産経新聞の20日の記事で、加藤駐米大使が米下院の枢要メンバーに対して慰安婦決議案に関して抗議する書簡を送っていたと報道されていたのはご存知の方もいらっしゃると思います。
■慰安婦決議案「日米に害及ぼす」加藤駐米大使が警告 (産経新聞 7/20 8:07)http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070720/usa070720001.htm [魚拓]
この記事では、ワシントンポストとロイター通信で報じられたこのニュースを概略で紹介していますが、肝心の元の記事がどうなってるか気になったので、全文を訳してみました。
尤も、ワシントンポスト自体が私の地元ではどこも扱ってないほど、これは売り上げ部数のある新聞ではないのですが、このワシントンポストや、大西哲光記者が日本叩きに執念を燃やしてるニューヨークタイムズを除けば、この非難決議案自体がアメリカのメディアで取り上げられる事が殆どなく、アメリカ国民はこの問題には全く無関心であります。
ワシントンポストの記事に関しては前半部分の翻訳が2ちゃんねるに出ていますが、これは訳者の政治的スタンスによってその細かいニュアンスが主観の影響を受けているケースに見受けられるため、ここに出来うる限りの原文のニュアンスに忠実な全文訳を試みてみました。全文訳なので長いですが、アメリカの大手新聞がこの問題をどう書いてるかご興味のある方は、是非ご一読下さい。
ハイライトは産經新聞で触れられていた部分。
日本が第二次大戦の性的奴隷に関する下院決議案に対して警告を発する
ブレイン・ハーデン
ワシントン・ポスト紙海外ニュース担当
2007年7月18日(水)A15面
日本が下院枢要メンバーに対して、もし決議案を可決するなら日米関係に対する長期に渡る深刻なダメージを与えるであろうと、警告していた事が分かった。この決議案は戦時中に女性を兵士のための性奴隷になる事を強要した政策に対する公式な謝罪を日本に要求するものである。
ナンシー・ペロシ下院議長(民主党カリフォルニア)を含む下院の5人の枢要メンバー宛のこの異例にストレートな内容のこの手紙には、日本の加藤良三駐米大使によって「(批判決議案の採択は)ほぼ間違いなく日米両国間の深い友好、緊密な信頼、そして広範囲の協力に長期の有害な影響を及ぼす」と書かれている。加藤大使によれば、1993年以来日本は「慰安婦」の過酷な扱いに関して繰り返し公式謝罪をして来たとある。「慰安婦」とは第二次大戦前と大戦中に日本政府によって売春を強制された推定5-20万人のアジアの女性に対して用いられる用語である。
本紙が入手したこの6月22日付けの書簡には、日本はイラク復興に米国に次ぐ二番目の額の投資をしているが、米国のイラク政策を忠実に支持する数カ国の一員である事を見直す可能性もあると示唆している。加藤大使は「長期の有害な影響」への警告に続いて、日本が最近イラク復興協力の2年延長をした事に触れ、米国にとって何がリスクであるかの例とした。
拘束力のないこの決議案は、8月の下院休会の前に採決される予定。慰安婦に対する日本の国家としてのこれまでの謝罪を公然と後退させた安倍首相の今年の発言に関して、多くの米国の議員が怒りを表明し、決議案への支持が広がった。安倍首相は、日本軍がアジアの女性に売春を強制した事を示す証拠書類はどこにもないと言っている。156人の賛同人によって、決議案は先月下院外交委員会を圧倒的多数で通過しており、本会議では容易に可決されると見られている。
決議案の提案者のマイケル・ホンダ議員は、この大使の書簡をこけ脅しの圧力として「この決議案は外交や通商関係に悪影響を与えるものではない」と一蹴した。日系アメリカ人で第二次大戦中にコロラドの収容所に送られたホンダ議員 (66) は、アメリカが日系市民を拘留した事を謝罪しているのと同様に、日本も公式に慰安婦に関して自らの行いを謝罪するべきであるとし、「安倍首相が慰安婦強制がなかったと主張する限りそれは真の謝罪にはならないと、私自身はそのように見なしている」と語った。
この決議案の“明確ではっきりした”謝罪の要求は、日本国内で大きく報道され、日本の世論の反発を引き起こした。それは財政や年金問題で支持率が30%未満に落ち込んだ安倍首相の前に、もう一つの厄介事として立ちはだかった。幾つかの世論調査によると、安倍首相の所属する自民党は7月29日の参議院選挙で議席を失う可能性があるとされている。ホンダ議員は、安倍首相を困らせる意思はないので、米下院の慰安婦決議案の採択を日本の参議院選挙後に延期する事に同意したと語った。
この問題に詳しい米国の役人によると、日本政府は安倍首相の慰安婦に関する発言を、一人の政治家の遺憾な失策であり、それは1993年に始まった日本政府の謝罪を否定するものではないとして、ワシントンで米議員を説得を試みていると言う。4月のワシントン訪問で安倍首相は慰安婦問題による「極度な苦労」のために慎重な言い回しで公的な謝罪をしたが、日本政府が関与した事を示す証拠書類が存在しないとする主張を撤回はしなかった。米議会調査局による昨年の報告によると、日本政府による先の調査では、売春宿設置と女性募集への日本軍の関与を示す100以上の書類が明らかになったとされる。
2005年まで国家安全保障会議のアジア課長を勤めた、現在ジョージタウン大学教授のマイケル・グリーン氏は、大使の書簡は、決議案によるダメージを如何に最小限にするかの日本政府内での激しい討論の結果であるとする。それは決議案を破棄するよう下院議員に圧力をかけるようブッシュ政権を説得する事に失敗した後に、下院の枢要メンバー宛の強い調子の書簡を送る事を日本政府が決定したのだと、グリーン教授は語った。
日米双方の日本の政治に関する専門家は、慰安婦に関する今年の安倍首相の発言は、日本の戦時中の行いに対する悔恨への海外からの要求を快く思わずそれに抵抗する、自民党内の保守的なネオナショナリズム勢力の機嫌を取る試みのように見えたと語った。
以下は、産經新聞の記事で言及されていたロイター通信の記事です。この記事はABCテレビ、ボストン・グローブ、ワシントンポストに掲載されています。

日本の性奴隷に関する7月30日の投票を米議員は注目する
ロイター通信
2007年7月18日 16:38
【ロイター通信(ワシントン)】第二次大戦中に数千人の女性を性奴隷にさせた事に関して日本に公式な謝罪を求める決議案が、7月30日に下院で投票される可能性があると、決議案の主提案者が18日に語った。
カリフォルニア民主党のマイク・ホンダ下院議員は、日本の保守主義者の逆行行為に触発されたこの象徴的な決議案が、8月6日以降の夏期下院休会の前に「確実に」採択されるであろうと語った。
この決議案の通過はアメリカとアジアの最も近い同盟国との結束を傷つけるだろうと、ナンシー・ペロシ下院議長他の下院枢要メンバーに日本大使から送られた主張を、日本人を祖先に持つ数人の米国議員の一人であるホンダ議員(66)は退け、「この決議案が二国関係に悪影響を与えるとは思わない。償いによって関係は普通はより強くなるものだ」とし、日本に配慮して7月29日の参議院選挙の後に決議案投票を行うと言及した。
日本の加藤良三駐米大使は、「(批判決議案の採択は)ほぼ間違いなく日米両国間の深い友好、緊密な信頼、そして広範囲の協力に長期の有害な影響を及ぼす」と警告をしている。下院外交委員会での評決以前に書かれた6月22日付のこの書簡は、採決が及ぼす悪影響の例としてイラク復興への日本の支援を挙げている。ロイター通信に提供された大使の書簡は「決議案121号を進める事は、日米関係を損なう事を望む人達の目的に叶うものい過ぎない。それが起こる事をあなた方が認めない事を望む」と締めくくられている。
この拘束力のない決議案(米国議会の意見を示すもので対日政策ではない)は、39対2で「圧倒的多数で容易に可決」され、委員会によって承認された。
日本は1993年に戦時中の売春プログラムでの国家としての関与を認めているが、歴史学者達は、何千人もの女性が(そのうち一人は20万人と推定している)日本兵の相手をするために前線の売春宿に連れて行かれたと見ている。
今年3月に日本の安倍首相が、日本政府や軍が女性を調達するのに直接関わったとする証拠を否定し、猛反発を引き起こした。彼は後に彼女達の苦痛に関して謝罪をし、1993年の談話の継承を繰り返し述べたと、米国議会枢要メンバーに宛てた日本大使の書簡ではそのように強調されている。
6月14日のワシントンポストに掲載された日本の政治家やジャーナリスト有志による意見広告『事実』では、その以前にワシントンポストに出された慰安婦支持団体による意見広告を「事実に基づくと言うよりも信念の産物のようなもの」と表現していましたが、この記事を見ると、やはり慰安婦問題は「政治」であり「主義」の産物であるようです。この記事の根底にある主張は「慰安婦問題は動かしようのない事実であり、異論を挟む事自体認めない」であります。要するに研究も資料も主義主張の前には何の意味もないと言う事になります。
それにしても、ワシントンポストの記事中、「日本政府による先の調査では、日本軍の関与を示す100以上の書類が明らかになったとされる」とありますが、それは1992年の加藤閣官房長官発表の
| 慰安所の設置、慰安婦の募集に当たる者の取締り、慰安施設の築造・増強、慰安所の経営・監督、慰安所・慰安婦の街生管理、慰安所関係者への身分証明書等の発給等につき、政府の関与があったことが認められた。 朝鮮半島出身者のいわゆる従軍慰安婦問題に関する加藤内閣官房長官発表(外務省 平成4年7月6日) |
との事で、安倍首相の発言として焦点になっているのは軍や政府が強要・強制連行したかの事であり、それに関しては「関与を示す証拠は発見されていない」が政府見解であり、どうもこのワシントンポストの記事ではそこら辺がごっちゃにされている感じです。実際アメリカにとってはその違いはどうでもいいようです。 それとも強制動員の証拠とはこれの事?
↓
・旧日本軍の「慰安婦」強制動員 証明文書を確認 (朝鮮新報 2007.4.23) [魚拓]
しかしこれは記事で言われてるような政府の調査ではないし、しかもそのやり方そのものが問題視されている東京裁判を根拠とするものです。
マイク・ホンダ議員に中国人団体が政治資金を提供してるから彼は反日活動にいそしんでいるとはよく言われています。しかし、このワシントンポストの記事を見ると、どうも彼の行動には戦時中の日系人強制収容所が原点にあるように見えます。戦時中に日系人はアメリカに忠誠を誓うために祖国を捨て、そして「日本が戦争を起したから自分達が酷い目に会った」に帰結してるような戦前移民の日系人独特の精神構造は、私の知人の日系人にも見られる傾向です。
関連記事:
・慰安婦決議案、米下院本会議で30日に採決 ペロシ下院議長も支持、採択濃厚(毎日新聞 2007年7月27日 15時00分) [魚拓]
ロイター通信の記事が掲載されてるその他のリンク
・ABC News (Jul 18, 2007
・Washington Post (July 18, 2007; 4:38 PM)
・ Boston Globes (July 18, 2007) [魚拓]
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