねるという形式 で行われている。[>>2 ]
その中で、過去の展示の記録を遡ってみると、主催や後援には各開催地の地元メディアや組織や医師会等が名を連ねている中、開催場所を問わず主催や企画運営でコンスタントに登場する名称が「日本アナトミー研究所」「マクローズ」「イノバンス」「人体の不思議展監修委員会」「人体の不思議展実行委員会」である。
しかしこれらのコンスタントに登場する組織はどれ一つとしてウェブサイトを持たず 、展示案内に記載されている問い合せ先の電話番号も各開催毎に設けられた臨時のもの であり、企業概要等の情報も示されず、これらがどういった形態の組織なのかも、『人体の不思議展』のウェブサイトや展示案内、各展示の主催者である各地元メディアの宣伝においても言及される事はない。
そして上記で挙げた組織をそれぞれの名称で検索をしても、『人体の不思議展』以外の業務実態が見つからないため、これらは人体展専門に作られた企業又は組織と見られ 、企業情報もその実体も表に出て来ない謎の主催者なのである。
いずれにしても『人体の不思議展』とはどこの誰が運営しているかが示されていない正体不明の展示会という形でこの8年ほど運営されているのである。
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一昨日の1月25日に突然「人体展と中国の人体闇市場」等のキーワードによる160件を越す検索アクセスがあり、何事かと思っていた。
このキーワード「人体展と中国の人体闇市場」とは、米国ABCニュースの報道特集番組『20/20』の「Human Bodies On Display -- Where Did They Come From?」(展示される人体:彼等はどこから来たのか?) の動画に日本語字幕を付けてYouTubeにアップ した際に、邦題として当方が付けた動画タイトルである。
現在世界や日本の人体展で問題となっている「中国から来た死因も出所も不明な死体」というこの番組のテーマをより明確に伝えるために、原題にはない「中国の人体闇市場」の文言を敢えて加えた。
そしてこれは当ブログで一昨年の夏から連載している人体展に関するリサーチエントリーのシリーズタイトルとしても採用した。
こういう場合はどこかアクセス数の多い掲示板等にURLリンクではなくキーワードが書き込まれ、それで検索する人が殺到したという事になる。
調べてみたところ、読売新聞ウェブサイトの女性向けコーナー『大手小町』 の『発言小町』 という掲示板に「人体の不思議展」という題名のトピ が1月23日に立てられ、そこに1月25日の11時過ぎに「『人体展と中国の人体闇市場』で検索してみて下さい。衝撃の事実にショックを受けた」 と、確かそういった内容の一行の書き込みがされているのを見付けた。
「人体展と中国の人体闇市場」でGoogleやYahoo!検索をすればABCニュースのYouTube動画と当ブログがトップにヒットするため突然160ものアクセスが来たという事のようだ。
この『発言小町』のトピ は1月23日に開始された『人体の不思議展』熊本展に関して、展示に関心のある人が行った事のある人に情報を求めるという内容であり、そこには80を越すレスが付き、その内容は賛否が半々というものである。
しかし当方がこの『発言小町』のトピを発見した段階 (1月26日5:50頃) ではその「検索して下さい」の書き込みは読売側によって削除 されており、その時点ではGoogleキャッシュにまだ残っていたため発見出来たという事である。
当ブログのアクセス解析では「人体展と中国の人体闇市場」によるキーワード検索が25日11:15に始まり21:30で途絶えているので、25日の21:30頃に削除されたと見られる。
それにしても、見た限りでは賛否両論の書き込みを載せるという体裁をとっている読売新聞は何故この「検索して下さい」の書き込みに限って削除する必要があったのだろうか?
この日の検索アクセスの大半を占めたGoogleとYahoo!では「人体展と中国の人体闇市場」で検索すると以下のような結果となる。
この検索結果を見るだけでそれぞれのサイトを見なくとも、このキーワード検索で出て来るものは人体展に対する疑惑と事件性の印象を非常に与えるであろう文言で埋め尽くされている。
当ブログは『人体の不思議展』に展示されている中国産の人体標本が献体である事はあり得ないという、中国と欧米での報道を根拠とする調査発表 を既に行っている。
一方ABCニュースの番組の内容は日本の『人体の不思議展』と直接の関わりはないが、中国の死刑囚の銃殺死体取引現場の写真や大連の秘密人体工場など見る人に与えるインパクトは絶大である。
つまり読売新聞が隠したかったのは核心に触れる情報 である。一般の印象の批判論はOKでも中国の闇市場から来た死体では駄目なのである。
これには理由がある。
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プラスティネーション発明者のハーゲンス氏が日本で開催していた『人体の不思議展』(1995-99) に取って替わる形で2002年3月に開始した『新・人体の不思議展』は中国の南京蘇芸生物保存実験工場から人体を仕入れており、その死体の出所に関して主催者側はこれまで一貫して「中国国内で正規の手続きを経た献体」と表明、そして「中国の大学と提携」や「南京大学からの献体」と度々説明、そしてその証明の要求に対してはプライバシーを理由に献体の証明を一切行わないという状態で7年ほど展示が行われている。[>>1 ] [>>2 ]
『(新) 人体の不思議展』には当初、協力団体に江蘇省教育委員会、南京大学、そして南京蘇芸生物保存実験工場の名義がリストされていたのが[>>3 ] 、2003年9月に中国で日本の『人体の不思議展』で南京から来た死体が展示されていると報道され社会問題となり、南京蘇芸工場が南京警察当局の取調べを受けるなどの事件に発展、そして江蘇省教育庁と南京大学は双方共に『人体の不思議展』に協力した事も死体を提供した事もないと関わりを完全否定。
そして渦中の南京蘇芸工場は南京警察当局に対し南京医科大学から人体を入手したと供述、そして問題の南京医科大学は1998年から2000年にかけて蘇芸工場に医学教育実習で使用した死体の余りを提供し人体標本の加工を依頼した事はあるが、それらは献体ではないと表明 したと当時中国ではそのように報じられている。
以上が前回エントリー の概略。
【続きを読む】
昨年後半に、中国発の人体闇取引ネットワークとアメリカのプラスティネーション人体展の死刑囚使用の疑惑に関するABCニュースなどの報道を軸に特集を組んだが、結局のところ相手が中国という、国家ぐるみで犯罪荷担や隠蔽工作をやってしまう国が相手だけに、限りなくグレーに近い状態ながら決定的な証拠というものが得られないため、疑惑まみれの人体展は現在でも「生前からの意思による献体」や「科学教育目的」という耳障りの良い文言の下に開催されている。
昨年のシリーズは主に、最近米国の司法や各州議会が人体展の法的規制に動き出したという、最近の社会的反響と取締りに関するニュースを中心に扱ったが、今回は人体展示の社会的問題が中国で言われ始めた2003年まで遡って、中国やヨーロッパの報道を中心に数回の特集にしてみようと思う。
現在のような国際社会からの倫理問題に対する批判や疑惑がまだ追求されていなかった時期に、それに対する明確な対策方針のなかった当事者達が何を発言しているかというものに何かヒントが隠れている事がある。
本エントリーでは2003年に日本の『人体の不思議展』が中国で社会問題になった時の現在入手出来る限りの記事を集め、一連の報道の全貌からこの問題を検証してみる。
「人体の不思議展」と「新・人体の不思議展」
1970年代にプラスティネーション生物保存技術を発明したグンター・フォン・ハーゲンス氏が、人体標本の興行展示
『ボディワールド』 (Body Worlds) を開始したのは1995年の事で、その世界初の展示会は1995年9月15日に上野の国立科学博物館でスタートした東京展で『人体の世界』の名称で開催
[>>1 ] された。
この時の日本側の協力者はハーゲンス氏と親交のあった解剖学者の
養老孟司 氏である。
『ボディワールド』は11月26日に東京展を終了し全国巡回展示の後、そのまま北米など他国での展示を継続、それを再び日本に呼び戻したのが安宅克洋氏で、1997年に『人体の不思議展』の名称で全国巡回展を開催。[>>2 ]
しかし翌年1998年にハーゲンス氏が契約不履行で安宅氏を訴え1999年2月に「不思議展」は終了。
その後、安宅氏は中国の南京蘇芸生物保存実験工場から人体標本を調達し、「人体の不思議展監修委員会」と「日本アナトミー研究所」の主催と「株式会社マクローズ」の企画運営で2002年3月21日に大阪の新梅田シティミュージアムで『新・人体の不思議展』の名称で開始したのが現在の『人体の不思議展』である。
[>>3 ] [>>4 ] [>>5 ]
ハーゲンス氏はこれを「模倣展」とし、プラスティネーション技術のみならず、人体のポーズの付け方までが知的財産権の侵害と主張、それに対し日本アナトミー研究所の安宅克洋氏は、南京蘇芸の標本の製法は全く違いハーゲンス氏の技術を盗んだものではないと主張。[>>6 ]
この中国製の人体標本の保存技術は「プラスティネーション」ではなく「プラストミック」という名称で、南京蘇芸工場のウェブサイト等の説明によれば、超低温下で浸透させ1年以上かかる「プラスティネーション」に対し、「プラストミック」は常温で行い倹価であるというもの。[>>7 ] [>>8 ]
『人体の世界』東京展 (1995.9.15-11.26) の主催・後援、協力団体:
[主催] 国立科学博物館 日本解剖学会 読売新聞社
[後援] 文部省 厚生省 ドイツ大使館
東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県各教育委員会(予定)
[協賛] エーザイ株式会社
[協力] ハイデルベルク大学
『新・人体の不思議展』大阪展 (2002.3.21-9.29) の主催・後援、協力団体:
主催:読売テレビ/人体の不思議展監修委員会/日本アナトミー研究所,
後援:日本赤十字社/日本医学会/日本医師会/日本歯科医学会/日本歯科医師会/日本看護協会/大阪府・市教育委員会/大阪府医師会/大阪府歯科医師会/大阪府看護協会,
協力:南京大学/江蘇省教育委員会/南京蘇芸生物保存実験工場 /日本通運/ウエスト/エースプロモート/フォレストアート,
総合企画・運営:マクローズ,
標本製作:南京蘇芸生物保存実験工場
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2005年以来南北アメリカ大陸、ヨーロッパや韓国など世界各地でプラスティネーション人体展を開催している世界最大の展示企業、米国のプレミア・エキシビション社の人体展『BODIES展』(BODIES... The Exhibition) で中国の死刑囚が用いられている疑惑が昨年2月にABCニュースで報じられ、8月には同社の人体展『人体の暴露展』(Bodies Revealed) での献体同意書が偽装だった事が発覚するなど、中国から入手している人体を展示しているこの企業には常に疑惑が付きまとっているが、この企業は昨今は株価が暴落し、株主反乱で経営陣が交代したりなどかなりガタガタな状態のニュースが昨年以来継続的に報じられているため、今回はプレミア・エキシビション社の内部騒動に関して扱ってみる。
プレミア・エキシビション社は1980年代に合資会社「タイタニック・ベンチャーズ社」としてタイタニック号の遺品引上げと展示を行う企業として設立され[>>25 ] 、1991年より『タイタニック展』を開始[>>27 ] 、1993年に「RMSタイタニック有限会社」として法人化[>>1 ] 、2004年7月に英国ブラックプールで人体展『人体の暴露展』を開始した後、同年10月に株式会社『プレミア・エキシビション社』となり[>>2 ] 、RMSタイタニック社を100%所有の子会社とし、2005年3月に大連鴻峰生物科技社から人体を入手していた「エキシビション・インターナショナルLLC社」を買収し[>>3 ] [>>4 ] 、プラスティネーション発明者のハーゲンス氏の『ボディワールド』に対抗する形で人体展市場に参入。
プレミア社は現在3種類の人体展、『人体の暴露展』 (Bodies Revealed) (2004年7月開始)、『BODIES展』 (BODIES... The Exhibition) (2005年8月開始) と『Our Body展~内部の宇宙』 (Our Body: The Universe Within) (2006年6月開始) を運営する他、『タイタニック展』 『スタートレック展』 『Dialog in the Dark』 など日本でもお馴染みの展示会を国際規模で開催する、世界最大規模の展示会イベント企業であり、現在は19の人体ショーを同時開催するなど人体展示でその収入源の67%を賄っている文字通りの人体展企業である。[>>5a ]
プレミア社絶頂期の2007年4月10日、ナスダックのNY証券取引所でクロージングベルを鳴らすアーニー・ゲラー前代表 (Nasdaq) [B]
日本の『人体の不思議展』と同様に、プラスティネーション発明者のグンター・フォン・ハーゲンス氏のコピーキャットである中国の人体工場を人体標本の供給源としているプレミア社は、2006年に中国からの人体の安定供給に対し2500万ドルを大連鴻峰社に支払う事に合意、当時から人体展の市場飽和の予測と中国での人体の出所の怪しさが言われていた
[>>26 ] にもかかわらずアーニー・ゲラー代表は人体展による世界市場進出を画策、『タイタニック展』を上回る売り上げ実績への抱負を2006年当時には語っていた。
[>>6 ]
そして2007年7月にはプレミア社の株価は最高値の18.62ドルを記録、順風満帆に見えた矢先の2008年2月にABCニュースがプレミア社が中国の死刑囚を展示しているとの疑惑をスクープ、同年5月にはニューヨーク州のクオモ検事総長がプレミア社が死体の出所を自ら証明出来ないという調査結果を公表[>>7 ] 、全米で反対運動や各州では規制法案が検討されるなど人体展への批判と悪評判が立つとともにプレミア社の株価は暴落し、2008年11月には最高値に対して95%下落した最安値を記録している。[>>8 ]
また「博物館クオリティの展示会」と評されているプレミア社の展示には高額な運営・維持費がかかり、昨今の景気後退と展示内容のマンネリ化から集客集が減退し、2009年度には赤字に転落している。[>>9 ]
またプレミア社はその創設時からのプロジェクトである『タイタニック展』における総額一億ドルの価値のある引上げ品5500点に関して、その所有権に関する長期化した裁判を抱えており、業績悪化や相次ぐ管理職の辞職から、2008年11月にプレミア社の筆頭株主のセラーズ・キャピタル社がプレミア社の経営悪化に対し、株価暴落の問題に加え、肥大化した組織構造、タイタニック裁判の失敗と計画性のなさ、身内びいき等の問題 を指摘し[>>10 ] 、ゲラー氏の経営の失敗及びその126万ドル (約1億1300万円) の法外な報酬を理由に経営陣の交代とゲラー代表の退任を要求してプロキシーファイトを仕掛け、株主総会の支持を得て、1月30日にゲラー氏がCEOから更迭され、そしてセラーズ社が推薦する役員4名がプレミア社の経営陣に加わっている。[>>11a ]
この経緯は一般メディアでは余り報じられていないが、アトランタの地元のビジネス紙『アトランタ・ビジネス・クロニクル』で継続的に報じられている。
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人体展関連アップデートエントリー第二弾は、前半は今年の4月にパリの裁判所で人体展示は違法との判決が出され、フランス国内で展示開催中であったプレミア・エキシビション社の人体展『Our Body展~内部の宇宙』 (Our Body: The Universe Within) に中止命令が出されたニュースに関して、そして後半はこれまでの情報にフランスのニュースを加えて見えて来た中国発のプラスティネーション人体ネットワークに関しての検証を扱ってみようと思う。
フランス初の人体標本展となるプレミア・エキシビション社の『Our Body展』が2008年10月にリヨンでその展示を開始する5ヶ月前、開催が決定された2008年5月には既に、フランスの国家倫理諮問委員会が、ホロコーストの人体実験を彷彿させる倫理的に好ましくない展示[>>1 ] との見解を発表 し、当初パリ展で開催が打診されていたラ・ヴィレット公園にある『シテ産業科学博物館』 やパリ16区にある『人類博物館』 が人体展受け入れを拒否したり、地元の『リヨン・キャピタル』紙が人体展に関する批判記事の大々的な特集を組んで大きな社会問題となり[>>2 ] 、リヨンでは知識人が人体展開催反対の署名運動を行う[>>3 ] など、さすが人権の国フランスの面目躍如たる物と言うか、開催決定早々から活発な論議と反対運動が起こっている。
そしてパリ展が始まって1ヶ月半の4月4日に二つの人権団体が、死体を学術的目的でない営利展示に切り刻んでに使用する事は人体の尊重に関するフランスの民法に違反しており、特に中国の人権状況においてそこから来た出所の不明な死体を用いる事は倫理に反する という主旨の、人間の身体への不可侵と売買禁止に関する主張で、『Our Body』のフランスでの主催を行うイベント会社『アンコールイベンツ』を相手取って訴訟を起こし、4月21日に人体展に対し中止を命じる判決が下されたものだ。
訴えを起こした『共同反死刑』 (Ensemble Contre la Peine de Mort; ECPM) は2000年10月にパリで発足したその名の通りの死刑反対団体で、『仏中団結』 (Solidarité France-Chine) は中国の民主化運動の支援団体であり、双方とも中国の人権問題がその中心的活動の団体である。[>>4 ]
この判決の根拠としては、フランスには2008年に制定された「人間の尊厳は死によって消滅せず、医学的・研究的必要を除いて遺体を損ねてはならない」という法律があり、解体した人体を興行展示する行為は違法行為[>>5 ] として、24時間以内の中止と人体標本の没収を命じており、この判決はフランス国内の全ての博物館の人体標本や骨にも適用されるというものだ。
これに対しアンコールイベンツ側は展示会を中止し、不服申し立ての控訴を行ったものの、4月30日に控訴院にて、人体の出所と献体同意の存在の証明をアンコールイベンツが行わなかったとの理由で控訴が棄却され[>>6a ] 、フランス国内での人体展開催が事実上禁止されるという流れになっている。
写真:『Our Body』のパリ展が行われた『エスパス・マドレーヌ』。判決のあった2009年4月21日の晩。
(攝影:王泓/大紀元) [A]
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昨年後半に、米国の人体展が中国の公安局と官営企業が絡んだ人体闇市場からプラスティネーション人体を入手し、そこに死刑囚の銃殺死体が利用されている疑惑に関して特集を組んだが、今年に入ってから新しい動きがあるのでアップデートとして追加エントリーを数本書いてみる。
昨年の2月にABCニュースの『20/20』が綿密な取材で中国の人体闇市場をスクープして以来、疑惑の火中にある米国のプレミア・エキシビション社が運営する人体展の一つ『BODIES展』(BODIES... The Exhibition) が昨年6月14日から今年の1月18日までハワイで開催された事を受け、1月21日にハワイ州下院財政委員長で日系2世のマーカス・オオシロ (大城) 議員が、人体の売買と商業展示を禁じる法案を提出、3月10日に下院を通過、4月14日に上院を通過、5月5日に両院の最終承認を受け、6月12日にリングル知事の承認を経て法制化となり、
ハワイ州が全米で初の実質的な人体展禁止法を制定した州 となっている。
全米各地で開催されているプレミア社の人体展『BODIES展』と『人体の暴露展』(Bodies Revealed)は、その開催地各地で倫理的・宗教的な見地からその都度社会的問題になり、それにABCニュースのスクープが拍車をかけ、既に昨年よりフロリダ、ニューヨーク、ペンシルバニア、ワシントンなど全米各州や連邦議会で人体取引規制や人体展禁止法案が検討されるなど法制化の動きが出て来ているが、うちカリフォルニア州では法案が提出され議会の承認を受けながら「優先順位が高くない」の理由で知事のサインを得なかったという段階まで至っており、今回のハワイの前例から今後は全米でこの動きが進む可能性もある。
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