6日のロンドンの聖火リレーは前例がない位に1000人規模の激しい抗議デモの中行われたのはもう世界中で報じられていますが、今回は地元イギリスの新聞のインデペンデント紙の記事を紹介します。
インデペンデント紙は1986年、デイリー・テレグラフを離れた記者3人によって創刊されたイギリスの日刊全国紙で、政治的にどこにも属さないという意味でこの名称のようですが、実際は中道左派のリベラル層をターゲットにしている新聞です。
ここで言及されているのは、ロンドン市民の怒りが中国に対してだけでなく、聖火リレーを受け入れたブラウン首相に対して向けられている事、それから抗議デモに参加したのはチベット問題の他ダルフールやミャンマー問題への抗議、それから法輪功関係者も加わったアンチ中国が勢揃いした形になった事などです。
オリンピックの魂がイギリスにやって来る ジェローム・テイラー インデペンデント 2008年4月7日
「調和の旅」と題された130日間の世界の旅を、必死に演出していた英中両国の当局であるが、この珍劇を伴った大規模な警備の非常線によって、聖火リレーは彼等にとって公衆の面前での大恥のイベントとなった。 聖火ランナーの一挙一動に付いて廻る頑強な警護を突破しようとした者に警官が体当たりをしたりなどして、時には聖火リレーが中断状態となり、昼下がりまでに35人が拘束された。各マイル毎に平均1人以上が逮捕された事になる。* [1マイルは1.6km] 昨日の朝、リレーは比較的順調に始まった。五回の金メダル受賞者のスティーブ・レッドグレーヴさんが第一走者としてウェンブリー・スタジアムからスタートした時は喜びのムードに包まれていた。しかしその後すぐに、2000人の警官と厳重な警備にも拘らず、怒りに満ちた衝突と大混乱のシーンが31マイルのイベントを圧倒した。 レッドグレーブさんから次の聖火ランナーにトーチが渡されて5分も経たないうちに、「自由チベット」と叫んだ女性がオープンデッキバスに乗り込んだ聖火を奪おうとして逮捕された。 その日で最も深刻な事件はラドブローク・グローブ地区で起こった。チベット支持デモ者が警備を突破してテレビタレントのコニー・ハクさんから聖火を奪い取ろうとした事である。 その後ハクさんはその事件を気にも留めておらず抗議者に対しても悪感情はないとし、中国のチベットでの事件があったため、彼女は聖火リレーランナーを引き受ける事は心許なかったとそう話している。「彼にはとても強い信念があったし、この国の誰もが自分達の考え方を持つ権利があります」とハクさんはコメントした。 更にルートに沿って、より多くの人達が抗議のために沿道にいた。10分経ってもう一人の抗議者が消化器で聖火を消そうとして逮捕された。そして、オックスフォード通りで聖火がオープンデッキ・バスで運ばれていた時、「自由チベット、自由な胡佳」と書いたプラカードを持った人権活動家のピ−ター・タッチェル氏が行く手に飛び込んだ。胡佳氏は中国の有名な人権活動家であり、先週木曜日の4月3日に「国家転覆煽動」の罪状で3年の判決を受け投獄されている。 抗議デモ隊の多くがチベット支持活動家だが、その中には法輪功関係者や、スーダンやミャンマー政府をサポートする中国への怒りを持った人々もいて、それらの抗議者を避けるために、大会関係者はルート変更や聖火をバスで運ぶなど3回も予定変更を余儀なくされた。ラグビーのケニー・ローガン選手など聖火ランナー達は、聖火を持って走る代わりに赤いバスの上で赤と銀のトーチを持つ羽目になった。 ロンドンの中国大使館への戦いの勝利の中に、傅瑩駐英中国大使はチャイナタウンの中を走った。抗議活動のためにリレーを辞退するように言われていたという噂があったにも拘らず。人権団体によれば、中国政府がチベットで数百人の殺害や拘束をした時に、中国に都合の良い宣伝に加担したとして、抗議者達は大使のリレーへの参加を非難していた。 昨日の騒がしく混沌とした抗議はセント・ポール、大英博物館、ダウニング街でも起こった。数百人のアンチ中国デモ隊が首相官邸の外で警察と揉み合いになっていたので、ブラウン首相が閉ざされたゲートの中で、オリンピックチャンピオンのデニーズ・ルイス選手の持つトーチを迎える事を余儀なくされた。抗議者達はブラウン首相に、中国が人権問題を改善させない限り、聖火リレーと8月8日の開会式をボイコットするように要求している。「自由チベット」の叫びは首相官邸に反響し、首相は聖火に触れるのを控えた。 しかし聖火を迎えた首相は集まった人々によって嘲笑された。サリー州から来た抗議者のタムシン・ツエリンさんは8年前にチベット人と結婚していて、ダウンニング街の反対側に娘と共に立っていた。「ブラウン首相が私達を無視し聖火を迎えたので非常に失望しました。政府にとっての優先は人権でなくビジネスなのです」と語った。 青と白のトラックスーツを着て無線イヤホンを付けた中国人の「聖火防衛隊」は、首相官邸を離れウェストミンスター橋に向かったが、「恥の聖火」や「チベットに聖火は要らない」のスローガンの書かれたポスターやチベット国旗を持った500人以上のデモ隊からブーイングを浴びせられた。 グリニッジの最終到着地に聖火が近付いた頃には抗議はある程度収まったが、警察は聖火ランナーの周りの厳重な警備を続けた。聖火リレーの一番長い中断はカナリー・ワーフから、ケリー・ホームズが聖火台に火をつけたO2アリーナまでの船の運搬であった。 昨日の抗議活動は、今夜のパリと今週後半のサンフランシスコへの聖火が行く多くの場所での抗議の始まりに過ぎないと抗議者達は警告している。 ビルマ・キャンペーンUKのマーク・ファーメナー代表は「これは中国へのPRクーデターであり、それは彼等の大失敗に繋がるものです。中国はオリンピックの背後に隠れる事が出来ない事を理解し、人権問題に取り組む必要があります」と述べた。 聖火を追ってサンフランシスコに行く予定の自由チベット学生組織のラドン・テトン代表は「明らかに、この“調和の旅”は中国人が欲しているほど調和したものではありません。今日中国は多くの人々の前に敗北しました。聖火が旅を続ければ続けるほど抗議は大きくなります」と語った。 聖火の次の経由地はパリで、それは今日の抗議、怒り、水浸しの通りとお笑いコメディを後に残す事となった。それはつまり、とても英国らしい日であった。 |
| 訳:Red Fox |
以下、同記事付録のポップアップ写真。
.independent { background-color:#999966; }
![]()
|
何というかさすが英国紙、何となく面白おかしく書いています。インデペンデンス紙は中道左派のリベラルであれば、まず政府の批判をして、それから人権問題で中国を批判する側になるとすれば、この記事に関しては完全に中国批判一色のトーンであるのは納得出来ます。
ただここまでイギリスやフランスでの抗議活動が激しかったと言う事は、二つの大戦と冷戦を経験した西欧だからこそ、共産主義や一党独裁、それから他民族支配の帝国主義に対する嫌悪感が根強いのかという印象はあります。
今回は中国が精鋭の警備隊を出して来て聖火ランナーの周りをガッチリ固めていたのは読売新聞が報じていましたが、それは写真を見ても明らかです。ロンドンのタブロイド紙の『ザ・サン』にはこのものものしい警備の様子が面白おかしく皮肉をたっぷり込めて書かれています。
この時は中国から送り込まれた警備隊だけでなく、ヨーロッパ中から中国系住民がロンドンに集結したとの事で、でもどうもYouTubeなどのコメントに見られる彼等の声を聞いていると「中国をバッシングするためにチベットのニュースは西側メディアがでっち上げた」とか「チベット分離は中国解体のためのCIAの陰謀である」とか「チベットはもともと中国の一部でありその方がチベット人のために良いのだ」など、中国国内のみならず国外在住者でもそういう民族意識で団結してしまうのが、やはり「中華」というものは人権よりも民族意識の方が優先される民族性と言うか、西側の抗議者は「中国人の人権問題」の事も言っているにも拘らず、どうも被害者意識ばかり強くてそれが彼等に通じていない印象はあります。
あの「中華」はメンツが一番重要な面は確かにあるので、パリでは中断騒ぎになったようだし、恐らく想像以上に中国には堪え難い屈辱に受け取られてはいるのではないかとは思います。その辺りが共産党政府は嫌いでも民族のメンツを物凄く気にする中国人が団結してしまう所以でもあります。
先日はオーストラリアの日本人殺害をネタにしたお笑い番組でも、あのレベルですらも日本ではかなり不快に受け取られていた訳ですが、今回中国人にとっての屈辱感はあんなレベルではないだろう事は想像に難くありません。中国のメディアも今回は抗議活動を報道する事で中国世論を煽動するという方針のようです。ただ中国人は“建前的”には「全て相手が悪い」と言って自己正当をするそういう人達が多い、そういう文化な面があるので、こういう事があれば余計凝り固まって団結するだけでしょう。
昨年からアメリカなどで華僑グループと深く関わりのある議員などが中心になって慰安婦に関する非難決議案を通したり、南京の映画制作にも華僑グループの影が見えたりなど、ここら辺の華僑勢力が組織的に日本叩きを繰り広げていて、昨今の捕鯨問題にも中国の影が見え隠れしていた訳ですが、実際蓋を開けてみたら中国の嫌われ方のスケールは全くレベルが違っていたという、それも現在の問題で、そういうお間抜けな結果になった形です。彼等も日本バッシングよりもまず自分達自身の心配をした方がいいでしょう。
特に今回のチベット問題で中国は世界の人権団体をことごとく敵に廻し、そこに法輪功やダルフール問題やミャンマー問題、それから世界の自由チベットネットワークが手を組んでしまった訳で、オリンピック前に中国にとってはかなりまずい状況でしょう。
次のサンフランシスコでは自由チベット学生組織が既にゴールデンゲートブリッジに「Free Tibet」の垂れ幕を下げる行動を起こしているようで、それもカリフォルニアはアメリカの人権運動のメッカで、更に中国系人口も多くカオスな事になりそうですが、何か面白い展開を期待したい所です。本当に中国は聖火リレーを最後まで出来るのか。
昨日コメントでフェンリルさんにロンドンのビデオを幾つか紹介して頂いたので、折角なのでエントリの最後に埋め込みます。
五輪聖火リレー ラドブルック・グローブ駅での衝突Olympic torch relay flame attack ladbroke grove london 2008 (1'58")
Posted by niesfisch (2008.4.6)
ロンドン:ダウンニング街でのオリンピック抗議デモ
London- Olympic Protest as torch arrives at Downing Street (1'48")
Posted by luisdonatella (2008.4.6)
ノッティグヒルでの五輪聖火抗議
Olympic Torch Protest Notting Hill (1'03")
Posted by dude7559 (2008.4.6)
五輪聖火リレー抗議 自由チベット
Olmpic Torch Protest London Free Tibet (0'17")
Posted by niesfisch (2008.4.6)
イギリスもここまでやってくれるともうあっぱれですが、この英国のこういう気質が動物愛護の捕鯨などに向かうと日本バッシングになる訳で、余り手放しで笑えない面は一方ではあります。
関連記事:
中国が“聖火防衛隊”をロンドンに出動、パリにも同行へ (読売新聞 2008年4月7日11時40分)
|
【ロンドン=本間圭一】ロンドンで6日始まった北京五輪の聖火リレーは同日夕(日本時間7日未明)、約80人が約50キロをつないで終了した。 中国のチベット政策に反発する人権活動家らの妨害行為が続出したが、中国側は全国から集めた精鋭の警備員を投入し、聖火防衛に躍起となった。 当地の中国メディアなどによると、北京五輪組織委員会は聖火ランナーを守るため、中国全土から国外担当の警備員約30人を選抜。警備員は、1日に40〜50キロ走れるほど高い身体能力を持ち、24時間体制で聖火を守ることが任務という。 青と白の帽子とトレーニングウエア姿の中国人警備員たちはロンドンでは約10人が投入され、ランナーを妨害しようとした活動家らを排除。英国人タレントのコニー・ハクさんが、沿道から飛び出した男にトーチを奪われそうになった際も、いち早く撃退した。聖火リレーの舞台は7日、パリに移るが警備員も同行する見通しだ。 また、沿道では中国人が五輪支持のデモを展開。聖火が通った大英博物館前で、在英チベット団体のデモ隊約1000人が「中国は恥を知れ」などと怒声を上げると、中国人デモ隊約300人は負けじと、「北京五輪」と繰り返した。中部マンチェスターから駆けつけた会社員、郭爾瀚氏(30)は「英国人は反中国の偏向報道に影響されている。沿道で声を張り上げ聖火を守りたい」と語った。 英国内の中国人は30万人前後とされる。関係者によると、西欧諸国の聖火リレーでは妨害が予想されたため、学生組織などの呼びかけで中国人がロンドンに結集。傅瑩駐英中国大使が、聖火リレーでロンドンの中華街を走った際にも、周囲に陣取り、抗議デモをほとんど寄せ付けなかった。 (2008年4月7日11時40分 読売新聞) |
ご訪問有り難うございました。
日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。
|
- 『With2人気ブログランキング』は、ランキングサイトからのアクセスが多いので参加しておりますが、これはバナーアイコンをクリックしてこのブログ上から直接ランキングサイトにアクセスする事でカウントされる仕組みになっており、1つのIPアドレスは1日に1カウントまでです。クリックを宜しくお願い致します。m(_ _)m
- 『ブログ拍手』はFC2独自のデフォルト機能で、これはランキングではありませんが、各エントリーの反響に関する参考にさせて頂いております。
当ブログからの引用
- 当ブログはリンクフリーとするので、私の文章及び訳の引用にその都度許可は必要とはしませんが、引用元の明示を必ずお願いします。また当ブログ上の引用記事や写真等は著作権の関係上可能な限り出典元を明記しておりますが、それらの二次転載によるトラブルに関しては責任を負いかねます。
リンク先
- 引用記事や写真には出典元提示のために元サイトのリンクを埋めてありますが、特にウィンドウズユーザーの方に関しては中国サイトなどウィルスに関する安全の保証は出来ないので、海外サイトのうち大手メディアを除く個人サイトなどはクッションURLを埋め込む事で対応しておりますが、そこから先は十分注意して個人の責任でお願い致します。
コメント
- 基本的マナーの欠落したコメントや返事の必然性のないコメントに対してはレスはしません。リンクやメアドのないステハン投稿者(こちらから追跡出来ない相手)による中傷、荒らし目的などのコメントは予告なしに削除およびアク禁に、悪質なものに関してはIP公開などの手段を取る事もあります。なお、レスがついたコメントを削除または内容の差し替えを行う行為はルール違反なので以後閲覧禁止とします。
トラックバック
- コメント欄やTBを解放していないブログ、キーワード系や宣伝・営利目的ブログ、および当ブログとは著しく無関係の内容のTBは受け付けておりません。
























