去る3月5日に、清廉会の座談会に参加しました。これはメッセンジャーでのリアルタイムのグループ討論を基に、細切れになったり順番が入り乱れている会話をある程度整理したものが清廉会のブログに毎回掲載されています。
今回はテーマが『英語教育』という事で私にも声がかかったのだと思いますが、実際問題そこで議論されていた事は、私が実体験や身近な人の例などで大半が答えられるトピックでありましたが、私の場合は自己主張や思想ではなく単なる実体験であって、実体験に対する異論も反論も必要ないので、議論本体自体は私を入れないでやって頂いた方がいいと思い、取り合えず傍観に徹する事にしました。その代わりそこで出たトピックに関する私の解答をブログでまとめる事にしました。
まず元の座談会に目を通して頂ければ、このエントリーで書いている事が伝わり易いと思います。
清廉会ブログ
公教育での英語教育をどうするべきか? (2008.3.8 14:49)
| ・ | 外国語教育によって日本人として不完全な日本人になる恐れ(織原さん) |
| ・ | 英語の早期教育による「英語脳」によって日本語力に支障をきたす問題(耕さん) |
| ・ | 英語を義務教育でやる=日本語の教育がおろそかになるという図式は推測に過ぎない(祥平さん) |
世界には多民族多言語の国は沢山あって、バイリンガルやトリリンガルなどはざらにいる訳ではありますが、その多くは植民地支配によって民族の文化がかなり失われている国や、アメリカ大陸のように移民後の多民族の融合が基礎になっている国、東欧のように多民族の民族移動や戦乱などで国境が変わり続けたなど、日本とは歴史状況がかなり異なる場合が多く、更に日本は地理的に海に囲まれた極東の天然の要塞であるからこそ奇跡的にほぼ無傷に文化が保てたという事情を考えた場合、日本らしさ、日本人らしさと言うのはルクセンブルクのようなバイリンガルでもトリリンガル文化でもないという考え方は、これは理解出来ます。
例えばフィリピンでは学校教育の授業の半分がタガログ語、半分が英語で行われているため、こういう教育システムを実践すれば国民全体の英語レベルが高くなるのは当たり前の話ですが、スペインとアメリカの支配によってどれだけフィリピンの文化が失われているかを考えれば、日本と同列には語れない訳です。ベトナムもフランスの植民地支配によって漢字を捨てています。
アメリカでよく見かけるのが、幼児期に移民したバイリンガルや、両親祖父母の出身国が異なり3−4カ国語を話す移民2世3世ですが、ここら辺の人達が抱えている問題は、まともに使える言語が一つもないという状況に陥り易いという点です。
例えば日系二世の場合は幼児期は親に日本語で育てられ、学校に通い始めてから英語を覚えるため、まず英語がハンデの状態で学校が始まり、それ以降は英語環境になるため日本人学校に通って努力したとしても、日本語で受験勉強をする訳でもなし、子供レベル以上の日本語にはなりません。
この問題は、最低一つはまともに使える言語がないと、レベルの低い理解度の言語しか持っていない人は学ぶ事すら出来ないという状態になり、思考力の不充実を招く危険性があります。
つまり英語早期教育を取り入れるにしても、日本語教育の充実が最低条件になるというのは当然の話だと思います。
| ・ | 知識を得るための手段としての英語(農民さん) |
| ・ | 各国の特徴を学ぶならそれぞれの言語。英語に限る必要はない(耕さん) |
| ・ | 英語のみでなく多言語教育を(同一なる四者さん) |
| ・ | 興味優先もいいが実用性も必要(がばちょさん) |
今まで通算すれば、世界の30カ国くらいの人達と知り合っていて、メールなどで連絡を取る事もちょくちょくありますが、1つ共通の言語があるというのは便利な物で、誰もが取り合えず英語を勉強していれば、世界中どこに行っても通じる訳です。「何故それが英語なのか」「フェアじゃない」など言ってみても始まりません。世界の現実がそうなっているのだから。
医学にしてもドイツ語が中心だったのは過去の話であり、現代においては日本国内で行われる様々な分野の国際学会も英語で行われる場合がほぼ全てでしょう。
一方、例えばドイツに行った時は、ドイツ語が出来た方がよほどドイツの事は理解出来ると実感したし、タイに滞在していた時も英語だけならどうしても壁があり、タイ語が出来たらよほど現地の人と打ち解けられるし、一人で行動も出来るしと、タイ語が出来たらいいなと思いました。例えばロシアの研究をしたければロシア語の文献が読めなければ話にならない訳で、でもそのためにそれぞれの言語を何年もかけて習得していたら人生終わってしまいます。
それに中途半端にいろんな言語が低レベルで出来るのなら、国際親善程度には役立つかもしれませんが、雑学レベルのものが沢山あるよりも社会人レベルに出来る第二言語が一つある方が、ビジネスレベルとしてはよほど重要でしょう。
| ・ | 英語は読めればいいので、英会話や高度な英語は必要ない(きょーちゃんさん) |
| ・ | コミュニケーション全般の道具としての英語(農民さん) |
英語を話せると便利と言えばまず思い浮かぶのが海外旅行ですが、実際問題日本国内でも特に大都市や観光地なら外国人と接する機会は多い筈です。
以前東京で通訳兼接待・案内役を引き受けた事があって、その時は海外から5カ国の人を都内の名所に案内したり、観光コースでは行けないようなローカルな居酒屋に連れて行ったりしたのですが、まずタクシーの運転手や駅員が英語を話せるというケースはそこまで多くはない訳で、そうすると日本語を話せない外国人が日本を旅行するのは、日本語が出来る人が付いていないとかなり不安があります。それでも日本に来る観光客は多い訳で一体どうしてるのかと思います。
ドイツに行った時は大都市や観光地域なら誰に英語で話しかけても通じたので、ドイツ旅行は安心感があり快適でした。それに比べてタイの場合、ハイソな人達は英語がペラペラなのに対し、教育レベルの差が激しくて通じない所では全く通じないので、現地のタイ人の知人が一緒にいないと困る場面も結構ありました。それでもタイの場合もまだ日本よりかはマシではあります。
やはり英語が通じる国は気楽に旅行に行けるというメリットがありますが、中国など全然通じない国の場合は現地に知人がいるとかでないとちょっと不安ですね。
知人が日本に仕事で行く時などもなかなか日本側とコミュニケーションが取れていないので、私が間に入ってメールを訳したりなんて事は何度もやりました。やはり外国人にとって敷居が高いかどうかは国内の観光産業がどれだけ栄えるかにのみならず、ビジネス全般の問題に直結するでしょう。日本はただでさえ物価が高いので観光客は東南アジアに流れていると言うのに。
| ・ | ネイティブ並に話すなら早期教育(baoさん) |
| ・ | 洋書を読むための英語(耕さん) |
| ・ | 英語を学んで自国語との違いが初めてわかることもある(がばちょさん) |
学問や洋書を読むために英語を学ぶなら、特に会話は出来なくて良いという考え方もありかとは思いますが、それは英語を「言語としての英語」と「暗号としての英語」のいずれと認識するかの違いでもあります。
実際昨今のオーストラリアの反日ぶりがあちこちのブログなどで取り上げられていますが、中には英語が読めていない、又はニュアンスが分からないから誤解が生じているケースが起こるという事実も一方ではあります。「ネイティブ並みに話せるか」とはつまり「意味やニュアンスが正確に理解出来ているか」「こちらの意思を正確に伝えられるか」とほぼ同義であります。つまり文章でそれだけのコミュニケーションが出来る人なら当然話せます。
英語教育の現状としてのもう一つの問題点は日本人の主張が世界に出て行かないという結果を招いている点です。世界のブログの第一位の言語は英語でなく日本語であるという調査結果を見た事がありますが、それだけ日本で情報発信がされているにも拘らず、それを読めるのが日本人のみであるために、長年の懸案である南京、慰安婦、東京裁判、支那事変などの歴史問題も、日本側の視点での主張が殆ど海外に届いていないのが現状です。
当ブログでも何度か扱いましたが、特に支那事変や第二次大戦に関しての、例えばウィキペディアの記述も多くが中国側の資料のみを基に書かれているものが大半であり、中国側に都合の悪い項目は削除されたりなどがまかり通っているのが現状です。私自身『帝国電網省』の「歴史再考」の英訳を十数本手がけましたが、歴史・軍事・政治用語を多用したエッセイの英訳は、著者と同等の知識を英語で持っている必要があってかなり大変な思いをしましたが、そこまでのレベルで英文を書ける人が絶対的に不足をしているという現状があります。
ネットやミクシィなど見ていると、日本人同士ではマニアな議論が盛んではあって、随分博学な方が多いのですが、それと同等の知識を英語でも同じレベルで書けるとなると、中学高校の英語の勉強ではおよそ足りないでしょう。それは「英語を勉強する」でしか英語と接していないのであれば仕方がない事です。
「道具としての英語」と言えるレベルは、学校の英語の勉強をすれば通用するほど、そんなに生易しいものではない筈です。試験勉強ではなく「使える英語」です。
| ・ | 日本語を世界語に(耕さん) |
| ・ | その努力もすべき(農民さん) |
| ・ | 人口の論理なら世界語は中国語になってしまう(baoさん) |
英語人口が世界で一番多い訳ではないから英語が世界標準語である必然性がないとの意見がありましたが、問題は「第一言語」ではなく「第二言語」の人口が英語が世界一であるという事実がそこにあります。
第一言語の人口で言えば、第一位は圧倒的に中国語の13億人であり、第二位がアラビア語の4億2000万人、三位がヒンディー語の3億6600人、四位が英語の3億4100万人となっています。(参考:普段話されている言語別人口順位)
そこで日本語人口は第9位の1億2500万人で世界のベスト10には入っていますが、国際貢献度というか、例えば世界の主要企業の国籍という数から言えば、世界における日本語の地位という物はもう少し上位に行くとは思います。
しかし漢字言語を世界に普及させると言うのは表音文字圏に対してはおよそ不可能であります。
しかも漢字言語の中でも日本語は、平仮名・片仮名・漢字という3種類の文字を使い、音読み・訓読みという同じ文字に数通りの読み方があり、敬語やフォーマルな表現が複雑であって、文法的にも世界に近親語が殆ど無いという、ひょっとすると日本語は世界で最も習得が困難な言語であるかもしれません。そんな複雑怪奇な言語をアルファベット26文字の人達が学んで現在の英語のような地位にするというのは夢のまた夢でしょう。
ただし単語レベルでは日本語単語は随分と英語に入り込んではいます。「ツナミ」とか「フトン」とか。
尤も、発音とスペルの一貫性がなく、母音が17種類も存在し、同義異語が大量に存在する英語にしても、世界標準語にするには決して理想的な言語とは言えない事は確かではありますが、男性女性名詞のある仏独伊西などのジェンダー言語よりはまだマシかなという気もします。
メッセンジャーによるリアルタイム座談会をブログにまとめるという企画は面白いとは思うし、若い方達が活発に議論を交わす機会をこうやって持つ事、遠隔地にも拘らずそれが出来る時代というのは素晴らしいとは思います。
今回参加してみて感じたのは、メッセンジャーの会話と言うのは議論をリアルタイムで見ていた人には面白くても、やはり実際の会話に比べて文字を打つ分だけタイムラグが生じたりなどして、纏まり切らない中途半端な内容になったり、全体の流れが流動的で読む側が把握しにくい構成になりがちなので、清廉会の方達もいろいろ試行錯誤中だとは思うのですが、今後より良い場へと発展するように期待しております。
この座談会に参加した清廉会の4人(農民さん、織原さん、耕さん、きょーちゃんさん)の他の外部参加者のうち、『歩く花』の祥平さん、『徒然なるままに、ひぐらし。』のがばちょさん、『ばおーーーんの恐怖』のbaoさんの3人は、うちとも相互リンクしているブログの方達です。
英語関連エントリー:
・内田裕也政見放送 全文聞き取り (2008.3.2)
・ニセ君が代 (2008.2.9)
・小学校の英語教育 (2006.9.28)
・日本の変な英語 (2006.6.1)
本文中で言及したエントリー:
・英語・中国語版Wikipediaにおける大山事件と第二次上海事変の記述 (2007.8.18)
・歴史から消された広安門事件と廊坊事件 (2007.7.11)
関連記事:
・世界で最も多いのは日本語ブログ――Technorati調査 (ITmedia News 2007.4.6) [魚拓]
・41種類の外国語を教える小学校 (Gigazine 2008.3.11)
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