英国情報局保安部のエヴァンズ長官が英主要企業のトップら約300人に警告の書簡を送ったとの記事が、今月初めに産經新聞や時事通信で報じられていますが、その情報ソースはいずれも英紙タイムズなので、元の記事を全訳してみました。

From The Times
情報局保安部は中国のサイバースペーススパイの脅威を警告
独占:情報局保安部長官が、英国企業にシステムが中国からの攻撃に晒されていると書簡を送る
![]() ジョナサン・エヴァンズ長官は、銀行、会計士オフィスや企業のトップやセキュリティ責任者に非公開の書簡を送った。 |
リス・ブレークリー、ジョナサン・リチャーズ、ジェームズ・ロシター、リチャード・ビーストン
英国経済の中枢に、中国政府機関に支援されたスパイ活動が行われているとして、政府は公然と中国を批判している。それは銀行や金融企業のコンピューターシステムを含む。
その空前の警戒で情報局保安部 (MI5) の長官は、「中国政府機関」による攻撃に晒されている銀行、会計士オフィスや企業のトップやセキュリティ責任者の300人に非公開の書簡を送った。ウェブベースのスパイ活動への関与で政府が中国を直接批判するのは初めてと見られる。エヴァンズ長官からのこのような警告が大っぴらに出されるのは、深刻な外交問題を引き起こし、年明けのゴードン・ブラウン首相の公式な訪中に影を落とす可能性がある。
タイムズ紙に掲載されている情報局保安部の警告の概要は、政府のウェブサイトで発表された。そこではエヴァンズ長官が企業トップに対して「電子スパイ攻撃について警告」と書いている。
国家基幹防護センター (Centre for the Protection of the National Infrastructure) のウェブサイト上のその概要には「書簡の内容は以下の内容をハイライトする:中国政府機関が支援する電子的な攻撃により、英国経済が打撃を被る可能性および、その攻撃が最新鋭のITセキュリティシステムを破るように設計されている事への長官の懸念」と書かれている。
その上で更に「中国とのビジネスに強力な経済的・商業的な理由がある事は認めるが、経営陣はそのリスクを把握する必要がある」と警告されている。
そのサイトへは、通信、銀行、水道、電力会社など国家の重要な根幹を担っている企業だけがアクセス出来る。この書簡は中国国内でビジネスを行う英国企業は、非公開の商業情報を盗むためにネットを利用している人民解放軍のターゲットになっていると警告している。昨夜内務省は、それは私信が漏洩したものだとしてコメント出来ないとした。駐ロンドン中国大使館の広報担当は、大使館が英国当局から何ら苦情を受けていないためその件は知らないとコメントした。
その書簡を見たKPMG社のマーティン・ジョーダン主任会計士は「例えばある英国企業が中国国内の土地や会社や資産などを買収しようとしてる情報を中国側が掴んでいたなら、英国企業側がそれを買収するために幾らの資金を準備しているかの正確な詳細を入手するために、如何なる手段をも用いるだろう」と述べた。
中国の攻撃によって最近危険に晒された企業は、ヨーロッパの最大級のエンジニア会社の一つと石油大企業であるとの情報をタイムズ紙は掴んでいる。しかし情報局保安部の警告に詳しい情報筋によると、その攻撃対象はロンドン市内に拠点を置く大企業に限った事ではなく、中国相手のごく小さな業務を扱う市内の法律事務所やその他のビジネスですら、潜在的ターゲットとして調査されているとの事だ。
また、その書簡を見た安全保障の専門家は、中国人グループによって使われる技術は、特定企業のネットワークへハッキングして機密データを外部流出するように作られたソフトの「カスタム・トロイ」であり、情報局保安部の書簡は、中国トロイを特定するための「サイン」のリストと、攻撃に用いられたインターネットアドレスのリストが含まれていると言う。
英国の政府と軍のコンピューターシステムが、中国やその他の国からの攻撃に晒されている事への大きな教訓が、今週の警告となっている。それは、中国のスパイ活動が「米国テクノロジーへの一つの最大のリスク」と米国で表現されたほど大規模であったと、先月米国議会で報告された矢先の事であった。
その(米国の)報告書を書いた一人であるオックスフォード大学のイアン・ブラウン教授は、その攻撃はホワイトホール(英国の官庁街)のパスワードを解読を試みたもので、それを逆探知したら中国からのものであったと語った。その報告書では、中国はインターネットでのスパイ活動と攻撃が最も盛んな国であるとし、またその他の120カ国も同様の手口を使ってるとしている。
英国のコンピューターシステムを防御している国家機関である国家基幹防護センターは、このサイバー攻撃で引き起こされた脅威は莫大であるとしている。
世界各国の防衛省はデジタル戦争の未来に関するマニュアルを書き直している。今年米国は政府や民間システムへの3万7000回のハッキングの試みがあり、サイバー戦争への対策として米国空軍に4万人の新ユニットが配備された。
この仮想犯罪報告書は、(ハッキングが) 興味本位の調査から、多額の資金を持ち組織立った軍事的・経済的・技術的なスパイ活動にまで発展した事を突き止めたとしている。
中国の政府が関与したとするハッカー攻撃は今年8月にドイツのシュピーゲル誌が報じたり、英フィナシャルタイムズが9月に米国防総省のコンピューターネットワークが中国軍のハッカーに占領されたと報道、フランスのル・モンド紙がやはりフランス首相府へのハッカー攻撃を報じ、10月22日にはドイツ政府高官が中国によるサイバースパイ攻撃を非難、先頃は米タイム誌が中国の産業スパイを特集したりなど、欧米諸国のメディアでは中国の産業スパイを報じる動きが最近活発化しています。
おまけ:
このタイムズ紙の記事に読者のコメントが大量に付いていますが、そのうち日本に関するものを訳してみました。何故か日本が再軍備しろという話になっています。
中国を抑制するために日本の再軍備が必要である。中国が人口では10倍で国土は更に大きいとしても、日本は第二次大戦で中国を叩きのめした。米国が出なかったら中国人は日本人の奴隷だった。
ビル・チャットウェル(トロント、カナダ)
>ビル・チャットウェルさん
日本の再軍備は中国を牽制しないでしょう。中国やアジア諸国がそれを「再軍備」(北朝鮮や韓国さえ)の口実として用いるなら、アジア全体の不安定を招きます。
記事自体に関しては、この警告は理解出来ます。しかし従来スパイ活動と同様にインターネットのスパイ活動に米国と英国が「その他120カ国」に入ってないと、人々はそう思っているのでしょうか? 実際米国はサイバー戦争の戦術をイラク戦争で用いています(特に湾岸戦争で)。ひょっとしてこの記事が更に中立的な視点で書かれていると言う事でしょうか?
NM(ロンドン)
今すぐ日本に爆弾を与えよう。
それを抑止力への責任のために用いるなど誰も信用出来ないし、中国はその拡張主義の目標を十二分に明らかにしている。
人民解放軍の司令官達が「アメリカは台湾のためにロサンゼルスを犠牲にはしないだろう」と考えているように、中国はその他のアジア諸国に威張り散らす事が出来ると考えているのだ。
西洋民主主義よ、目覚めよ! 中国は核武装をして明治日本を引き継いだのだ。彼等を阻止するのか、我々の子供達を20年間闘わせるのか。
JFH (ミシガン、米国)
一体何が問題なのですか? スパイ活動は国家諜報機関で普通に行われる事です。それともインターネットスパイは無制限であると言う事ですか?
日本の再軍備が中国への抑制になると考えてる馬鹿者達 (ため息) --- 中国を本当に恐れさせる「神」とは日本が核開発をする事でしょう --- おっと失礼、その神とは日本の神と同じ意味です。米国と英国が祈るのは神ではなく「金」である!!!
SK・リン (香港)
日本は独立国です!「日本に再軍備させる」のは米国でも英国でもない。日本は世界で最も強力で巨大な近代国家である。ネットで調べて下さい!
多くの原子炉や巨大な科学コミュニティを持つ日本が望むなら核武装はすぐに出来るでしょう・・・もしまだ所有してないと言うのなら。しかし日本は米国の「核の傘」(米国太平洋艦隊) に護られているため、表立って核兵器を必要とはしていない。
今日の中国と日本が軍事対立をする事は明らかに、両国にとって自殺行為であると考えられるため、それは起こりそうにない。
両国とも生活水準の維持と改良が優先されている。世界中の国がそれを優先すればいいのに。 ガース・レックス(グレンデール・ハイツ、米国)
西欧人はどうも「アジアの事はアジアでやれ」みたいな意識があるようですが、その一方で日本は自由主義社会の味方で中国は敵であるという認識をされているようではあります。
(次回エントリーに続く)関連記事:
中国の「サイバースパイ」警戒を=MI5が企業に呼び掛け−英紙 (時事通信 2007.12.1 18:07)
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【ロンドン1日時事】1日付の英紙タイムズは、情報局保安部(MI5)のエバンズ長官が英国の主要企業トップらに対し、中国政府機関が背後にいるネットを 使ったスパイ行為に警戒を促したと報じた。英政府が中国による「サイバースパイ」行為を直接批判するのは初めてとみられる。 同紙によると、エバ ンズ長官は銀行や通信、電力など主要企業だけがアクセスできる政府のサイトに書簡を掲載し、中国政府機関が支援する電子的な攻撃により、英国経済が打撃を 被る可能性に懸念を表明。その上で「中国とのビジネスに強力な経済的・商業的な理由があることは認めるが、経営陣はそのリスクを把握する必要がある」と警 告した。 |
英国企業に対し、中国が電子スパイ活動を活発化 (産經新聞 2007.12.1 18:55) [魚拓]
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【ロンドン=木村正人】国内の情報活動を担当する英情報局保安部(MI5)のジョナサン・エバンズ長官は、中国が企業の極秘情報を盗み出すため、英国の銀行や会計士、弁護士事務所のコンピューターネットワークに侵入する電子スパイを活発に行っているとの警告文書を企業トップら約300人に送った。1日付の英紙タイムズなどが一斉に伝えた。 駐英中国大使館は同紙に「そんな話は聞いていない」と答えている。 欧米政府のコンピューターネットワークに対する中国のハッキングは最近、激増しており、背後に中国人民解放軍の関与が指摘されていた。 同紙によると、中国が使用している不正プログラムは「トロイの木馬」と呼ばれ、正体を偽ってコンピューターに侵入、データ消去やファイルの外部流出などの破壊活動を行う。通常のワクチンを使っても防御できないという。中国側は電子スパイを通じて入手した情報をもとに企業買収などの経済活動を有利に進めているとみられる。 今回文書が送られたのは、極秘の企業情報が集まる銀行、会計士や弁護士事務所のほか通信関連企業、水道・電気会社などで、同長官は「中国企業と取引をする際は、電子スパイに見舞われるリスクを考慮すべきだ」と警戒を呼びかけている。 同長官は11月5日の記者会見で、中国やロシアなど数カ国が英国内で民間、軍用の機密技術や政治・経済情報の入手、コンピューター・ネットワークの破壊工作を進めていると指摘していた。 |
関連エントリー:
・中国の「太平洋分割管理」案 海外での報道は? (2008.3.14)
・中国に通信傍受筒抜け 米国にダミー会社 (ワシントンタイムズ) (2008.1.7)
・シェルとロールスロイスに中国のスパイ攻撃(英紙タイムズ) (2007.12.21)
・『中国、太平洋の東西分割提案か』ワシントン・タイムズ記事全訳 (2007.8.21)
・不正輸出のヘリ基に、中国が無人ヘリを開発 (2006.1.25)
・「ヘリの軍事転用不可能」、中国企業がHPで声明発表 (2006.1.28)
・中国当局、拘束のNYタイムズ紙助手を機密漏洩罪で起訴 (2005.12.25)
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