マティ・ハル兵長は不運だった トム・ニュートン・ダン (国防記事担当)、エミリー・スミス&トレヴァー・カヴァナフ ザ・サン紙 2007年2月8日
これは米軍パイロットの「スキーター」ことガス・コーントップ大佐による恐怖の友軍攻撃の残骸である。 A-10サンダーボルト機から彼が30ミリ砲で(英軍の)装甲車両を機銃掃射した時、マティ・ハル兵長になす術はなかった。8トンのシミター偵察車両の上部は剥ぎ取られ、滅茶苦茶に破壊された金属の塊と化した。 イラクで4台の護衛隊車両を攻撃したコールサイン「ポポフ36」の軍人を本日より本紙はコーントップ大佐と実名で表記する。また第2点として2003年3月28日の攻撃に関する英米両国の発表が著しく異なることも明らかにする。
漏洩したビデオテープのコーントップ大佐と彼の僚機A-10のパイロットのコールサイン「ポポフ35」は、米国の調査では潔白とされたが、英国の秘密調査では酷評された。
本紙が昨日明らかにしたように、その惨劇が起こった当時コーントップ氏はアイダホ防衛空軍の中佐だった。現在彼は空軍大佐であり、数百人の米パイロットが訓練を受けている対地攻撃技術訓練施設の最高責任者に昇進している。 この額のはげ上がった男、コーントップ大佐の身元は今日までは数人の米軍幹部が知るのみであった。 この40代の飛行機乗りは、大学卒業後そのまま米空軍に入隊し1999年に予備兵になるまで従軍した。彼は民間パイロットになりボーイング737を操縦していた。 悲劇が起こったイラク侵略の7日間、「スキーター」は彼の20年の軍パイロットのキャリアにも拘らず、その初めての戦闘任務についた。彼と「ポポフ35」はアイダホ防衛空軍の第190遠征航空隊所属であった。大佐は戦闘地帯において4ヶ月で27回の戦闘任務をこなした。A-10航空隊の作戦計画責任者としての彼の働きを米高官は非常に高く評価し、栄誉あるブロンズスター勲章を与えた。 故郷での雑誌インタビューで彼は「パイロットとしてのこれまでで最高の経験はイラクの自由のためにA-10を操縦したことだ」と語っている。当時実戦経験が不足していたにも関わらず「スケーター」は熟練飛行士としての実績を上げそれは幹部に高く評価されていた。 80年代半ばのまだかけ出しの頃、彼は世界初のステルス爆撃機のF-117ナイトホークのテストパイロットでインストラクターであった。米国防総省がその存在を明らかにしたのは1988年のことで、当時それは最高機密の任務であった。
22年の飛行経験に関して「スキーター」は雑誌の取材に対し「自分の行動は愛する人達と祖国にとって価値のあるものでなければならない」と語っていた。 このパイロットは宝石デザイナーである夫人のソーニーさんと16年間結婚生活を送り、ジェアード君 (13) とジェシカちゃん (8) の二人の子供がいる。自宅はアイダホ州ボイス郊外の4LDKで、「スケーター」は地元では腕利きのハンターで射撃コンテストの常連である。ソーニーさんは昨日事件に関する取材には応じなかった。 近所の人は本紙の取材に対し「イラクでのこの事件に関しては何も分かりません。私達が知ってるのは、彼は真面目なパイロットで家庭的な人であると言うことだけです。彼は善良な人であり、何事に対しても良心を重んじる人であることを信じています」と語った。 |
米国側はそのパイロットの身元を隠すことで、オックスフォードシア州のアンドリュー・ウォーカー検視官副代理が直接パイロットに接触して証拠提出を要求することを妨害していた訳であるが、コーントップ大佐の実名公開によってその障害は取り除かれることになる。彼がオックスフォードに来て、死亡した兵士の遺族に真実を全て証言することへの要請を、彼に直接働きかけることも可能となった。
最近まで米軍の機密であったコクピットビデオの公式版を検視官が使用することが出来るようになったので、検視官は本紙が漏洩版ビデオを提供した事に対して感謝を表明している。米国と英国国防省公認の公式版ビデオの請求がこれまで却下されていたため、彼は先週の査問は見送っていた。ウォーカー氏が米軍の全ての関係者の出廷を要請していることを本紙は確認している。
友軍攻撃の恐怖のパイロットはどちらも米国では処罰を受けなかった。6日に米国防総省は「(パイロット達は)発見したターゲットに対して適切な手順に乗っ取ったもの」と米側の調査は結論着けたと発表した。
しかし英軍側は「手順に従っていなかったことは明らかだ」と結論付け、A-10パイロットの一連の誤りを列挙した。英軍は「乗組員/前線航空統制官の理解認識度は不適切であった。ポポフ35からマニラホテル(地上統制官のコールサイン)へのターゲットに関する説明やターゲット特定の経緯は伝えられていない」とし、「前線航空統制官からポポフ36への攻撃命令をパイロット達は受けていない」とその重大なミスを指摘した。
コーントップ大佐の独断行動もまた批判され「ポポフ36には英軍車両への執拗な追跡があり、ポポフ35の任務時間や2つのターゲットを同時に狙うことの問題点へ注意が向いていたとの形跡はない」とされた。
審理の遅れによってブルーズ&ロイヤルズ(陸軍騎兵連隊)のマティ・ハル兵士の遺族に苦痛を与えた事に関して、ブレア首相は昨日「深く遺憾の意を表する」と表明した。首相は議会で「(国防省は)誠意はつくしたと思う」と発言したが、また「今後このような事が起こった場合により良く対処出来る」ためのシステムを再考すると約束した。
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恐らくサン紙は実名は最初の段階で掴んでいた筈で、その自宅のサイズや家族の名前から近隣の人の電話番号など(イギリスからわざわざ記者が事前にアイダホに行ったとは考えにくい)即座に見つけると言うのは、アイダホの地元メディアと提携してるか、それ以上に考えられるのが米軍関係者と繋がっている可能性です。
ところでこの事件、4年経って何で今頃ビデオが流出したり、アメリカ側が隠していたパイロットの身元がこの数日でいとも簡単に出て来たのか。これがロンドンの1タブロイド紙の取材能力でとても出来る内容とは思えないので、これはバックに米軍関係者やひょっとするとイギリス政府も情報提供に絡んでいるかもしれません。
マスコミは通常は何らかの情報筋は持っている訳ですが、問題は普段から国際問題や政治問題を扱っているBBCなどの大手メディアではなく、なぜそれがロンドンのタブロイド紙なのか。
![]() 2006年8月6日、アイダホシティ近郊の米国防空軍施設での戦闘サバイバル訓練でのガズ・コーントップ大佐 (Photo: U.S. Air Force) |
しかしそれにしても、本人はともかく子供の名前まで出すと言うのは日本やアメリカのメディアならさすがにここまではやらないでしょう。間接的にと言えども故ダイアナ妃を死に追いやったのはマスコミの執拗な追跡でしたが、所詮はイギリスのタブロイド紙、やはり読者の好奇心を満たすような内容になるのでしょうか。
ここまでプライバシーを暴かれると言うのは、この場合の軍人が「公人」かどうかの問題も当然出て来ます。軍人は国家の命令で戦争や軍施設に従事する訳で、確かに「私人」とは言えない面はあります。例えば沖縄の米兵が犯罪を犯しても私人として扱う事に世間は納得はしない訳です。
これを日本に置き換えてみて、もし米軍がイラクで自衛隊を誤爆して死者が出たとしたら、それが私人で済まされるかと考えても、やはり違うのではないかと思います。そういう時に日本のマスコミならどう報じるかを想像してみるのも興味深いですが。結局「自衛隊を派遣したのが悪い」「日本政府が悪い」などになりそうですが。
(次回に続きます)特集『米軍機による英軍誤爆事件』
1. イラク戦争時に米軍が英兵士を誤爆、コックピット生映像がTVに流出 (2007.2.12)
2. 命中の浮かれ騒ぎは一転して戦慄に (2007.2.14)
3. ザ・サン紙の圧力に米国防総省が屈服 (2007.2.15)
4.
5. 未亡人の苦悩 (2007.2.18)
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