Red Fox

オレンジ色の光



海のメロディー (1979) (3'41")
作詞・作曲:八神純子

晴れた午後 海の見える丘までゆけば その夜は
はるか遠くの国まで 船に乗ってゆく夢をみる
潮の香りが残った長い髪から 今夜は
きっと聞こえて来るでしょ 一番好きな渚のメロディー

今ごろあなたはアメリカで オレンジ色の光
好きよ 好きよ どんな遠くにいたって


合歓の郷野外ホール (八神純子『コッキーポップコレクション Vol. 2』より)

 アメリカに来た頃、夜になるとダウンタウンの方角の空が夜中でもボワーっとオレンジ色に染まっていたので余計、不思議な別世界にいる気分になったものですが、アメリカの街路灯がオレンジ色なので、夜になると空がオレンジ色に染まって見えます。

 この歌を初めて聞いた当時は何で「オレンジ色の光」なのかと思っていたのですが、実際アメリカに来てみたら確かにそうでした。この『海のメロディー』は当時の八神純子さんのヒット曲『ポーラースター』と『パープルタウン』の間にリリースされながら珍しくベストテン入りしなかったシングル『甘い生活』のカップリング曲として発表されたものです。


 トップの写真は先日シカゴに行った時に撮影した夜のミシガン通りの景色、以下の写真もその近辺で撮影したものです。

 アメリカでは街路灯に高圧ナトリウム灯が一般的に用いられているために夜景がオレンジ色になるのですが、アメリカの都市では犯罪を減らすために全ての街路に明るいオレンジ色の高圧ナトリウム灯を普及すると言う試みはかなり昔から行われています。やはり都市部に犯罪が集中するお国柄ならではの歴史であり、特に往年のシカゴはギャングスターの街として悪名が高いのですが、街路灯の普及で夜の街を明るくする事で犯罪抑制の狙いがあったそうです。

 このオレンジ色のランプはアメリカでは通称「Yellow lamp」と呼ばれていますが、「イエロー」と言ってもオレンジがかったイエローで、以下の写真も同じ地点でモードを変えて撮影したものですが、その辺の街路灯が全部オレンジ色です。


 なぜアメリカの街路灯にオレンジ色の高圧ナトリウム灯が使われるようになったのかと言う理由は幾つかあるようですが、まずエネルギー効率が良いため消費電力も少なく寿命が長いと言う利点(水銀灯の半分程度の電力で2〜3割増の明るさ)があり、明るく遠くまでくっきり対象物を照らし出すことが出来る利点があります。 要するに省エネ型で少ない設置数でも暗闇を照らすという利点で高圧ナトリウム灯が普及したようです。

 高圧ナトリウム灯はHIDランプの一種で、日本の高速道路にも用いられているので、日本国内でも実はお馴染みのランプです。これは自動車のフォグライトと同じように霧の時も遠くまで見えると言う利点がありますが、 確かに特に温度差の激しいアメリカ内陸部では霧になる地域が多いために、フォグライトとしての機能も兼ねる街路灯というのも、その土地柄が表れているのかもしれません。


 以下の写真は私の地元から車で1時間位離れた隣の市から帰る途中に、延々とオレンジ色の景色が続いていたので、途中で何枚か写真に収めたものです。シカゴなど大都市の街中のように街路灯以外の灯りがあるのと違って、郊外の分譲住宅地などは景色が完全にオレンジ一色です。

 波長の長い赤系の光は屈折率が高く影が出来にくいので、暗闇を照らすには効率的ではあるのですが、全部オレンジ色になってしまうので対象物の本来の色が分かりにくく、結局のところ白黒で見ているのと同じことになってしまうと言う欠点もあります。この写真も同じ地点で撮影したものですが、信号以外が全部オレンジです。

 赤系の光は遠くまで届くため、地上は日本の方が遥かに明るいのに、飛行機から見るとアメリカの都市は非常に明るくオレンジ色に輝いて見えます。

 アメリカは夜飛行機から見ると地上には灯りがゼロなんて地域が多く、星が出ていなければ上も下もない暗黒の中を停止しているような感覚に陥りますが、その中に飛び飛びに集落や都市があると、高度6000mの上空から見るとまるで暗黒の闇の中にオレンジに輝くヒトデが浮遊しているように見えます。以下はシカゴの夜景。


(Photo: Robert Bryll)

 対照的に日本の夜景は白く輝いています。

 このオレンジの光は日本の白色灯よりも空を染めるため、「光害」と言う観点から見ればかなりのものがあります。上空からこれだけ明るく見えるという事は、それだけ空を染めているという事です。上記のシカゴと東京の写真を比べれば、大気中にどれだけ光が拡散しているかの違いは一目瞭然です。

 ロッキー山系のイエローストーン国立公園に行った時も4日間の滞在中晴れていたにも拘らず、宿泊した小さな町から天の川ははっきりは見えませんでした。岩手県位の面積のある国立公園でもちょっとした集落のオレンジの光で天の川は消されてしまっているようでした。犯罪抑止やエネルギー節約の方が優先されてしまっているお国柄ならではです。

 アメリカは人口の割に国土が広過ぎるために、とにかく国として機能させるために全国のインフラを整備するのに、いかに低コストかという課題が優先されているように思えますが、一方気候の安定した日本と違って、例えば私の地元では夏は連日40度、冬は冷え込む日はマイナス20度まで行きますが、そういう温度差が極端な地域が多いので、伝統的にエネルギー問題にシビアなのでしょう。

 アメリカは京都議定書の問題など、国際社会と歩調を合わせない点で評判は悪いのですが、つまりそれが国際協定で一律に規制されても、国内の能力がそれに追い付かないと、アメリカの言い分はそんなところなのかもしれません。人口の割に国土が広過ぎるという問題からか、交通手段が車に極度に偏った高石油依存社会だけあって、エネルギー節約に関しては実は結構シビアで、夏の電力過剰期に電力会社が一般家庭のサーモメーターを一括コントロールするシステムを導入するように呼びかけるキャンペーンなどやっていました。

 正月くらいは心穏やかに過ごしたいので、本日はアメリカの風景を紹介しました。本年も宜しくお願い致します。




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コメント

日本人の感性だと昼光色のほうが落ち着きますね。
トンネルや高速道は安全確保上しょうがないと思い,明るさは分かっていても,そこまでシビアに考えていませんでした。
私が住んでいるところの光のページェントもいろいろ考えさせられましたが,オレンジ色の光も効率と言う観点から考えさせられますね。

  • 2008/01/02(水) 23:37:47 |
  • URL |
  • blue moon #u2lyCPR2
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mixiでも御挨拶させて頂きましたが、改めまして

あけましておめでとうございます。


街路灯の色ですが、そういう理由だったのですね。80年代、金曜ロードショーや日曜洋画劇場などでアメリカの都市犯罪を扱った映画を目にする度、「明るい所で、随分とまあ、堂々と」と思った事を思い出しました。
「明るいのに危険」なのではなく「危険だから明るい」
なる程、納得です。

犯罪抑止と言えば割れ窓理論を思い出しますが、札幌ススキノでは駐車違反の取締りと飲酒検問を極端に強化することでかなりの成果が挙がったようです。勢い、効果の程が測定し難い街路灯より、問答無用の人海戦術を推したくなりますが、そもそも札幌と例えばデトロイトとでは犯罪発生率が全く異なるので、一概には言えないのでしょうね。人海戦術をするにはデトロイト市警の人員は全く不足しているでしょうし。

それにしても、冬の北海道にいる人間としては、単純に「街があったかそうだのお」とも思ってしまいましたw明るい所では、感じる雪の冷たさもまた変わってきますから。

  • 2008/01/03(木) 11:08:00 |
  • URL |
  • ぐい呑み #-
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blue moonさん

オレンジの夜景というものは、白黒映画の中に入ったような非現実的な世界にいるみたいで、最初の頃は何とも落ち着かなかったのですが、それでも人間は慣れるもので、最近は日本の昼光色の方が寒色に感じるというか、アメリカの古びた汚らしいダウンタウンもオレンジの光の中では幻想的に見えますw

日本人は季節を楽しむためにサマータイムが根付かないし、色彩を楽しむから昼光色が好まれるのであって、これは日本の包装文化とも通じますが、日本の生活はとにかく「気分」のためにコストがかかる「無駄な部分」が多いので、日本人の生活スタイルはある意味贅沢なんですよ。

  • 2008/01/03(木) 14:54:49 |
  • URL |
  • 文太 #gJtHMeAM
  • [ 編集]

ぐい呑みさん

あけましておめでとうございます。って2回目ですねw

アメリカでも治安の悪い地域に住めば肌で実感しますが、黒人ホームレスが路上にうようよしている強盗やスリ、レイプの多い地域では、とにかく「危なそうな人間を見かけたら近付かない」が原則なんです。銃を持っているかもしれないし。

住んでいれば、服装・仕草・顔つき・目つき・肌の色などで危険な人間かどうか一目ですぐに分かるようになります。あの人達は大抵は計画的に犯罪を犯す訳ではないので、肉食獣がうようよしているジャングルに住んでいて、猛獣を避けながら生活していると想像して頂ければ分かり易いかもしれません。だから明るければ猛獣を見つけ易い分だけ抑制になります。一方飲酒運転や駐車違反なら街路灯で抑制効果にならないですからw

日本人の感覚では「人種で人を見るなんて」なんて思われるかもしれませんが、犯罪率が高ければ仕方ないんです。白色灯では夜の黒人は見えにくいので。オレンジ灯は一種の赤外線カメラみたいなものかもしれません。

シカゴの写真は11月下旬ですが、この時はマイナス5度位で結構寒かったです。それから地元郊外の写真は2月撮影ですが、この日も寒い日で確かマイナス10度位でした。芝生が白く見えるのはこれはうっすらと凍り付いてるんです。街灯がオレンジなだけで全然暖かくなかったですよw

  • 2008/01/03(木) 14:55:56 |
  • URL |
  • 文太 #gJtHMeAM
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明けましておめでとうございます。

確かに随分と光色が違うものですね。日本にいると分かりにくい違いですが、そういえば、「ダーティハリー」とか「48時間」とか「レッドブル」とか、映画のなかでもこんな光の下で拳銃ブッ放してたと思います(刑事物ばかりですね)。

それにしても、環境問題ではアメリカも大変ですよね。まぁ日本もですけど。
京都会議のときなど、「ジャイアニズム」とかなんとか言ってアメリカの姿勢を批判する日本人が多く居ましたが、もともと省エネ型で対策なんて限られているクセに安請け合いしてしまった日本の先行きのほうが余っぽど怪しくなってますし。

http://www.youtube.com/watch?v=6tHUazOZIAk
ちょっと面白かったので、こんなビデオを。
アメリカ人にも、色々と歯がゆいことはあるんでしょうね。

  • 2008/01/03(木) 19:25:52 |
  • URL |
  • 虎御前 #WzzJX4NY
  • [ 編集]

あけましておめでとうございます。

5年ほど前の冬、仕事でシカゴを訪れたことがあります。夜の七時ころだったと思いますが、食後の散歩がてらシアーズタワーに上り、夜景を眺めたことを思い出しました。道なりに橙色の光であふれ、何となく「アメリカだなぁ」と感慨にふけったものです。季節のせいもあるのでしょうが、暖色なのに妙に寒々とした感じがしました。

今年もよろしくお願いいたします。

  • 2008/01/03(木) 21:26:44 |
  • URL |
  • 三四郎 #D6on0lU.
  • [ 編集]

虎御前さん

あけましておめでとうございます。

アメリカ映画は刑事ものがお好きなようですねw 映画で見れば照明効果か何かに見えて街路灯の色など余り意識しないかもしれませんが、実際に見て印象的なのは、街路灯の色自体よりも空が染まってる事でした。

初めて渡米したのが7月で、日が長い季節だったのですが、更にサマータイムで夜9時位まで明るくて、その後夜中過ぎてもいつまでも空が夕焼けみたいに赤いのは何とも異様な光景で、ホタルは飛び回っているし、それが第一印象でした。

日本の外交姿勢というのは、日本は国連にはアメリカに次いで2番目に高額の負担をしていたりなど、とこかく無理してでもいい顔をしたいというか、批判されるのが嫌で、断り下手で、個を犠牲にしてでも全体に貢献するという、何となく日本人のそういう習性がそのまま出ているようにすら見えますが、一方アメリカ人は出来ないものは出来ないと割とはっきり言いますね。割と角を立てないで断り上手な人が多いんですが。

ご紹介のビデオですが、アメリカも確かにモータリゼーション以前は鉄道が充実していた時代もあるんですが、なんせ国土が広過ぎるので総延長距離が長く、全体的に作りが雑なんですよ。

ただアメリカは山がない大平原が大半なので、線路は一直線で割とスピードは出せるし、カーブがない分だけ車両や路線の消耗が少ないので、だから技術が発達しなかったとも言えるかと思います。国土の70%が山地の地震大国の日本とは条件が違いますね。

  • 2008/01/04(金) 18:25:27 |
  • URL |
  • 文太 #gJtHMeAM
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三四郎さん

あけましておめでとうございます。

シカゴにいらした事があるんですか。冬の夜7時ならもう真っ暗なので、夜景も奇麗に見えた事だと思います。私はシカゴは用事があって行く事ばかりで、通過したりとんぼ返りが多いので、あまりまともに観光をした事がないですね。

暖色が寒々として見えるという感覚、何となく分かります。私の場合は初めて来た頃は、オレンジの街並は非現実的な異次元の世界みたいに感じてましたから。

  • 2008/01/04(金) 18:26:31 |
  • URL |
  • 文太 #gJtHMeAM
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明けましておめでとうございます(^-^)/

御挨拶が遅れてしまいました。オレンジ色の光、日本ではトンネルの中の照明がまず思い浮かびますね。市中ではあまり見ないように思います。読ませていただきアメリカの広さと気候の厳しさを改めて感じました。酷寒酷暑…年寄りにはキツいでしょうね(-"-;)

  • 2008/01/04(金) 23:01:54 |
  • URL |
  • あきら #-
  • [ 編集]

あきらさん

明けましておめでとうございます

日本の街路灯が白色灯なのは恐らく日本の街路灯が電化された当時からの伝統なのでしょうが、日本で用いられている水銀灯も実は白色灯ながら演色性が良いものではないので、どうしてエネルギー効率の悪いものが日本で主に使われているのかというのも、理由はまた別な所にあるのかもしれませんね。

昨年mixi日記ではマイナス16度の風景の写真を紹介した事もありましたが、アメリカで公共交通が普及せずに車社会になった背景というのは、国土の広さだけでなく、駅や停留所まで歩くのすらも困難な季節があるというのも理由の一つなのかもしれません。

  • 2008/01/05(土) 15:33:44 |
  • URL |
  • 文太 #gJtHMeAM
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