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Red Fox

読まずにレッテル貼りをする人は出入り禁止

プラスティネーション発明者が中国から撤退

 プラスチック保存された本物の人体を展示する『人体の不思議展』という展示会が全国をまわっている話題はこの数年ネットでもよく目にする。

 これは「故人の意思による献体」という説明がされていて[>>1]、喫煙で汚れた肺や病巣の臓器が展示されていたりなど、これまでは模型でしか見られなかった人体の仕組みを直に目にして、健康を考えるといういわゆる社会教育的な科学的展示会の性格が前面に出されているもの[>>2]であるが、その一方で、人体標本に不自然なポーズを取らせたりなど興行的な面がある点と、これらが全てアジア系の顔立ちで人体の男女比が著しく偏り、全体的に若く健康そうな人体でこれが全て自然死したとは考えにくいという指摘や[>>3]、妊婦や胎児の標本など、これが本当に「故人の意思による献体」なのか甚だ疑わしいようなものがあるなど、これが怪しい展示会ではないかという話題は以前から日本のネットでもよく出ていた。

 1995年に東京で開始された『人体の世界/人体の不思議展』(Body Worlds) は[>>4]、この生物プラスチック保存技術「プラスティネーション」の発明者であるドイツ人のグンター・フォン・ハーゲンス氏が開催していたもので、その当時は西洋人の人体標本が展示されていたものが、1998年に契約トラブルでハーゲンス氏が日本から撤退し[>>5]、その後2002年から日本で開始された『新・人体の不思議展』は一転して標本が全て中国人であり、ハーゲンス氏とは全く無関係なもので、それが現在の『人体の不思議展』である。[>>6]

 海外でも日本と同様に、ハーゲンス氏の『ボディワールド』に対抗する形で出て来たのが、米国の展示企業プレミア・エキシビション社による中国人標本展で、『人体の暴露展』 (Bodies Revealed) が2004年からイギリスで、同社が開催する『BODIES展』 (BODIES...The Exhibition) が2005年より米国で開始され、それが全米やヨーロッパを展示してまわっているという状況が現在でも続いている。

 これらの人体標本展は海外でも大成功で巨額の収益が上がり、知名度が高まるとともに日本と同様に、どう見てもアジア人に見える人体標本の出所が中国である事に懐疑の目が向けられるようになり[>>7]、更に本物の死体を展示する事への倫理的・宗教的な見地から疑問の声も上がるようになっていた。

 そういう中、今年の2月15日に米国のABCニュースは、その報道特集番組『20/20』において、米国のプレミア・エキシビション社が開催するプラスチック保存された人体を展示する『BODIES展』で人体や人体パーツに中国の死刑囚が用いられている疑惑を独自の取材によってスクープし、中国に取材班を送ってその所在地が周到に隠蔽されていた人体工場に隠しカメラで潜入、更に元人体闇市場の関係者から米国の展示に死刑囚の死体が流通しているとの証言と、その人物から提供された死刑囚の闇取り引き現場の写真を報道し、全米に大きな衝撃を与えた。


 この番組と中国の人体闇市場に関連した記事がABCニュースのウェブサイトに複数掲載されているので、これから数回にわたってそれらの記事とその関連情報を特集しようと思う。

 今回は、『20/20』の番組放送の前日に出された予告編のような記事で、ハーゲンス氏が中国から入手した死体に処刑の跡があったため中国の人体市場から撤退したニュース、そして後半にはABC『20/20』のために取材されながら、番組では殆ど使われなかったハーゲンス氏のドイツにある人体工場の写真レポートとその訳を紹介する。

 なお、番組放送当日の2月15日に出た『20/20』の番組内容に関連した複数の記事は第二弾エントリー第三弾エントリーで扱う。

写真:プラスティネーション発明者のグンター・フォン・ハーゲンス氏。 (ABC News) [A]


[特集『人体展と中国の人体闇市場』トップページに戻る]


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日経BPで『Red Fox』が取り上げられる

 一週間遅れとなったが、当ブログが日経BP社サイト「セカンドステージ」の『大人のブログ探訪』で紹介された件をお知らせさせて頂きます。

 この『セカンドステージ』とは2005年6月に始まった45歳以上をメイン読者とした定年退職を照準にして生活や趣味やマネープランなどの人生設計のテーマを扱っている生活設計サイトで、「大人のブログ探訪」は様々な幅広いジャンルのブログを週一回のペースで紹介しているコーナーで、何かしらの「こだわり」をテーマにしているブログが軒並み揃っている。

 この記事を書いた岡部敬史さんは、『別冊宝島』編集部出身で現在ブログ評論家として著書発表や講演活動、評論記事執筆などを行っていらっしゃる方である。


大人のブログ探訪『Red Fox』(日経BP「セカンドステージ」2008年7月3日)
http://secondstage.weblogs.jp/blog/2008/07/red-fox-ea64.html

 当ブログがどうして熟年層をターゲットとする「こだわりブログ」コーナーに紹介される事になったのがいささか驚きであったが、岡部さんが当ブログを見つけたきっかけが恐らく先月の、秋葉原の通り魔殺傷事件の英タイムズの記事についた読者コメント欄の訳を扱ったエントリー『秋葉原の無差別殺傷事件、英米ではどう見られているか 英タイムズ紙の読者コメント』で、これはそこでの英国人や米国人などの書き込みをそのまま訳して載せたものである。

 それが日経BPでは「生の声」と表現されており、思い起こしてみれば10数年前初めて海外生活を始めた時に、「今まで日本で見て来たテレビや新聞や本から入って来る外国の情報は全て他人の価値観のフィルターを通って編集・翻訳された2次情報であって、知識と理屈で理解出来る事と、実際に自分がそこにいて直接体験するのは丸っきり意味合いが違う」と、一種のカルチャーショックを感じた事が『Red Fox』の「こだわり」の原点であったかなとは思った(尤も最初に住んだのがアメリカでワースト10に治安が悪い地域だった事も大きかった訳ではあるが)。

 一部の読者の方には「毎回エントリーが長い!」と不評の当ブログではあるが (笑)、その「生の声」や「原典」になるべく手を付けずにそのまま、自分の見解はニュートラルな解説程度か分析的なものに留めて、その原典自身が語るものを見るというスタンスがブログ開設時から一貫してやっている事であり、自己分析してみればそこら辺がその「こだわり」なのかもしれない。


 岡部氏がもう一つ言及しているのが、当ブログで数度にわたってシリーズで取り上げた「自由チベット学生組織 (STF)」による万里の長城の「自由チベット」垂れ幕抗議を扱ったエントリーである。
 これに関しては、日経BPでも「こういったニュースバリューが高い情報を知らなかったことが、一番ショッキングかもしれない」と書かれているように、不思議なほどに日本のメディアでは殆ど取り上げられないニュースである。

 結局日本のメディアが報じないという事は、日本の視聴者が関心を持たないバリューのニュースであるという事なのか、メディアが報じないから視聴者が関心を持たないのか鶏が先か卵が先かみたいな話になってしまうが、一個人ブログであるからこそ視聴率やスポンサーの意向を気にしないで自分が注目したものを興味の赴くままに調べて行く事が出来るというのがまた個人ブログの勝手気ままな醍醐味である。


 『大人のブログ探訪』の取材で聞かれた質問でも、特に「ブログを始めたきっかけ」「楽しかった事」「心に残っている思い出」「思い入れの強いエントリー」など、いざ真面目に考えてみると何を答えて良いのか一瞬答えに困るようなものもあったが、やはり原点を考えてみるというのは時々は必要な事だと再確認するきっかけにはなった。いつの間にか惰性に流され義務感に縛られがちになり原点を忘れ自分を見失ってしまうというのはよくある事ではある (笑)