これは米軍の友軍攻撃を報じたザ・サン紙の2月6日の特ダネ記事の翌日の、犠牲になった英兵の未亡人のインタビュー記事です。
このインタビューでは、情報隠蔽に関しては英国国防省がグルだったこと、国防省が持っていた交信記録の一部が間違って夫人の目に触れてしまったことでそのビデオの存在を知ったこと、更にその記録自体が編集されたものであったこと、米パイロットが如何なる処分も受けずその後も引き続きイラク戦争で任務をこなしていた事が語られています。
マティさんのいた護衛隊車列への攻撃の後、パイロット達の「ジョーク」と思われる発言に彼女は「吐き気を催した」そうだ。そして両手で顔を覆って絞り出すように言った。「神様、こんなに酷いことってあるの?」
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「自分達のやってることが全く分かってない人達によってマティは殺されたのです。彼等は車両の上にオレンジのロケット弾があると話していたけれど、そんなものは存在しなかった。ターゲットが友軍だと分かるチャンスは幾らでもあったでしょう。私は今まで長いこと怒りを感じていましたが、今は悲しみを感じます。時間は痛みを和らげますが、真実を知らされないことは、傷口を何度も何度も切り開かれるように感じます。」
2003年3月のマティさんの死の8ヶ月後、スーザンさんはロンドンのウェストミンスター寺院でブッシュ大統領に面会した。彼女は「大統領に手紙を渡して、彼は私の手を握って『出来ることは何でもすることを約束します』と言ったにも関わらず、真実は何ももたらされませんでした」と語った。
「最初の希望が訪れたのは、マティが率いていた護衛隊への攻撃に関する記録文書を閲覧することを国防省が遂に私に許可した時でした。そこにはパイロットの交信記録の一部がありましたが、今この映像を見て、防衛省のものは編集されたものであることが分かりました。
その後私は書類のコピー、特にコクピット通信記録の全文が欲しいと彼等にメールを送りました。でもそれは国家機密法に抵触するとすぐに返事が来て、受け取ることは出来ませんでした。その通信記録は何かの間違いでその書類に含まれていたもので、私が目にする筈のものではなかったのです。でもそれがその疑いに関して私を確信させた最初のものでした。
ビデオを入手するのはまだまだ長い困難な道のりであると感じていました。だからザ・サン紙にとても感謝しているのです。夫が戻ることはないにせよ、これは私にとっては一つの区切りとなりました。
無垢な人達の苦しみをよそに当局は罪人を匿っていた訳ですが、もはやそれは出来なくなったと言う事が、私にとってささやかな慰めです。一人の男の死を認め真実を告げる、たったそれだけの事すらも出来ず、彼等はそのミスを隠ぺいすることばかり考えていたのです」
昨夜スーザンさんはアメリカ側がマティ・ハル兵長の審理のためにその映像を公式に公開すると言うニュースを受けて非常に喜び「とても上手く行ったと思う」と語った。
朝日新聞が言及していた「2月7日のインタビュー」とはこの記事のことでしょう。「打ちのめされた」と言う表現が使われているので、この記事を見る限りでは未亡人のインタビューに関しては朝日の訳は順当のようです。
朝日新聞:『攻撃で死亡した英陸軍のマティー・ハル伍長代理(当時25)の妻で、小学校教諭のスーザンさん(30)は7日付のサン紙のインタビューで、「操縦士たちがいとも簡単に夫を殺したと知り、打ちのめされた」と語った。』
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![]() 2007年3月、BBCのインタビューに答えるスーザンさん (Photo: BBC) |
これはイギリスの大衆紙なので、アメリカ追従のブレア批判、フォークランド紛争以降の根強いイギリスの反戦風潮、イギリスの愛国心を刺激する反米記事、更にお涙頂戴の悲劇物語など、とにかく大衆受けの要素が満載の印象はあります。
尤も、未亡人に夫を殺害した瞬間の戦闘機のコクピット映像を見せてそれを取材すると言うワイドショー並の悪趣味さがタブロイド紙らしいと言うか、ただこの場合は事件を公にすることそのものが未亡人の望んでいることなので、そういう点両者の利害関係が一致していたとも言えます。
![]() 2007年3月、ブッシュ大統領宛の声明を発表するスーザンさん (Photo: Press Association) |
いろいろな点を総合してみると、どうもサン紙への情報はアメリカから直接入ってるのではないかと、そもそも米国国防総省や英国国防省の公認ビデオが編集版なら、編集される以前のもの、つまり現場に直接関わった軍関係者から出たとも考えられます。
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パイロットの通信記録を見ても、手柄を立てたいと言うのが最初の動機に見えます。それから、敵を潰してなるべく早く戦争を切り上げたい、敵の戦力を見逃したらそれは自分達の危険となると言う心理は働くでしょう。
ブッシュ大統領は未亡人に対してリップサービスをしたようですが、結局それだけの事だったようで「力になります」と言うだけなら誰だって言える訳です。拉致問題ともダブリます。
特集『米軍機による英軍誤爆事件』
1. イラク戦争時に米軍が英兵士を誤爆、コックピット生映像がTVに流出 (2007.2.12)
2. 命中の浮かれ騒ぎは一転して戦慄に (2007.2.14)
3. ザ・サン紙の圧力に米国防総省が屈服 (2007.2.15)
4. 米軍パイロットの実名報道 (2007.2.17)
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