Red Fox

オリンピックの魂がイギリスにやって来る (英インデペンデント紙)

 6日のロンドンの聖火リレーは前例がない位に1000人規模の激しい抗議デモの中行われたのはもう世界中で報じられていますが、今回は地元イギリスの新聞のインデペンデント紙の記事を紹介します。

 インデペンデント紙は1986年、デイリー・テレグラフを離れた記者3人によって創刊されたイギリスの日刊全国紙で、政治的にどこにも属さないという意味でこの名称のようですが、実際は中道左派のリベラル層をターゲットにしている新聞です。

 ここで言及されているのは、ロンドン市民の怒りが中国に対してだけでなく、聖火リレーを受け入れたブラウン首相に対して向けられている事、それから抗議デモに参加したのはチベット問題の他ダルフールやミャンマー問題への抗議、それから法輪功関係者も加わったアンチ中国が勢揃いした形になった事などです。


オリンピックの魂がイギリスにやって来る
ジェローム・テイラー
インデペンデント 2008年4月7日

Reuters
五輪聖火ランナーがデモ参加者と格闘。ロンドンの聖火リレーで聖火ランナーのコニー・ハクさんからトーチを掴み取ろうとする抗議者
 警官は英国の80人の聖火ランナーを取り囲む事を余儀なくされ、オリンピックの形式を守る防護壁として、ついに中国大使まで駆り出された。中国の人権問題と、ダウンニング街での聖火リレー開催を決定したブラウン首相に対する、数千人の怒りに満ちた抗議者の攻撃の中、聖火は首都の町中を曲がりくねって進んだ。[1]
1. ダウンニング10番街には首相官邸がある

 「調和の旅」と題された130日間の世界の旅を、必死に演出していた英中両国の当局であるが、この珍劇を伴った大規模な警備の非常線によって、聖火リレーは彼等にとって公衆の面前での大恥のイベントとなった。

 聖火ランナーの一挙一動に付いて廻る頑強な警護を突破しようとした者に警官が体当たりをしたりなどして、時には聖火リレーが中断状態となり、昼下がりまでに35人が拘束された。各マイル毎に平均1人以上が逮捕された事になる。[2]

2. 1マイルは1.6km]


 昨日の朝、リレーは比較的順調に始まった。五回の金メダル受賞者のスティーブ・レッドグレーヴさんが第一走者としてウェンブリー・スタジアムからスタートした時は喜びのムードに包まれていた。しかしその後すぐに、2000人の警官と厳重な警備にも拘らず、怒りに満ちた衝突と大混乱のシーンが31マイルのイベントを圧倒した。

 レッドグレーブさんから次の聖火ランナーにトーチが渡されて5分も経たないうちに、「自由チベット」と叫んだ女性がオープンデッキバスに乗り込んだ聖火を奪おうとして逮捕された。


 その日で最も深刻な事件はラドブローク・グローブ地区で起こった。チベット支持デモ者が警備を突破してテレビタレントのコニー・ハクさんから聖火を奪い取ろうとした事である。

 その後ハクさんはその事件を気にも留めておらず抗議者に対しても悪感情はないとし、中国のチベットでの事件があったため、彼女は聖火リレーランナーを引き受ける事は心許なかったとそう話している。「彼にはとても強い信念があったし、この国の誰もが自分達の考え方を持つ権利があります」とハクさんはコメントした。


 更にルートに沿って、より多くの人達が抗議のために沿道にいた。10分経ってもう一人の抗議者が消化器で聖火を消そうとして逮捕された。そして、オックスフォード通りで聖火がオープンデッキ・バスで運ばれていた時、「自由チベット、自由な胡佳」と書いたプラカードを持った人権活動家のピ−ター・タッチェル氏が行く手に飛び込んだ。胡佳氏は中国の有名な人権活動家であり、先週木曜日の4月3日に「国家転覆煽動」の罪状で3年の判決を受け投獄されている。

 抗議デモ隊の多くがチベット支持活動家だが、その中には法輪功関係者や、スーダンやミャンマー政府をサポートする中国への怒りを持った人々もいて、それらの抗議者を避けるために、大会関係者はルート変更や聖火をバスで運ぶなど3回も予定変更を余儀なくされた。ラグビーのケニー・ローガン選手など聖火ランナー達は、聖火を持って走る代わりに赤いバスの上で赤と銀のトーチを持つ羽目になった。

 ロンドンの中国大使館への戦いの勝利の中に、傅瑩駐英中国大使はチャイナタウンの中を走った。抗議活動のためにリレーを辞退するように言われていたという噂があったにも拘らず。人権団体によれば、中国政府がチベットで数百人の殺害や拘束をした時に、中国に都合の良い宣伝に加担したとして、抗議者達は大使のリレーへの参加を非難していた。


 昨日の騒がしく混沌とした抗議はセント・ポール、大英博物館、ダウニング街でも起こった。数百人のアンチ中国デモ隊が首相官邸の外で警察と揉み合いになっていたので、ブラウン首相が閉ざされたゲートの中で、オリンピックチャンピオンのデニーズ・ルイス選手の持つトーチを迎える事を余儀なくされた。抗議者達はブラウン首相に、中国が人権問題を改善させない限り、聖火リレーと8月8日の開会式をボイコットするように要求している。「自由チベット」の叫びは首相官邸に反響し、首相は聖火に触れるのを控えた。

 しかし聖火を迎えた首相は集まった人々によって嘲笑された。サリー州から来た抗議者のタムシン・ツエリンさんは8年前にチベット人と結婚していて、ダウンニング街の反対側に娘と共に立っていた。「ブラウン首相が私達を無視し聖火を迎えたので非常に失望しました。政府にとっての優先は人権でなくビジネスなのです」と語った。


 青と白のトラックスーツを着て無線イヤホンを付けた中国人の「聖火防衛隊」は、首相官邸を離れウェストミンスター橋に向かったが、「恥の聖火」や「チベットに聖火は要らない」のスローガンの書かれたポスターやチベット国旗を持った500人以上のデモ隊からブーイングを浴びせられた。

 グリニッジの最終到着地に聖火が近付いた頃には抗議はある程度収まったが、警察は聖火ランナーの周りの厳重な警備を続けた。聖火リレーの一番長い中断はカナリー・ワーフから、ケリー・ホームズが聖火台に火をつけたO2アリーナまでの船の運搬であった。


 昨日の抗議活動は、今夜のパリと今週後半のサンフランシスコへの聖火が行く多くの場所での抗議の始まりに過ぎないと抗議者達は警告している。

 ビルマ・キャンペーンUKのマーク・ファーメナー代表は「これは中国へのPRクーデターであり、それは彼等の大失敗に繋がるものです。中国はオリンピックの背後に隠れる事が出来ない事を理解し、人権問題に取り組む必要があります」と述べた。

 聖火を追ってサンフランシスコに行く予定の自由チベット学生組織のラドン・テトン代表は「明らかに、この“調和の旅”は中国人が欲しているほど調和したものではありません。今日中国は多くの人々の前に敗北しました。聖火が旅を続ければ続けるほど抗議は大きくなります」と語った。


 聖火の次の経由地はパリで、それは今日の抗議、怒り、水浸しの通りとお笑いコメディを後に残す事となった。それはつまり、とても英国らしい日であった。

Taylor, Jerome. Olympic spirit comes to Britain. Independent, April 7, 2008. [魚拓]
訳:Red Fox

以下、同記事付録のポップアップ写真。

【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。

北京五輪採火式、中国国営テレビ局の生放送に幽霊?

北京オリンピックの灯火式から縁起の悪いニュースが入って来ました(笑)

北京五輪採火式、中国国営テレビ局の生放送に幽霊?
大紀元時報 2008.3.30 8:23

 【大紀元日本3月29日】北京五輪を通して国威宣揚と共産党当局の政権維持を狙い、中国国営の中央テレビ局・五輪チャネルは3月24日、ギリシャで行う北京五輪の点火儀式場面を生放送で中国全土に送った。しかし、北京市長がスピーチを始めた直後に発生した、儀式場に突入したフランスの「国境なき記者団」の抗議による騒動は、音声をカット映像も出席のVIPらに切り替えられ、中国国民には伝えられていない。

 昨年末に同チャネルの設立儀式で起きた司会者の妻が乱入して夫である司会者の不倫を全国中に暴露しながら、北京五輪は価値観が崩壊した中国には不適切だと揶揄した。この不祥事を教訓に、今回の点火儀式の生放送は、同チャネルが電波の伝送時間差を使って映像のフィルターリングを行っている。しかし、人間の計算は天の計算に及ばず、呪われたように、同テレビチャネルが放送したギリシャ人「巫女」が採火式を行うまで登場する場面に、ナチスドイツの将校を連想させる幽霊の姿が4秒間ほどはっきり映っている。目の錯覚と解釈しがちだが、奇妙にも「巫女」の進行を注視しているように見え、その顔は「巫女」の進行によって動いている。

 同映像は中央テレビ局五輪チャネルのサイトでも見られる(2分1秒ごろ、右側の「巫女」の右下に注目)。

 http://space.tv.cctv.com/act/video.jsp?videoId=VIDE1206355312284906

 中央テレビ局のウェブページから削除、または消された場合、動画投稿サイトYoumakerでも見られる。

 (2分50秒ごろ、画面右下に注目)

gwcorder99. 北京奧運的火採集儀式出現怪影. YouMaker, 2008-03-28 00:01:02.
* YouMakerの埋め込みはSafariやOperaなど幾つかのブラウザに対応していないため、再生されない場合は元サイトでご覧になれます。

 ギリシャで行う夏オリンピックの採火式は、1936年にナチス・ドイツ時期のベルリン・オリンピックで初めて行われた。儀式場は昨年8月、森林の火災により被害を受けたが、その後修復された。虐殺者の血まみれの宴会として、ベルリン・オリンピックを想起させる北京五輪採火式に現れたナチスの亡霊は、まさか天が世界に送った一つの警告ではないだろうか。

(報道・肖 シンリ)

(08/03/30 08:23)



 大紀元で言及されていた部分の他にもう2カ所映っている場面があるので計3カ所 (中央テレビでは0'47"-48", 2'01"-06", 2'24"-32"、YouMakerでは1'35-36"2'49"-54", 3'12"-20")

女性が一瞬左を見るので怪人物に気付いているように見える (中央テレビ 0'47")。


画面の左端。遠近感を考慮したとしても、それでも女性達と比べて怪人物の大きさが異様に小さいように見える (中央テレビ 2'26")。


この動画はYouTubeでも見られ、このバージョンは画面のロゴとテロップが違うので別な番組からと思われる (4'54"-55", 6'09"-13", 6'33"-40")

北京2008 オリンピア聖火式 - 儀式
BEIJING 2008 | Olympia Flame Ceremony - The Ritual (1/4)
(9'45")
Posted by ikarus366 (2008.3.24)

詳しいまとめビデオ
オリンピックの幽霊/化け物/時の旅人@灯火式2008
Olympic Ghost / Demon / Time Traveler @ Torch ceremony 2008
(2'20")
訳・字幕:Red Fox

Original: Dizazstar. Olympic Ghost / Demon / Time Traveler @ Torch ceremony 2008. YouTube, March 31, 2008.


やはり呪われたオリンピックのようです\(〇_o)/

【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。

中国の「太平洋分割管理」案 海外での報道は?

 昨年の8月17日にワシントン・タイムズ紙が、中国海軍高官が米太平洋軍のキーティング総司令官に対して「太平洋を東西に分割して管理しないか」と持ちかけたというニュースの記事を、当ブログで全訳を紹介した事がありましたが、最近そのニュースが公式なものになり、ここ数日日本のメディアで報じられ話題になっているので、この話題を再び扱ってみます。

 昨年8月にワシントンタイムズが報じた時点では、ポール・ヘスター太平洋空軍司令官がハワイから電話による取材で答えたという形であって、キーティング総司令官自身の言葉ではなかった点や、ソースがワシントンタイムズ一紙のみだったため、信憑性という点ではその時点では若干クエスチョンはあった訳で、今回キーティング総司令官が米議会上院軍事委員会の公聴会で証言した事から、このニュースの信憑性に決定的に裏付けがされたという事になります。

 また、「太平洋分割」に関しては、ワシントンタイムズの記事以前にも、以下の2007年7月24日のキーティング総司令官の記者会見の記録に似たような記述が見られるのは以前から確認していました。これは2007年3月に太平洋軍総司令官に就任したキーティング氏が同年5月に中国を初訪問した時の様子を語ったもので、この会見録は駐香港マカオ米国領事館のウェブサイトに掲載されています。

2007年5月、中国を訪問して北京空港で銭麗華将軍と面会するキーティング総司令官。(VOA Photo)



米国の対中関係 (2007)
米太平洋軍総司令官、ティモシー・J・キーティング海軍大将の会見
2007年7月24日 (火)
戦略国際問題センター(ワシントンDC)

(抜粋)
 我々が会った人民解放軍の幹部達は、中国が航空母艦を開発していると言っていました。我々は空母の開発に関して興味深い議論をしました。我々のうち数人は空母開発に関して詳しくない訳ではなかったので。私はアーキー・マニーで空母からの離発着は何度も経験していますが、それを彼等に話してノックアウトしました。それは見た目ほど簡単ではないのです(笑い)

 それは習得するのが難しい技術で時間のかかるものです。高費用で時間のかかる熟練が求められ危険な任務です。彼等はそれを理解し、米国こそが空母を開発する権利を持っているとそう言いました。

 彼等は、目に見える際立った形で国家の決断を示すシグナルとは、空母を港に入れる事以上にないと言いました。それは彼等が海軍に関する独自の見方を持っている訳ですが、それに関して彼等と議論するのは難しいです。

 また彼らは、エイブラハム・リンカーン空母が先ほど述べた津波の救援活動、人道援助、および災害救助でどれくらい有能であるかを指摘し、彼らは人道目的のために航空母艦を使用しても良いと言っています。

 我々の中国人ゲストは「太平洋の東を米国が、西を中国が面倒を見ると言う協力体制を持つのはどうか」と言いました(笑い)

 まあこんな事は馬鹿げた考えであると言わざるを得ませんが(笑い)(後略)

Consulate General of the United Stated Hong Kong & Macau. U.S. relations with the People's Republic of China (2007), July 24, 2007. [魚拓]
訳:Red Fox

 ここでは冗談めかして言っていたのが、8月のワシントンタイムズの記事のヘスター司令官のインタビューではもっとシリアスなニュアンスになっていて、そして今回の正式発表という流れになっています。


 ところで、この「太平洋分割」のニュースが日本で報じられたのは、昨年8月の時点では産經新聞のみだったのが、今回はいち早く共同通信とNHKが報じ、それに続いて朝日新聞、読売新聞、産經新聞と、日本の大手メディアが揃って報じているので、前回とは大分様子が違います。

日本のメディアの報道状況
太平洋の分割管理“提案” 中国海軍が米司令官に (共同通信 2008年3月12日 10:16) [魚拓]
中国 太平洋分割管理打診 (NHK 2008年3月12日 14:28) [転載]
ハワイから西は中国、東は米で? 中国軍幹部が提案 (朝日新聞 2008年3月12日 18:58) [魚拓]
中国海軍高官、太平洋の東西分割管理を米に「私的提案」(読売新聞 2008年3月12日 21:58)
中国、露骨な野心「太平洋分割管理」提案 (産經新聞 2008年3月12日 23:05) [魚拓]


 しかし、今回のキーティング総司令官の公聴会証言を報じている海外の英文ニュースは、日本の報道状況とはまた内容が違い、AP通信やロイター通信、AFP通信など欧米メディアは中国の二桁の軍事拡張に関する懸念と台湾問題に関しての記事ばかりで、「太平洋分割」に関して報じているメディアが全くなく、報道自体がAP通信やロイターなどの記事配信メディアに限られており、キーティング司令官の証言のニュースの扱い自体が大きくはないようです。


英語メディアの報道状況
米太平洋軍総司令官が中国の軍事費への懸念を表明 (AP通信 2008年3月11日) [魚拓]
米軍が中国の野望に対して「限られた」理解しかない事を認める (AFP通信 2008年3月11日) [魚拓]
米軍高官が中国への懸念を示す (ロイター通信 2008年3月11日 15:13) [魚拓]
米中のホットラインが関係の次のステップ (スター&ストライプ 2008年3月12日 10:16) [魚拓]
中国の軍拡が懸念を生み出す:米太平洋司令官 (台湾中央広播電台 2008年3月12日) [魚拓]


 つまりこの「太平洋分割」に関して報じているのは日本メディアばかりで、欧米メディアが気にしているのはむしろ中国の軍拡そのものと台湾問題という事になります。

 日本の一連の報道の元ネタになったのは恐らく以下の、香港マカオ米領事館のウェブサイトに12日付けで掲載された米軍広報記事ではないかと思われます。ここには太平洋分割案に関する記述があります。


【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。

毒餃子の天洋食品 蒸し器で人間を蒸す 女性従業員死亡



 毒餃子で疑惑の河北省の天洋食品で、昨年工場内の女性従業員が蒸し器に閉じ込められたまま翌朝まで放置、一晩蒸され死亡するという驚愕のニュースが報じられています。

中国製ギョーザ中毒事件 天洋食品で2007年、
19歳の女性従業員が死亡する事故
(5'29")
FNN (フジテレビ) 2008年2月5日 19:07

toshiyukiterui. 19歳女性従業員、蒸し器の中にいるときに機械作動→1日蒸され死亡(昨年)→天洋食品、表沙汰にせず. YouTube, February 5, 2008.
中国製ギョーザの中毒問題で、ギョーザが製造された「天洋食品」で2007年、蒸し器のある施設に閉じ込められた女性が蒸気をかけられ、死亡する事故があったことがわかった。
Tags: 中国 ギョーザ 餃子 天洋食品
(テキストで見る)


 日本で売られている中国産の冷凍食品は一体全体どういう環境で製造されていたのか? そもそも食品の蒸し器内に携帯電話を持ち込んでその中に携帯電話を忘れるという事自体が、天洋食品側が主張しているような「2度の身体検査があり、私物を持ち込むのは不可能」という厳重な管理体制では考えられない理由で女性が事故で死亡しているという事になります。それから遺族が何もテレビカメラの前で言えないというのは、どういう事なのか。

 この工場は3年前にも殺虫剤の事件を起こしているようです。

【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。

毒餃子事件、イギリスでの報道

 日本で中国の毒餃子がかなり大きな問題になっているようですが、このニュースが欧米でどのように報じられているかを見るために、記事を数本訳してみました。勿論これは日本国内の事件であるため日本のメディアが一番詳しく報じており、当事国の中国のメディアの報道の様子も日本のメディアである程度取り上げられているので、これらのイギリスの報道内容で特に目新しいものはないとは思いますが、それでもAP通信やロイター通信などの国際報道機関以外でこのニュースを一番積極的に報じているのが、先日からスパイ問題などで中国への不信感を露にしているイギリスメディアであり、Google英語ニュースで今日の時点で確認出来るものは他には、アメリカ、カナダ、タイ、フランス、オーストラリア、ブルガリア、スウェーデンなどでの報道ですが、『ザ・タイムズ』『フィナンシャル・タイムズ』『BBC』などの大手メディアが取り上げているのがイギリスに顕著です。

 それではまず昨年に中国のスパイ問題を特集して扱っていた『ザ・タイムズ』の2月1日の記事です。

写真:1月30日、越谷市のスーパーマーケット集配所から撤去される中国産の冷凍餃子 (AP Photo/Kyodo News)


From The Times
殺虫剤に汚染された中国産の餃子で数百人の日本人が中毒
リチャード・キンバー (東京特派員)
ザ・タイムズ 2008年2月1日

 数百人の日本人が殺虫剤に汚染された中国産の餃子を食べた後に中毒症状を訴え、日本各地の病院は、激しい頭痛、目眩や嘔吐に苦しむ人々の対応に追われている。

 スーパーマーケットや学校は輸入餃子を回収したが、中には中国産の食品の販売を全て見合わせている商店もある。

 安全への懸念から輸出への悪影響の危機に直面している中国当局は、日本政府に対し輸出前の検査では安全基準を満たしていたと再保証するために、中国食品安全局側が汚染の原因を調査を始め、餃子の製造と輸出が中止されている。関係者は輸出前の検査では安全基準を満たしていたと主張している。

 肉と野菜の餃子は日本で非常にポピュラーであり、その殆どが冷凍で中国から輸入されている。日本は輸入食品への依存率が非常に高く、中国や米国から大量の輸入をしている。

 人々の不安が拡大する中、日本政府は対策のための緊急会議を招集した。このスキャンダルはかつて最高の安全基準を誇った日本のメーカーの不祥事に続いて起こった。

 この餃子の輸入業者は日本たばこ産業の子会社であり、23種類の製品の餃子の大規模な回収を始めた。昨日、商品回収に関するニュースが日本中に広まった時、全てのメインテレビ局は視聴者に対し冷凍餃子を食べないように警告を発した。

 日本政府は、食品安全問題に関して中国との会談を行い、中国に調査団を送って餃子がどのように汚染されたかの原因を突き止める事で消費者に安全を再保証するように試みている。「国によってそれぞれ異なる安全基準があるとは思いたくありません。しかし『99%安全』であれば中国側では大丈夫であるという認識なのかもしれなせん。クレームにも拘らずこれらの事件は起こっており、私達は中国当局に何が起こったかの調査を求めています」と町村官房長官は述べた。

 日本の野党は、中国食品の安全に対しより厳しい政策を取らないように政府を批判している。民主党の羽田雄一郎議員は「日本人は餃子が大好きで、これは人々の生活を脅かすことです」と語った。

 中国にとってこの問題は、ペットフード、歯磨きやおもちゃなどの輸出の安全に関連する、以前から続いている一連のスキャンダルに更に追い打ちをかけるものであり、これは製造安全規格の改善に関してますます中国政府への国際社会からの厳しい目が向けられるものである。先月中国は輸出の安全に関するキャンペーンが成功したと発表したばかりである。

国民的現象

2006に日本に輸入された餃子は40500トン

全国一の餃子消費量を誇る「餃子の街」宇都宮に年間80万人の「餃子巡礼者」が訪れる

東京のフードテーマパークの池袋餃子スタジアムに餃子専門店が12店が出店している

ソース: japanguide.com; Quick Frozen Foods International



写真:中国製の冷凍餃子のパッケージをチェックするJT従業員 (AP Photo/JIJI News)
 最後に日本の「国民的現象」などを「Japan-Guide.com」を調べて載せたりなど、イギリスの保守系の大手高級紙『ザ・タイムズ』は比較的日本に好意的なメディアに見えます。

 しかしザ・タイムズは赤福など日本のメーカーの賞味期限誤表記や偽装に関して暗に触れていますが、毒物混入と賞味期限を同列に扱う方がどうかしています。そういう辺りがやはり捕鯨問題で日本を敵視するイギリスメディアらしいなという気がしなくもないのですが。

 次はイギリスの大手経済紙の『フィナンシャル・タイムズ』の2月1日更新版の記事です。

【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。

現代中国の私刑

 中国語版のYouTubeのようなビデオアップロードサイト「YouMaker」に昨年9月に、路上で2人の泥棒を住民がリンチをして殺害するビデオがアップロードされています。

 ビデオでは中国の街角で、泥棒を行ったとされる2人に対して住民と見られる複数の人物が執拗に殴る蹴るの暴行を加えて終いにはブロックで打ちのめしたりなどして、投稿者によるとこのリンチを受けた人物は死亡したとの事です。ビデオの最後では頭から血を流して動かなくなっているのでこの時点で致命傷になって死亡した可能性があります。

 20世紀初頭の義和団事件の後の公開斬首処刑に見物人が沢山集まっていたり、現代の中国の死刑囚が連行される際に黒山の人だかりの見物人が群がり、死刑執行の際にもやたらと多くの人数の兵士や警官が見物をしてたりなど、中国の民衆が残虐行為を好んで見物する例を当ブログでこれまでにも幾つか取り上げた事がありましたが、今回のビデオに関しては撮影時期は不明ながらも、中国にカムコーダーが普及して以降のものである事は確かなので、少なくともここ数年以内のものである事は分かります。

 暴力シーンが苦手な方は見ない方がいいかもしれません。

註:YouMakerはブラウザによっては、ブログ上に埋め込んだ動画に広告が出るだけで動画自体が再生されない事があるので、その場合は元サイトの方を参照お願い致します。

二人の泥棒が住民に生け捕りにされリンチを受けた。
聞く所によると撲殺されたとのこと


提供:pineapple
加入2007-05-21 19:26:01
長さ3分18秒
解説罪は死に至るものではない。どうしてこのように痛ましく残酷な...
カテゴリニュースと評論
タグ泥棒 撲殺
pineapple. 両個小偸被居民活捉之後就招到暴打.聴説還被打死了. YouMaker, May 21, 2007.

このビデオへのコメント: 【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。

中国に通信傍受筒抜け 米国にダミー会社 (ワシントンタイムズ)

 先月に英紙タイムズに掲載された、ロールスロイスとシェルなど英国経済の中枢企業のネットワークシステムに中国のハッカーが侵入したという記事を2本紹介しましたが、今回は先月末にワシントン・タイムズに掲載された、米国の安全保障局 (NSA) が中国のダミー会社によって通信傍受などの機密情報が盗まれたニュースの記事の全訳を紹介します。虎御前さんに情報提供を頂きました。

 記事の概略は産經新聞[*1]に詳しく書かれていますが、要するに、ハワイにある米国国家安全保障局 (NSA) の施設が、中国やアジア諸国の通信傍受記録などの機密情報の英訳を委託した翻訳会社が中国のダミー会社で、機密情報が中国に筒抜けになっていたらしいという事、それから中国がターゲットにしてるのが、中国系アメリカ人のスパイ獲得工作である点などが触れられています。

写真:ハワイ・クニアの国家安全保障局/海軍治安グループのクニア地域安全
オペレーション地下施設の入り口 (Photo: Paul Hanrahan)


中国はアメリカでのスパイ活動に踏み込む
ビル・ガーツ
ワシントン・タイムズ 2007年12月21日

 米国情報関係者によると、安全保障局 (NSA) のハワイ施設の機密である通信傍受内容が、中国語翻訳会社を通じて中国情報機関に筒抜けになっていたとの事だ。

 スパイの侵入は海軍犯罪捜査局 (NCIS) の対スパイ捜査によって数年前に発見され、コードやその他電子秘密情報収集と、そのアクセスもろとも軍人・軍属をスパイ獲得工作する中国の大規模な活動の存在が調査によって判明した。

 中国最大の情報機関である国家安全省が、米国企業を偽った翻訳会社をハワイに作る事でスパイ活動を行ったと、匿名を条件に政府情報筋は語った。

 その策略は、安全保障局の哨所・航空・船舶傍受ネットワークが収集した数百万件に及ぶ通信傍受記録の一部の英訳を、海軍と安全保障局をこの会社に機密に委託させる事から始まった。


クニアの国家安全保障局/海軍治安グループのクニア地域安全オペレーション地下施設の入り口 (Photo by CTMC Karl F. SItler, USN)
 ホノルルの北24kmのクニアにある国家安全保障局の施設、米国情報の最もデリケートな問題を扱う地下電子情報部が、その翻訳会社に業務を委託した事を海軍犯罪捜査局が突き止めている。その会社の名前は明らかにされていない。


 クニアの施設は、中国とその他アジアの言語の膨大な量に及ぶ通信集計・処理地であり、それらの通信は軍事・政治目的の機密情報報告書を作成するために英訳されている。

 中国のスパイ侵入の件に詳しい海軍の情報関係者は、クニア施設の分析済みの情報とその「原文」が流出し、米国の監視対象や情報源などの詳しい情報を中国政府が把握した事は米国諜報活動にとって深刻なダメージであると語ったが、中国のスパイ活動が発見される前にどれ位の期間行われていたかについては言及しなかった。


 海軍犯罪捜査局はまた、中国の主な情報活動として、中国系米国人のスパイ獲得工作と、クニア施設の機密情報にアクセス権のある軍人・軍属職員に対するスパイ獲得工作が行われた事を発見した。

 その関係者によると、2005年に海軍の暗号技師が中国政府が経費負担をした中国へのただ旅行をした事で逮捕された後に、情報職員への中国のスパイ獲得工作が発覚したという。

 それを発端として海外犯罪捜査局は徹底調査を行い、その他の情報部員が中国のスパイ獲得工作の標的になっていた事をつきとめた。その多くが退職直前であった。

 中国系米国人に対するスパイ獲得工作は同様の戦術がある。中国の情報機関は情報局員などを使って、機密情報にアクセスのある中国系米国人を見つけ、親族を訪ねるなどの中国旅行を提供するなどし、そしてそれを理由にそれらの中国系米国人をスパイとして獲得するという作戦である。

 中国系米国人グループは以前に、アジア系米国人がスパイのターゲットであるとした米国政府を非難し、対情報活動職員を人種差別として訴えている。しかし中国のスパイ獲得工作活動は、中国政府がそれらの民族グループによってスパイ活動拡大を目指している事を示している。

 安全保障局と海軍犯罪捜査局の広報担当は、ハワイにおける中国の情報収集活動に関する質問への回答を示さなかった。



I. C. スミス元FBI諜報員 (Photo: PBS)
 元FBI諜報員のI.C. スミス氏によれば、中国の国安部 (MSS) と「2PLA」として知られる中国軍総参謀2部の情報機関が国家安全保障局を標的にしていると言う。

 スミス氏はまた、それが古代中国の戦略家・孫子の「先見」の究極例であるとし、「情報機関にとって敵のコードと電子情報を把握する事以上の標的はありません。それは中国の国安部や2PLAにとっても同じ事です」と語った。

 スミス氏は、米国の電子情報とコードの収集は米国が何を知っているかの具体的な情報を中国にもたらし、「仮定ではなく知識による」防衛策を中国政府に与えるだろうとし、「確信を持って嘘情報を流す事も可能であり、それは基本的に敵に対して情報機関が有利になる事であります」と語った。

 安全保障局のハワイ・オペレーション・センターには数千人の職員がいて、昨今では3億5000万ドルの予算に膨れ上がっている。安全保障局の8月の広報は「(この拡大は) 強力な脅威の状況に弾力的で機敏で効果的に対処する、地球規模の暗号解読発展への安全保障局の努力の一面である」と書いている。

 その情報共有制限のポリシーのため、その機関は過去にも情報改革の提案がされていた。

Gertz, Bill. China taps into U.S. spy operations. Washington Times, December 21, 2007. [魚拓 1 2 ]
訳:Red Fox (記事中の写真はワシントンタイムズ記事とは無関係)

 先日の英タイムズ紙に書かれているのと同様に、どうも華僑系移民をターゲットに、中国国内の家族や親族を人質にスパイ獲得工作活動をやるというのが中国の常套手段のようですね。ここで書かれている「Chinese American」(中国系米国人) というのは米国籍保有者であり、こういう国家機関で働くという事は米国で生まれ育った2世か、在米が長い1世でそれも優秀なキャリアの持ち主と思われますが、「中国へのただ旅行」「退職直前」というのは恐らく移民1世がターゲットではないかと思われます。

 今回に関して言えば、シェルやロールスロイスの大企業への高度なハッキング技術なんてものではなく、中国が作ったダミー会社を米国の国家安全保障局が信用してしまったという大失態であり、やはり民間委託が進んでいるアメリカならではの問題にも見えます。

 このニュースは産經新聞[1]が記事にしていますが、産経新聞が主に情報源にしたのがこのワシントンタイムズの記事です。当ブログではワシントンタイムズの記事は昨年8月に、中国が米軍に太平洋分割統治を持ちかけたというニュースを紹介していますが、記事を書いたのは同じビル・ガーツ記者です。

 ワシントンタイムズは1982年にレーガン政権が財閥にに呼びかけて保守系新聞として創刊された日刊紙で、その論調は一貫して保守の親共和党。そのバックにあるのが統一教会であるという不思議な新聞ではあります。前回の記事でも目立っていたのが、情報筋を明らかにしないながらも随分軍関係とコネクションがあるような書き方で、それは今回も同様であります。


【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。

警官が突き落とされ重傷、中国人2人を逮捕

駅ホームで警官突き落とす 重傷、殺人未遂で2人逮捕
共同通信 2007年12月23日 17時51分更新版


 警官が突き落とされ重傷を負った、JR御茶ノ水駅の現場=23日午前9時30分、東京都千代田区 (Photo: 共同通信)
 22日午後11時20分ごろ、東京都千代田区のJR御茶ノ水駅のホームで、警視庁地域部通信指令本部の男性警部補(49)が男2人に突き落とされた。警部補はホームに進入してきた下りの普通電車にひかれ、右大腿(だいたい)部切断、頭部骨折などの重傷。駅員が2人を取り押さえ、警視庁神田署が殺人未遂の現行犯で2人を逮捕した。

 調べでは、2人は中国籍で調布市調布ケ丘、会社役員李志(41)と国分寺市富士本、会社員金権(31)の2容疑者。

 2人は「電車内で大声で話していたのを注意され口論になった。振り払っただけで突き落としていない」と容疑を否認。逮捕時、2人は酒に酔っており、同署は詳しい経緯を調べている。

 目撃者の話などから、3人は別の下り快速電車に乗っていたが、御茶ノ水駅でもみ合いながら降車。ホーム上でもつかみ合いをしていた。普通電車がホームに進入し3人に近づいてきた直後に、2人は警部補を突き落としたという

 警部補は110番受理を担当。22日は日勤を終え、青梅市の自宅に帰宅途中だった。

共同通信 in 日刊スポーツ. 駅ホームで警官突き落とす 重傷、殺人未遂で2人逮捕, 2007年12月23日 17:51.
in 中日新聞. 駅ホームで警官突き落とす 重傷、殺人未遂で2人逮捕, 2007年12月23日 10:51. [魚拓]
in 日経新聞. 駅ホームで警官突き落とす・殺人未遂で2人逮捕, 2007年12月23日 11:12. [魚拓]

 この事件は、例えばmixiニュースでは読売新聞と毎日新聞の記事が取り上げられていて、これに合計200を越す日記が書かれていたりなど随分反響があるように見えますが、それらの記事の後の23日夕方以降に各紙各局でより詳しく報道されているので、ネット上で確認出来る記事に一通り目を通してまとめてみました。

 まずTBSの14:37の報道によると、この警視庁の49歳の男性警部補は「警視庁地域部に勤務」となっていますが、昨夜以降の朝日新聞東京新聞の報道によると、この男性警部補は、警視庁通信指令本部第一指令課で110番の受理担当となっています。

 一方、10:01の読売新聞や上記の共同通信の記事では、犯人の2人はかなり酒に酔っていたと報道されていますが、その後の時事通信読売新聞TBSでは3人とも酒を飲んだ状態と書かれており、これが酔っぱらい同士の諍いというニュアンスになっています。

 大抵の報道では、駅員の目撃情報や犯人の取り調べから、電車内で中国人容疑者が大声で話しているのを警部補に注意され、車内で揉み合いになりそのままホームに出たという点では同じ内容ですが、上記の共同通信では「電車がホームに進入し3人に近づいてきた直後に、2人は警部補を突き落とした」と、明らかに殺意があったと思われる状況が書かれており、それは10:01の読売新聞にも同様の記述があります。

 これは勤務中の制服着用の警官を線路に突き落としたという事件ではなく、中国人の犯人が相手が警部補だとは認識していなかったと思われますが、これは明らかに殺意があった殺人未遂事件である事に違いはないでしょう。本人達は故意ではないと言ってるようですが、中国人が取り合えずそう言うのはお約束のようなもんです。

 犯人に関しては、19:29の読売新聞によると「調布市調布ヶ丘3、コンサルティング会社役員の李志(41)、国分寺市富士本1、同社員の金権(31)の両容疑者」となっています。



【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。

シェルとロールスロイスに中国のスパイ攻撃(英紙タイムズ)

 前エントリーで、イギリス経済の中枢部に人民解放軍、つまり中国政府が関与していると見られるコンピューターハッキングによる産業スパイのニュースが、今月1日に英タイム紙で報じられた記事を紹介しました。

 このタイム紙の報道にはまだ続きがあり、前記事では「ヨーロッパの最大級のエンジニア会社の一つと石油大企業」が中国からサイバー攻撃に会ったと書かれていましたが、2日後の記事ではそれが、ロールスロイス社とロイヤル・ダッチ・シェル社である事が書かれており、ロールスロイス社へのスパイはNATOの軍事機密目的、シェル社に関してはアフリカの油田開発に関わる情報、更にシェル内での組織的な中国人工作員の活動など、より具体的な内容が書かれています。

 このニュースは国内では同日のAFP通信[1]で一部紹介されています。




From The Times
シェルとロールスロイスの企業秘密が中国のスパイ攻撃を受けている
2007年12月3日 ザ・タイムズ紙 (英国)
ジェームズ・ロシーター


世界最大の旅客機エアバスA380に搭載されたロールス・ロイス製の超大型エンジン(2007年3月24日撮影)。©AFP/Bryan McManus
 ロールスロイス社とロイヤル・ダッチ・シェル社が中国のスパイ活動の被害に会っている事が、本紙の調査で分かった。

 情報筋によれば、このイギリス最大の技術企業と、世界で第二位の多国籍系石油会社の機密の商業情報を獲得する作戦が今年の初めに行われたと言う。

 大企業のコンピューターシステムへの侵入など、英国経済の中枢に対するスパイ活動を中国政府機関が支援していると言う英国保安部による警告に続いて、ロールスロイス社とシェル社に対するスパイ攻撃に関するニュースは伝えられた。

 ロールスロイス社のコンピューターネットワークに不正アクセスした中国が背後にいるコンピューターハッカーの攻撃は、保安部関係者に「もう少しで(システムを)破壊する所であった」と言わせた事からも、その様子は伝わって来る。ロールスロイス社のエンジンは、世界の多くの主要航空会社に使用されており、英軍や米軍などNATOの多くの加盟国の軍用機にも採用されている


 英国とオランダの合弁企業であるシェル社は、テキサス州ヒューストンでスパイのアラームに対処し、中国のアフリカにおける事業のために、シェル社の機密の価格情報を得る国家規模の諜報作戦で、シェル社で働く中国国籍の従業員がその作戦に利用されたと、情報筋は本紙に語った。


世界最大の旅客機エアバスA380の納入会見に出席したロールス・ロイスのジョン・ローズCEO(2007年10月15日撮影)。©AFP/LIONEL BONAVENTURE
 アフリカ諸国の大規模に埋蔵する石油の新たな油田の開発は、西欧の発達した経済の支援が必要で、それは国際石油会社の競争のターゲットになっており、急速に経済発展をする中国がそこに参入している。中国には膨大な石炭の埋蔵があるが、石油とガスには乏しい。


 ロールスロイス社のコンピュ−ターサーバーへの不正アクセスは「バーチャル攻撃」と呼ばれていると情報筋は言う。「中国の人民解放軍の(情報)活動はかなり前からあるが、最近特に活発化し、彼等はロールスロイス社内部のITシステムに不正アクセスしようとした」と語った。

 情報局保安部のジョナサン・エヴァンス長官は、「中国政府機関」による攻撃に晒されている銀行、会計士オフィスや企業のトップやセキュリティ責任者の300人に非公開の書簡を送ったと、本紙は今週末報道した。

 国家基幹防護センターのウェブサイト上のその概要には「書簡の内容は以下の内容をハイライトする:中国政府機関が支援する電子的な攻撃により、英国経済が打撃を被る可能性および、その攻撃が最新鋭のITセキュリティシステムを破るように設計されている事への長官の懸念」と書かれている。ロールスロイス社が、エンジン設計図や修理コードなど最重要機密情報を中心にして、そこに何重ものファイアーウォールでプロテクトしているのはその他多くのネットワークと同様の事である。

 ロールスロイス社のネットワークへの不正アクセスは、ウィルスに含まれたソフトウェアコードの特製トロイがサイトにダウンロードされた後に起こり、それは同社のITサーバー内部の情報を外部流出させた

 当初その不正アクセスは英国国内から行われたと考えられていた。しかしロールスロイス社のネットワークは北欧や米国など国際規模で広がっている。

 情報筋は「彼等は完全には内部に侵入しなかったが、それが十分に大きな攻撃であった事が懸念の材料である。探知される以前に彼等は「重要でない情報」とされる物を得ただけである」としている。


 米シェル社は、ヒューストン本社(テキサス州)における「特殊利益グループ」の存在を摘発した。それは中国国籍を持つ従業員グループで仕事の後に頻繁に会合を持っていた。しかしそのネットワークグループは「中国人リクルートの最前線」であった。

 それは中国国内に家族を持つ従業員がターゲットにされる「社会工作員」という形を取っており、彼等は「母国の利益のために」支援をするように言われ、「それは一種の脅しであり、中国人従業員は情報を漏洩するようにプレッシャーを与えられていた事を、このヨーロッパの石油会社はスパイの活動に気付きそれを暴いた」と情報筋は語っている。ロールスロイス社とシェル社は本紙の取材に対しコメントを避けた。

 プライスウォーターハウス・クーパーズ社の鑑識技術組合のギャロッド・ヘガーティ会計士は、どの会社のITネットワークへの不正アクセスも、ネットワーク上での総攻撃を難しくするために「ファイアーウォールと何重ものセキュリティシステムに守られた強固なものであるべきである」と語った。

Rossiter, James. Secrets of Shell and Rolls-Royce come under attack from China’s spies. Times Online, December 3, 2007. [魚拓]
訳:Red Fox

 なるほど、家族を人質に脅された中国人従業員が工作員になって産業スパイを行ったという、まるで映画のような話ですが、やはりエネルギー問題がネックのようですね。東シナ海の海底資源問題では日本と摩擦を引き起こしている中国ですが、経済成長を続ける中国にとって増え続けるエネルギー需要はかなり深刻な問題である事は想像に難くありません。その中国はアフリカ進出を目指してる訳ですが、シェルにスパイ活動を行ったと言うのもありそうな話ではあります。

【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。

英情報局保安部は中国のサイバースペーススパイの脅威を警告(英紙タイムズ)

 英国情報局保安部のエヴァンズ長官が英主要企業のトップら約300人に警告の書簡を送ったとの記事が、今月初めに産經新聞時事通信で報じられていますが、その情報ソースはいずれも英紙タイムズなので、元の記事を全訳してみました。


From The Times
情報局保安部は中国のサイバースペーススパイの脅威を警告
独占:情報局保安部長官が、英国企業にシステムが中国からの攻撃に晒されていると書簡を送る

ジョナサン・エヴァンズ長官は、銀行、会計士オフィスや企業のトップやセキュリティ責任者に非公開の書簡を送った。
2007年12月1日 ザ・タイムズ紙 (英国)
リス・ブレークリー、ジョナサン・リチャーズ、ジェームズ・ロシター、リチャード・ビーストン

 英国経済の中枢に、中国政府機関に支援されたスパイ活動が行われているとして、政府は公然と中国を批判している。それは銀行や金融企業のコンピューターシステムを含む。

 その空前の警戒で情報局保安部 (MI5) の長官は、「中国政府機関」による攻撃に晒されている銀行、会計士オフィスや企業のトップやセキュリティ責任者の300人に非公開の書簡を送った。ウェブベースのスパイ活動への関与で政府が中国を直接批判するのは初めてと見られる。エヴァンズ長官からのこのような警告が大っぴらに出されるのは、深刻な外交問題を引き起こし、年明けのゴードン・ブラウン首相の公式な訪中に影を落とす可能性がある。


 タイムズ紙に掲載されている情報局保安部の警告の概要は、政府のウェブサイトで発表された。そこではエヴァンズ長官が企業トップに対して「電子スパイ攻撃について警告」と書いている。

 国家基幹防護センター (Centre for the Protection of the National Infrastructure) のウェブサイト上のその概要には「書簡の内容は以下の内容をハイライトする:中国政府機関が支援する電子的な攻撃により、英国経済が打撃を被る可能性および、その攻撃が最新鋭のITセキュリティシステムを破るように設計されている事への長官の懸念」と書かれている。

 その上で更に「中国とのビジネスに強力な経済的・商業的な理由がある事は認めるが、経営陣はそのリスクを把握する必要がある」と警告されている。

 そのサイトへは、通信、銀行、水道、電力会社など国家の重要な根幹を担っている企業だけがアクセス出来る。この書簡は中国国内でビジネスを行う英国企業は、非公開の商業情報を盗むためにネットを利用している人民解放軍のターゲットになっていると警告している。昨夜内務省は、それは私信が漏洩したものだとしてコメント出来ないとした。駐ロンドン中国大使館の広報担当は、大使館が英国当局から何ら苦情を受けていないためその件は知らないとコメントした。

 その書簡を見たKPMG社のマーティン・ジョーダン主任会計士は「例えばある英国企業が中国国内の土地や会社や資産などを買収しようとしてる情報を中国側が掴んでいたなら、英国企業側がそれを買収するために幾らの資金を準備しているかの正確な詳細を入手するために、如何なる手段をも用いるだろう」と述べた。


 中国の攻撃によって最近危険に晒された企業は、ヨーロッパの最大級のエンジニア会社の一つと石油大企業であるとの情報をタイムズ紙は掴んでいる。しかし情報局保安部の警告に詳しい情報筋によると、その攻撃対象はロンドン市内に拠点を置く大企業に限った事ではなく、中国相手のごく小さな業務を扱う市内の法律事務所やその他のビジネスですら、潜在的ターゲットとして調査されているとの事だ。

 また、その書簡を見た安全保障の専門家は、中国人グループによって使われる技術は、特定企業のネットワークへハッキングして機密データを外部流出するように作られたソフトの「カスタム・トロイ」であり、情報局保安部の書簡は、中国トロイを特定するための「サイン」のリストと、攻撃に用いられたインターネットアドレスのリストが含まれていると言う。


 英国の政府と軍のコンピューターシステムが、中国やその他の国からの攻撃に晒されている事への大きな教訓が、今週の警告となっている。それは、中国のスパイ活動が「米国テクノロジーへの一つの最大のリスク」と米国で表現されたほど大規模であったと、先月米国議会で報告された矢先の事であった。

 その(米国の)報告書を書いた一人であるオックスフォード大学のイアン・ブラウン教授は、その攻撃はホワイトホール(英国の官庁街)のパスワードを解読を試みたもので、それを逆探知したら中国からのものであったと語った。その報告書では、中国はインターネットでのスパイ活動と攻撃が最も盛んな国であるとし、またその他の120カ国も同様の手口を使ってるとしている。

 英国のコンピューターシステムを防御している国家機関である国家基幹防護センターは、このサイバー攻撃で引き起こされた脅威は莫大であるとしている。


 世界各国の防衛省はデジタル戦争の未来に関するマニュアルを書き直している。今年米国は政府や民間システムへの3万7000回のハッキングの試みがあり、サイバー戦争への対策として米国空軍に4万人の新ユニットが配備された。

 この仮想犯罪報告書は、(ハッキングが) 興味本位の調査から、多額の資金を持ち組織立った軍事的・経済的・技術的なスパイ活動にまで発展した事を突き止めたとしている。

Blakely, Rhys, Jonathan Richards, James Rossiter and Richard Beeston. MI5 alert on China's cyberspace spy threat. Times Online, December 1, 2007. [魚拓]
訳:Red Fox

 中国の政府が関与したとするハッカー攻撃は今年8月にドイツのシュピーゲル誌が報じたり、英フィナシャルタイムズが9月に米国防総省のコンピューターネットワークが中国軍のハッカーに占領されたと報道、フランスのル・モンド紙がやはりフランス首相府へのハッカー攻撃を報じ、10月22日にはドイツ政府高官が中国によるサイバースパイ攻撃を非難、先頃は米タイム誌が中国の産業スパイを特集したりなど、欧米諸国のメディアでは中国の産業スパイを報じる動きが最近活発化しています。

【続きを読む】
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。
次のページ

ホームページ アフィリエイト レンタルサーバー FC2ブログ 専門学校