
人体展関連アップデートエントリー第二弾は、前半は今年の4月にパリの裁判所で人体展示は違法との判決が出され、フランス国内で展示開催中であったプレミア・エキシビション社の人体展『Our Body展~内部の宇宙』 (Our Body: The Universe Within) に中止命令が出されたニュースに関して、そして後半はこれまでの情報にフランスのニュースを加えて見えて来た中国発のプラスティネーション人体ネットワークに関しての検証を扱ってみようと思う。
動画![]() 『人体展:彼等はどこから来たのか』 ABCニュース報道スペシャル『20/20』 2008年2月15日放送 (18'46") [訳・字幕=岩谷] |
フランス初の人体標本展となるプレミア・エキシビション社の『Our Body展』が2008年10月にリヨンでその展示を開始する5ヶ月前、開催が決定された2008年5月には既に、フランスの国家倫理諮問委員会が、ホロコーストの人体実験を彷彿させる倫理的に好ましくない展示[>>1]との見解を発表し、当初パリ展で開催が打診されていたラ・ヴィレット公園にある『シテ産業科学博物館』やパリ16区にある『人類博物館』が人体展受け入れを拒否したり、地元の『リヨン・キャピタル』紙が人体展に関する批判記事の大々的な特集を組んで大きな社会問題となり[>>2]、リヨンでは知識人が人体展開催反対の署名運動を行う[>>3]など、さすが人権の国フランスの面目躍如たる物と言うか、開催決定早々から活発な論議と反対運動が起こっている。
そしてパリ展が始まって1ヶ月半の4月4日に二つの人権団体が、死体を学術的目的でない営利展示に切り刻んでに使用する事は人体の尊重に関するフランスの民法に違反しており、特に中国の人権状況においてそこから来た出所の不明な死体を用いる事は倫理に反するという主旨の、人間の身体への不可侵と売買禁止に関する主張で、『Our Body』のフランスでの主催を行うイベント会社『アンコールイベンツ』を相手取って訴訟を起こし、4月21日に人体展に対し中止を命じる判決が下されたものだ。
訴えを起こした『共同反死刑』(Ensemble Contre la Peine de Mort; ECPM) は2000年10月にパリで発足したその名の通りの死刑反対団体で、『仏中団結』(Solidarité France-Chine) は中国の民主化運動の支援団体であり、双方とも中国の人権問題がその中心的活動の団体である。[>>4]
この判決の根拠としては、フランスには2008年に制定された「人間の尊厳は死によって消滅せず、医学的・研究的必要を除いて遺体を損ねてはならない」という法律があり、解体した人体を興行展示する行為は違法行為[>>5]として、24時間以内の中止と人体標本の没収を命じており、この判決はフランス国内の全ての博物館の人体標本や骨にも適用されるというものだ。
これに対しアンコールイベンツ側は展示会を中止し、不服申し立ての控訴を行ったものの、4月30日に控訴院にて、人体の出所と献体同意の存在の証明をアンコールイベンツが行わなかったとの理由で控訴が棄却され[>>6a]、フランス国内での人体展開催が事実上禁止されるという流れになっている。
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