ABCニュースが撮影した大連医科大プラスティネーション社の死体工場の内部(隠しカメラ映像) [a]
米国のプレミア・エキシビション社が開催する人体展『BODIES展』(BODIES... The Exhibition) の裏に中国の人体闇市場があり、中国の公安局や裁判所から流出して闇で売買された処刑死体が用いられている疑惑がABCニュースの『20/20』に2008年2月15日にスクープされ大きな社会問題になっている。
この疑惑はそれ以前に
ニューヨークタイムズが2006年8月に報じており [>>1 ] 、それ以降米国の幾つかの州で、故人の同意が証明出来ない人体標本の使用を禁止する法案が提出される動きが既にある。
[>>2 ]
今年に入ってからはABCの番組に前後して米国議会にプラスティネーション人体輸入禁止法案が提出 されたり、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ検事総長が調査を開始するなど米国の政治家や司法が動き出すという、米国では倫理的問題から規制の動きが出ており、5月にクオモ検事総長が「プレミア社は死刑囚が使用されていない事を自力で証明出来ない」との調査結果を出し [>>7 ] プレミア社との法的合意に達したところまで当シリーズで扱った。
その法的合意発表の1週間後の2008年6月6日に、労改基金会 が中国での大連医科大プラスティネーション社の調査、およびその創設者で現在中国のプラスティネーションの権威である大連医科大の隋鴻錦教授に関する詳しいレポートを発表したので、今回はその全文訳を紹介する。
ここではABCニュースでは余り触れられていなかった中国側の情報がより詳しく書かれている。
隋教授は1994-95年にドイツでハーゲンス氏から技術を習得した後、1996年にハーゲンス氏を大連医科大の客員教授に招待[>>8 ] 、1999年にハーゲンス氏の工場を大連に誘致、プラスティネーション協会の大連工場の総経理に就任した隋氏が中国での人体入手の窓口となり、ハーゲンス氏に法外な報償を要求し、人体に処刑の痕跡が見られたり[>>9 ] 、隋氏が独自に人体標本製造と販売を行ったりするなどして[>>10 ] ハーゲンス氏とトラブルになって2000年に関係を解消し、独立して2002年に大連医科大プラスティネーション社を設立、最終的に自らが中国のプラスティネーションの権威となり、現在米国のプレミア・エキシビションが開催する『BODIES展』などの世界規模の人体展を実質的に取り仕切っている人物で[>>11 ] [>>12 ] 、このレポートには隋氏が現在のステータスに上り詰めるまでのエピソードが書かれている。
ここには非常に重要な情報が多数書かれているが、これまでのABCニュース、ニューヨークタイムズなどの米国メディアや、クオモ検事総長の調査とも内容的につじつまの合うものが多く、中国国内の様子も中国メディアの関連報道を確認出来るため、内容的には信頼の置けるものと思われる。
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米国のプレミア・エキシビション社が開催する人体展『BODIES展』(BODIES... The Exhibition) の裏に中国の人体闇市場があり、中国の公安局や裁判所から流出して闇で売買された処刑死体が用いられている疑惑がABCニュースの『20/20』に2008年2月15日にスクープされ大きな社会問題になっている。
中国での人体の出所の怪しさに関してはこの1年半前の2006年8月にニューヨークタイムズが報じており[>>1 ] 、それ以降米国の幾つかの州で、故人の同意が証明出来ない人体標本の使用を禁止する法案が提出される動きが既にあって[>>2 ] 、今年に入ってからはABCの番組に前後して米国議会にプラスティネーション人体輸入禁止法案が提出 されたり、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ検事総長が捜査を開始するなど米国の政治家や司法が動き出すという、米国では倫理的問題から規制の動きが出ており、5月にクオモ検事総長が「プレミア社は死刑囚が使用されていない事を自力で証明出来ない」との調査結果を出し [>>7 ] 、その旨を展示会場とウェブサイトに表示するなどのペナルティを含むプレミア社との法的合意に達したところまで、前エントリーまでのシリーズで扱った。
この動きの大きなきっかけとなったABCニュースの『20/20』の『人体展:しかし彼等はどこから来たのか』の番組内容は、第2回エントリーで紹介したABCニュースの写真レポート『世界規模で取引される死体』 で大筋の部分は触れられているが、やはりこれは映像番組として見た方がダイレクトに伝わって来るので、この18分の番組に日本語字幕版を制作してみた。
それから本エントリーの後半では、ABCの番組では詳しく触れられていない補足情報として、人体流通に絡んだ企業や団体の背景や関係者のプロフィールなど、番組内容に対する追加情報を紹介、そして最後に『20/20』のテキスト版を掲載している。
『20/20』は60分番組であるが、人体展に関しては約18分の特集となっている。
写真:中国遼寧省の大連医科大プラスティネーション研究所 (大連鴻峰生物科技社) の工場長にインタビューをするABCニュースのブライアン・ロス記者。隠しカメラ映像。(ABC News)
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プレミア・エキシビション社のプラスティネーション人体展『BODIES展』(BODIES... The Exhibition) には中国の公安局から入手した身元不明死体が用いられている事が2006年にニューヨークタイムズに報じられて以来、全米の各州議会では展示に用いる事への故人の同意が証明されない限り人体標本展示を禁じる法案が検討される動きがあるが、2008年2月15日にABCニュース『20/20』が、その背後に中国の人体闇取り引きがあり、そこに死刑囚の死体が流通している疑惑をスクープして以来、社会の注目が集まった事によりその動きが加速し、8月15日にはカリフォルニア州のフィオナ・マ議員が提出した人体展示規制法案が上院と下院の承認を受け知事の承認待ちという段階にまで至っている。
一方、2月15日の『20/20』の放送直後に、米国議会下院のクリストファー・スミス議員が下院外交委員会に公聴会を要請、そして米国司法長官に調査の要請を計画中であるなど人体展問題に対する関心と行動を表明していたのをシリーズ第4回 で紹介したが、結局それが4月2日に米国下院でプラスティネーション人体の輸入禁止の法案HR5677がミズーリ州のトッド・エイキン議員によって提出され[>>1 ] 、その26人の法案共同支持者にスミス議員は名を連ねている[>>2 ] ため、スミス議員のアクションがこういう形で実ったという事になる。
この連邦法案HR5677は、プラスティネーション人体の輸入を禁止し、違反には3000~1万ドルの罰金と人体標本の没収というものであり、つまり現在既に米国内で所有されているプラスティネーション人体と、米国内で制作されたプラスティネーション人体のみが使用が可能であって、プレミア社のように大連鴻峰社から人体標本をリースしているケースでは、いったん中国に返却をすれば再入国は不可能であり、現在米国内にあるものを使用するしか方法がなくなり、米国内の人体展示を止めるものではなくても、
中国の人体市場を潤す事がストップされるという法案 である。
また、プレミア社が米国国外での人体展開催に対して米国内から人体を持ち出した場合に、米国に持ち帰る事が不可能となる。
エイキン議員はこの法案の提出に関して、多くの人権侵害の情報がある中国の状況において、プラスティネーション人体のビジネスのために人々が殺害されるという可能性が払拭出来ないのが現状であり、人体ビジネスを潤わせる事をストップする事でこの人権侵害に対する防止になると述べている。[>>3 ]
またこの背景として、トッド・エイキン議員の地元のミズーリ州カンザスシティで、ABCニュース『20/20』放送翌月の2008年3月14日よりプレミア社の『人体の暴露展』(Bodies Revealed) が開始し、時期が時期だけに地元でも懐疑的な注目のされ方をした[>>4 ] という事もあり、それが4月の法案に繋がったのではないかと思われる。
ABCニュースでの既出情報は紫文字で表示。
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プレミア社の疑惑のニュースとは直接関係ない話だが、ABCニュースがハーゲンス氏の人体展『ボディワールド』における献体プログラムの紹介として2月26日に報じられた、米国内でのドナーの問題の記事を紹介する。
前エントリーで扱った新唐人テレビ論説委員の李天笑氏の記事 では、死体を“物”として扱う事に中国では抵抗が強いという興味深い記述があるが、これは肉体にこだわらない仏教よりもむしろ儒教的価値観であり、文革期に儒教を徹底弾圧した中国であっても現在でも文化的習慣は根強いようである。
また中国では遺体の扱いが来世の運勢に影響すると信じられているという儒教とも関係のない文化的習慣があるために、中国ではなかなか献体が出ないという背景にあるという面もあるとか。
一方欧米では宗教に裏打ちされたボランティア精神が強いと言われるが、アメリカの場合でも運転免許証上にドナー希望の「Yes/No」の記載欄があったりなど、本人の意思が尊重されるという考えが強いようではあり、そこら辺は日本に比べても欧米で臓器提供数や献体数が多いという事の背景ではあるようである。プラスティネーション発明者のハーゲンス氏の献体プログラムのある展示会
『ボディワールド』 にはヨーロッパでは毎日数人の献体希望者が現れるとか。
[>>1 ]
尤もキリスト教における宗教的奉仕の精神や、「器である肉体」に対する認識などの文化背景はともかくとして、しかし一方では現実問題として葬儀や埋葬費用を避けたいために献体を希望するというケースもあるようで、日本でも身寄りのない人の献体希望が近年増加傾向にあるという報道を少し前に見た事がある。[>>2 ]
以下は、中国の死体ビジネスから既に撤退し、欧米からの献体を主に扱っているプラスティネーション発明者のハーゲンス氏の人体展『ボディワールド』に献体を希望する人物に関して書いたABCニュースの記事である。
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