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『20/20』の報道を受け、議員達が人体展への徹底調査を議会に要求

 2月15日にABCニュースの『20/20』が、プレミア・エキシビション社のプラスティネーション人体展『BODIES展』(BODIES... The Exhibition) に中国の死刑囚が用いられている疑惑をスクープしたその5日後、全米各州の議員達がそれぞれの州で人体の商業展示と売買行為を規制する法案を検討中であるとのニュースが報じられている。

 これらの動きは2月15日の『20/20』の放送のずっと以前から既に始まっており、例えばワシントン州ではその前年の2007年1月17日に故人の許可のない人体の商業展示を禁止する法案が6人の議員によって提出[>>1]、同年3月にはフロリダ州では州解剖学委員会の許可なしにプラスティネーション持ち込み持ち出しが禁止される法案SB2554がビクター・クリスト上院議員が提出[>>27]、ニューヨーク州では2007年2月27日にジム・アレシ上院議員が、合法的なプロセスで入手されていない人体の展示を禁じる法案S7000Aを提出している。[>>2]

 カリフォルニア州では華僑のフィオナ・マ議員が2008年1月17日に、州内で商業展示される人体に詳細情報と完全なインフォームドコンセントの証明を義務化するAB-1519を提出し、2007年1月24日に下院で可決、8月15日に上院で可決されている。

 そして、ABC『20/20』の放送を受けて、米国議会下院のクリストファー・スミス議員が下院外交委員会に公聴会を要請、そして米国司法長官に調査の要請を計画中であると表明している。

 この記事はリアルタイムの報道なので、これらのうちどれがその後進展があったかというのが分らないものもあるが、4月2日に米国下院でプラスティネーション人体の輸入禁止の法案HR5677がミズーリ州のトッド・エイキン議員によって提出され[>>3]、その26人の法案共同支持者にスミス議員は名を連ねている[>>4]ため、スミス議員のアクションがこういう形で実ったという事になる。

写真:2006年11月から2007年3月までアムステルダムで開催された『BODIES展』の会場前に、22人の身元不明の中国人を象徴する22の十字架が抗議団体によって置かれた。 (Dignity in Boston) 


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 ABCニュースでの既出情報は紫文字で表示。


『20/20』の報道を受け、議員達が人体展への徹底調査を議会に要求
ニュージャージー州の議員が米国司法長官に調査を要請
アンナ・シェクター
ABCニュース 2008年2月20日


『20/20』の報道を受けて議員らは、米国を縦断した展覧会に展示される人体の闇市場に対する厳密調査を議会に要請している。
(ABC News) more photos
 『20/20』の報道を受けて議員らは、米国を縦断した展覧会に展示される人体の闇市場に対する厳密な調査を議会に要請している。

 クリストファー・スミス議員(ニュージャージー州)は、プレミア・エキシビション社の展示における、「プラスティネーション」という処理によってシリコンに浸けられプラスチック化した中国からの「引取人のない」死体に言及し、「処刑や拷問の痕跡が認められる」と述べた。

 長年の間中国の人権問題に取り組んで来たスミス議員は、「注意を払うべき問題がある。特に囚人の処刑と人命尊重の欠落した全体主義の独裁体制から来る問題である」と語った。

 スミス議員は下院外交委員会に対し議会公聴会を正式に要請するとし、「早急に (展示会の) 一時停止処置が必要であり、これは何かが非常に間違っている」と述べた。彼は米国司法長官に対し、展示会に出されている人体がどのように入手されたかの調査を促す書簡を作成中との事。


 
 ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ検事総長は既に徹底調査を始めており、プレミア・エキシビション社側は調査に完全協力をすると表明している。プレミア社のブライアン・ウェインガー法律顧問は「バイアスのない方法において事実が事実を明らかにする事を可能にする徹底的な調査を楽しみにしている」との声明を発表した。

 プレミア社は展示に死刑囚の死体を用いてはいないと主張、教育と研究目的のための引取人のない死体を使う事は米国と中国の両国で普通の事であるとしている。

 プレミア・エキシビション社のアニー・ゲラー代表はABCニュースに対し、中国人の提供業者から入手した死体の一部が死刑囚のものである可能性があると聞いて仰天したと語った。

 ゲラー代表は、彼の医療スタッフがそのような証拠を見た事はなく、その取引業者が「大連医科大学を通過した人体はすべて合法的で引取人のないもの」と保証したと主張している。

 スミス氏は、展示会の死体には第三者の専門家チームによる身元の確認を義務づける法案を作成中だという。


 今月初めにはカリフォルニア州下院で、展示に用いられる人体のそれぞれの身元の説明を展示主催者に義務づけるという同様の法案が通過し、3月には上院で審議される。

 法案を提出したフィオナ・マ (馬世雲) 議員 (サンフランシスコ) は、『20/20』による報道以来メールや電話が殺到していると語った。

 マ議員は「人々はこのような事が起こっている事に対して怒りを持っているが、責任逃れの返答しかない」と述べ、金曜日以来様々なウェブサイトにこの問題をポストした大人数のブロガーの動向を彼女のスタッフがチェックしていると付け加えた。


 議員達が人体展の規制の準備に取りかかっているが、多くの博物館センターはプレミア・エキシビション社とその人体ショー『BODIES展』の側に付いている。

 『20/20』の報道の後、カーネギー科学センターは、ピッツバーグに『BODIES展』を誘致したその役割を誇り、人体展に関して「強力な教育的経験である事に疑う余地はない」との声明を発表している。

 カーネギー科学センターの博物館は、「20/20の報道において信用に価する新たな情報は何もない」とし、「視聴率の調査期間に視聴者を誘導するためにセンセーショナルに演出された」報道であると付け加えた。


 カーネギー科学センターが『BODIES展』の展示を決めた時に辞職した元職員は、『20/20』の報道以降のここ数日の間に圧倒的な支持を得たと語った。

 カーネギー科学センターの元科学教育コーディネーターのエレイン・キャッツ氏は、博物館が人体展を開催する事をモラル的見地から止めさせるように試みたと語った。

 彼女は2007年6月に辞職し、中国から来た引取人のない人体を展示に用いる事の倫理的問題に対する一般からの疑問に応えるためのオンラインの『バーチャル・ピケ隊員』を始めた。

 ABCニュースの報道以来、彼女のウェブサイト『人体展へのバーチャル抗議サイト』(Anti-BODIES Virtual Protest Site) のアクセス数は爆発的に増え、現在は200人を越す『BODIES展』ショーのバーチャルピケ隊員がいると言う。

[訳=岩谷] (原文:英語)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。
Schecter, Anna. "Lawmakers Call for Congress to Probe Bodies Shows in Wake of '20/20' Report". ABC News, February 20, 2008. [魚拓 1 2 3]

 このABCの『20/20』が報じられたのは、カーネギー科学センターで『BODIES展』が開催されていた真っ最中であり、その1年半前からそれが大連の隋教授からリースされた同意のない死体だと分っていた事であるにもかかわらず、『20/20』はセンセーショナルで信用に価する情報はないと全否定を行っている訳で、ニューヨークタイムズの一つの記事と、ゴールデンタイムのテレビ報道特集ではやはり与えたインパクトの大きさの違いを物語っている。


ピッツバーグのカーネギー科学センターで開かれた『BODIES展』。photo by MilwVon added February 12, 2008 (Travelocity)


カーネギー科学センター元科学コーディネーターの主張

 2007年10月から2008年5月までピッツバーグのカーネギー科学センターで『BODIES展』が開催されているが、科学教育コーディネーターとして科学センターに11年務めたエレン・キャッツ氏は、宗教的な見地からの批判と、人体は身元不明者で同意がないとプレミア社が認めている事に対し、法輪功学習者からの臓器窃取問題など中国における人体の出所への疑問を理由に、『BODIES展』開催の決定に対する抗議として2007年6月14日に辞職している。[>>5][>>6]


エレン・キャッツ氏 (PITTSBURGH PIST-GAZETTE)
 その理由として挙げられているのが前年の2006年8月のニューヨークタイムズの記事で、プレミア社のゲラー代表がニューヨークタイムズのデビッド・バルボザ記者のインタビューで、人体標本は中国の公安局から来た身元不明の引き取り人のない死体であり、その誰もプラスティネーション処理や展示に対する同意をしていないもので、プレミア社は死体入手には直接関わってなく、自社チェックでそれらが死刑囚でないと確認したと表明している事、更に大連医科大側がニューヨークタイムズに対し人体供給者が同大学から人体を入手し海外の展示に送った記録がないと表明し、その供給者である隋鴻錦教授がインタビューを拒否した事が報道されており[>>7]ハーゲンス氏の技術を盗んだ人物から供給されている身元不明死体という、その辺りのインパクトから当時既にプレミア社の人体展が出所の怪しい死体展であると悪評が立っていたという背景が既にあったという事である。

 またキャッツ氏が挙げているのが、中国の衛生局が移植用臓器の殆どが死刑囚のものである事を認め、その処刑方法をその用途のために変更した事、そして法輪功投獄者が免疫の相性のテストを受け必要な時に殺害され臓器を取られる人間生簀状態というデビッド・キルガー氏とデビッド・マタス氏の調査結果に言及している。[>>8]



日曜フォーラム:搾取の展示会
カーネギー科学センターが人体展示を決定した後に辞職をした理由に関して
エレン・キャッツ
ピッツバーグ・ポスト・ガゼット 2007年6月24日

 ピッツバーグに人体展がやって来る。『BODIES展』は15の人体と200点以上の臓器や人体標本パーツを展示している。これらは死後に工場で水分をポリマーに入れ替える「プラスティンション処理」をされた人々である。良く見積もって彼等は引き取り人のない身元不明人であり、最悪のケースは彼等が人権侵害の犠牲者である事である。いずれにしても彼等がこのような方法で使用される事に対して決して同意をしたものではないのである。(中略)

エレン・キャッツ氏はカーネギー科学センターで11年近く教育コーディネーターを勤めていたが、博物館が『BODIES展』の開催を決定したため6月14日に辞職した。
(ehcatz@aol.com)

 アトランタのプレミア・エキシビション社が売り出している『BODIES展』は (ハーゲンス氏の)『ボディワールド』より科学的志向的アプローチではあるが、それはハーゲンス氏すらも避けていた一線を越している。『ボディワールド』の標本は献体であるが、『BODIES展』に関してプレミア社は中国の大連医科大からのレンタルと説明し、それらは公安局から入手した引き取り人のない身元不明死体である。

 死後プラスティネーション処理や展示されている人々のだれも同意をしていない事をプレミア社は認めている。倫理的問題が提起される中、『BODIES』の死体の出所が疑わしいものであるという更に大きな問題が浮上した。

 プレミア社は、中国に発生しているプラスティネーション工場と直接ビジネスは行っていない。昨年8月に、ニューヨークタイムズのデビッド・バーボザ記者はプレミア社の創設者である代表にインタビューを行ったが、同社の代表は中国の人体供給者の主張を信頼するとしながら、「全てのプロセスを確認した」と述べている。バーボザ記者が大連医科大の関係者に確認したところ、プレミア社への供給者が同大学から人体を入手した記録がないという事が分った。


 中国政府は市民を逮捕して簡単に処刑を行う。政治や経済犯などを含む60以上の罪状で死刑となる。過去数年間で世界の政府による死刑執行数の80%が中国で行われている。

 臓器移植もまた中国では巨大産業であり、世界の至る所から臓器購入と手術のために人々がやって来る。しかし中国には臓器提供システムがなく、数万件に及ぶ臓器の出所は不明である。

 昨年11月14日の国際会議では、中国衛生省のトップが中国では不法臓器売買が盛んである事を公式に認めた。彼はまた中国での臓器移植の大半が死刑囚から取られたものと述べた。このプロセスを容易にするために中国政府は処刑方法を変えた。囚人は病院に向かう車両「移動死刑車」の中で薬物注射で処刑され、そこで彼等の臓器が窃取される。

 昨年、中国では需要を満たすために法輪功囚人から生きたまま臓器を摘出するという恐ろしい噂が流れた。中国で禁止されている法輪功とは肉体的・精神的な健康を促進するための瞑想を実践するものである。

 カナダ議会元議員のデビッド・キルガー氏と人権弁護士のデビッド・マタス氏はこの件に関して調査を行い、法輪功囚人はドナーマッチ検査を定期的に受け、生きたまま臓器を摘出され殺害されているとの情報を中国の医師から得ており、法輪功の臓器を容易く用いるための嘘を暴いている。

 それらの証拠により2006年に「中国政府は... 過去5年以上にわたり膨大な数の法輪功囚人を死刑にし、その大半が生命維持に必要な臓器のために医学の専門家によって殺害された」と結論付けた。

 『BODIES展』が展示する人体や臓器の全てが「引き取り人がなく身元不明」とは、それが一体何を意味するのか?

 プレミア社は「それら人体の全てが、殺人犠牲者、囚人、精神病患者や堕胎胎児ではないと (中国) 政府が証明している」と主張しているが、中国政府の証明自体が疑わしいのは言うまでもない。

 プレミア社は過去5年以上にわあたり、展示されている人体や器官に2500万ドルを投資しており、それは移植のために臓器を売るのと同様に、若しくはそれ以上に利益を生むものである。これは『BODIES』の展示自体が臓器取引の闇市場を潤している事になっているのではないか? 展示されている人体や臓器に死刑囚のものがあるのではないのか? これは間違いない。

 これがそうであるなら、なぜ本物の死体を使用するのか? プレミア社は『BODIES』が「健康なライフスタイルの選択」の重要性を多くの人々に教えると主張している。本物の人体の複雑な細部を見る事によって観衆は自分自身の体により良い認識を持ち、より運動をし、より健康な食事を取り、喫煙をやめる事になる。

 この目的を達成するには他に幾らでも方法はある。それなら本物の死体を展示する目的は何かと言えば、それは集客力なのである。

 それなら、この展示会が多くの人々に教える事は何なのであるか?


 それは、人が死ねば、その人物の肉体を同意もなしにプラスティネーション処理をし、皮膚を剥がし、破壊をし、スポーツ用具を持たせてポーズを取らせ、人々に晒す事に何の問題もないと教える事である (それが身元が伏せられ外国人であればなおさら良い)。

 それは科学、教育、芸術の名の下に、利益を得るために死者から搾取する事に何の問題もなく、その「標本」の主が世界に体の内部を晒すのではなく、遺体が尊厳を持って扱われる事を望んでいようが、そんな事は問題ではないと教える事である。

 それは他人を非人間扱いするのが非常に簡単である事を教える事である。多くの観客は見始めて数分で展示内容に夢中になり、彼等が本物の人間を見ている事を忘れてしまうと言う。しかし私達が死者を非人間扱いするなら、生きた者を非人間扱いする事にも簡単に繋がってしまうのである。

 原因が何であろうが、全ての死は人生を送って来た人間のものであり、それは尊敬を持って扱われるものである。もし私達自身が尊重をされたいのなら、全ての人々のヒューマニティ、そして死後の肉体への思い出への尊敬を実践しなければならない。

 人体展がピッツバーグにやって来る。ピッツバーグがそれを歓迎する事は世界に対して何のメッセージを発する事になるのか。

発表:2007年6月22日 18:58

[訳=岩谷] (原文:英語)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。
Catz, Elaine. "Sunday Forum: Exhibition of exploitation". post-gazette.com, June 24, 2007. [魚拓]



NTDテレビの論説委員によるエッセイ


李天笑氏 (大紀元時報) [a]
 中国人の視点からのエッセイとして、前回の呉弘達氏のコラムに続き、今回は上記のABCニュースの記事の前日の2008年2月19日に発表された、NTDテレビ論説委員の李天笑氏の記事を紹介する。NTDTV (新唐人電視台) はニューヨークに本部を置く反共系放送局で、英語、中国語、チベット語など多言語で報道を行っている。

 このエッセイは『20/20』の放送の4日後という事もあり、基本的にはABCで報道された事を中心に論評しそれに補足を加えるという呉氏のエッセイと同じ性格のものだが、特に人権問題に重点を置いて、人権を重視する米国は、中国の人権蹂躙で成り立っている人体展を禁止し、そこに利益をもたらさないようにする義務があるという主旨の事を述べている。

 ここでもやはり、ABCニュースが番組作りの都合からか言及しなかった事が何点か言及されており (ニューヨークタイムズが既に言及している事も含む)、隋鴻錦氏がプラスティネーションの創始者のハーゲンス氏の元助手であった点、同氏がプレミア社の『BODIES展』を事実上支配し、収益の85%を得ている点、プレミア社の死体標本には何ら証明書類が存在しない点に関して触れられている。

 この記事は『正義中国国際連盟』と『大紀元中国語版』に掲載されている。



米国はなぜ「中国人人体標本展」を禁止しなければならないか
李 天笑
正義中国国際連盟/中国語版大紀元時報 2008年2月19日



プラスチック化死体はまともな神経の人なら見るに耐えないものである。写真は左右に切断された若い男性。その後ろにはもう一体の男性の死体がある。
(Getty Images)
 ニューヨーク州検察総長は2月14日に召喚状を出し、米国のプレミア・エキシビション社が開催している『BODIES展』に対する調査を行っている。1月にカリフォルニア州下院は同州における『人体展』開催を禁止する法案を通過させている。ABC放送は2月15日夜の『20/20』の特別番組で、中国がプラスティネーション人体標本に死刑囚を利用している疑いに関する実況調査を報道した。FOXやAP通信などのメディアもこのニュースを取り上げている。

 この数年来、中国から来た人体標本展示の広告を米国の各都市で見かける。ドイツ人のハーゲンス氏とその弟子の大連医科大の隋鴻錦氏が創始したプラスティネーション人体標本展が、相前後して米国と中国の数十の都市を巡回して金儲けをしている。展示されている人体標本は全て中国から来たものである。[脚註18に戻る][脚註23に戻る]

 『中国人人体標本展』は低俗層の好奇心を満足させ、米国の主催者に大儲けをさせている。隋鴻錦氏と協力しているのは米国のプレミア・エキシビション社で、既に米国やその他の国での展示会で3500万枚の入場券を売り上げている。チケットは推定平均20ドルで、収益は総額7億ドルに達し、その利潤の85%が中国側に帰する。 [脚註22に戻る]


 人体標本展の成功は中国人のイメージの低下を代償とするものである。中国人の老若男女の皮膚を剥がれた標本が、様々な奇異なポーズで、筋肉、臓器や血管が露出し、身体と脳が木の幹のように切断されており、これは芸術的美観の値打ちは皆無である。死体標本は一般民衆の前で吐き気と恐怖を起こさせるだけで、全くその本質となるべき「教育」効果を果たす事など出来ない。医大生はプラスティネーション人体標本によって解剖実践知識を得る事など出来ない。

 米国はなぜ『中国人人体標本展』を禁止しなければならないのか? 米国では当然この中国の自虐行為を禁止する特別立法は出来ないのである。米国では法律上は展示が“芸術”か“科学普及”かを考慮はしない。甚だしきに至っては米国では展示が商業的営利目的である事も問題ではない。米国で問題になるのは人権で、それは世界の普遍的人権であり、問題は人体標本処理が人権侵犯であるかどうかである。

 よって、米国は人権重視に対して十分に体現しており、人権を人種や国家を越えた概念とみなしている。人体や臓器の不法取引の犯罪性質や権利を侵害された者が中国国籍であるどうかは問題ではない。人間に対しては、死後の身体の処置権は人権の延長であり、これが踏みにじられてはならない。『権利の章典』、つまり米国憲法の修正第1~10条は最も基本的な人権を保証している。そのうち修正第五条では「何人も同一犯罪について、重ねて生命身体の危険に臨ましめられることはない」[>>9]と規定している。

 また米国は、本人の同意の有無の如何を問わず、被保護者に対する身体の切断、医学的または科学的実験及び移植のための組織又は器官の切除を行う事[>>10]を禁じる『ジュネーブ条約』1977年追加議定書の規約の規定を厳守している。1984年の『国家臓器移植法』(National Organ Transplant Act) および1987年の『統一死体提供法』 (Uniform Anatomical Gift Act) で、人体器官の売買の禁止を更に明文化している。これらの法律によって原則、『中国人人体標本展』には少なくとも4つの違法嫌疑が存在する。


 第一に、死体の出所が不明確である。死体標本には間接的な英文の説明があるのみで、本人又は家族からの寄贈の証明、或いは死者の身分を証明する書類が存在しない。中国が毎年大量の処刑を行っている事実を考慮すれば、人体標本の出所の合法性に対する懐疑が生じるのである。

 第二に、米国側は中国側の説明が不明確であり責任のなすり付けを行っていると主張。死体は大連医科大学所属の生物プラスティネーション研究室から来ていると米国側は主張、しかし大連医大の学長は大学がこれまでいかなる企業の公開展示用に死体を提供したとの疑いを断固として否定。ABCニュースの記者は大連で実地調査を行い、大連医大から数十キロ離れた郊外にある一つの荒廃した倉庫で作業を行ういわゆる「大連医科大生物プラスティネーション研究室」を訪ねた。米国税関に発送される人体標本は書類上は「プラスチック模型」として申告されていた。

 第三に、中国が死刑囚の死体を使用している事は疑う余地のない事実である。大連医科大の隋鴻錦氏の下で働いていた元職員は、処理した死体のうち少なくとも1/3が死刑囚のものだと証言している。人体プラスティネーション技術の発明者であるハーゲンス氏本人が死刑囚の死体を受け取った事や、展示会上で弾痕のある標本を発見して回収した事があると認めている。かつてハーゲンス氏の下で働いていた元従業員は、各病院をまわって「引取人のない」死体を購入していた事を証言し、手縄を解かれていない死刑囚の死体を処理する医療関係員の何枚もの写真を提供した。

 最後に、死後身体を提供する事は中国伝統の習俗とは異なる。人体器官の展覧を禁ずる法案を提出したカリフォルニア州の華僑議員の馬世雲氏は、中国では臓器や遺体を献体する事は滅多になく、中国人は完全な遺体を望むために完全な形で埋葬されるのが普通であるとし、「皮膚を剥がれて臓器を露出し人々に鑑賞されるような展示に自分の身内を提供したい遺族がどこにいるのか、自分自身が一人の華僑としてそんな事はにわかに信じがたい」と語った。


 それでは、自らの意思で献体した出所の確実な死体なら人権問題は存在しないのか? それは違う。完全に商業的な展示会なら、医学への貢献や他人の生命を救うための献体の意思に完全に背く事になる。同時に、(皮膚を剥ぐなどして) 人体の個性を取り去ってプラスティネーション処理する事は、“人間性”を“物”にする行為であり、豚か犬と何ら変わらない産業処理である。それは死者に対する最大の冒涜なだけでなく、身内に対する遺族の弔いと追憶に対する最大の愚弄である。

 急成長した「中国の死体ビジネス」と奇怪な「中国人人体標本展」のような物がなぜ横行しているのか。重要な事はその関係者が中国政府の各部門から通行証を取得している事であり、甚だしきに至っては協力を得ている事である。中共にも表向きには死刑囚の臓器問題の規範となる法律があるが、事実上は中国は2006年以来世界第二位の臓器移植大国である。中国衛生部長は絶大多数の臓器が死刑囚のものであると認めている。中国では毎年数千人を死刑に処し、大量の法輪功学習者が失踪している。

 北京オリンピックが近づくにつれ、中国の人権問題は日に日に人々の関心を得ている。ハリウッドのスピルバーグ監督やオーストリアの芸術顧問の辞退は中国の人権問題とは無関係で、中国はスーダンを気にする必要はないと言う人もいるが、今回の米国の議会、司法やメディアによる中国人体標本展の死体の出所に関する調査は、中国の深刻な人権犯罪状況を表しているのではないか?

[訳=岩谷] (原文:中国語)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。



全体の構図の整理

 人体展には複数の団体と展示会があっていろいろややこしいのでここまでの経緯をここで整理してみる。

  1. 1970年代にプラスティネーションを発明したグンター・フォン・ハーゲンス氏の「プラスティネーション協会」が開催している人体展は『ボディワールド』で、ドイツとポーランドの国境地域に工場を持ち、主に欧米人の死体を用いている。最初の展示は1995年9月14日~10月19日に東京で『人体の不思議展』(初代) の名称で開かれ[>>11]、現在5種類の展示会を世界各地で行っている。このシリーズの最初のエントリーで紹介したABCニュースの2月14日の記事で写真が紹介されているのはこの『ボディワールド』の方。

    ハーゲンス氏は契約トラブルから1998年に日本から撤退。中国からの死体を展示している2002年以降の日本の『人体の不思議展』はハーゲンス氏とは無関係であり、 プラスティネーション協会曰く「バッタ機関」によるもの[>>12]

  2. 問題のプレミア・エキシビション社の人体展は『BODIES展』 (BODIES... The Exhibition) (2005~)、『人体の暴露展』(Bodies Revealed) (2004~)、『Our Body~内部の宇宙』 (2007~) の3種類。プレミア社は中国の大連医科大学のプラスティネーション研究室から人体を入手していると公表[>>13]

  3. 中国側からプレミア・エキシビション社への人体輸送の仲介を行っていたのは、ミシガン州にあるコーコラン・ラボラトリー社という、人体をオンライン販売している米国企業[>>14]。人体輸入に際して米国の法律をくぐり抜けるためプラスティネーション人体を「プラスチック模型」として申告していた[>>15]

  4. 大連医科大学の学長は米国での展示会への人体提供を否定。しかしABCニュースの調査によれば、大連医科大学から20km離れた「大連医科大プラスティネーション研究所」という民間企業がプレミア社へ人体を提供していた[>>16]

  5. その企業は大連医科大教授の隋鴻錦氏によって運営され、同氏によれば、医科大学は当初は70%の業務を受け持ち、悪評判が立ったために撤退したとの事[>>17]

  6. 隋鴻錦氏は元々はハーゲンス氏の助手[>>18]、現在は中国のプラスティネーション技術の権威的人物[>>19]隋氏は米国でプレミア・エキシビション社の人体展を取り仕切り[>>20]、全ての人体模型の管理権を持ち[>>21]、人体展の収益の85%が隋氏側に渡っている[>>22]。また隋氏は中国国内でも独自に展示会を行っている[>>23]。隋氏は現在ハーゲンス氏と特許を巡って係争中。[>>24]

  7. 射殺後間もないと見られる手縄の解かれていない死刑囚が取引されている死体取引所の写真をABCニュースに提供したのは「大連医科大プラスティネーション研究所」(大連鴻峰生物化技社) で隋鴻錦氏の元助手を勤めていた人物[>>25]。隋鴻錦氏の下で死体収集の仕事をしていたその人物によれば、取引死体のおよそ1/3が死刑囚のもので、その一部が米国での展示用にプラスチック処理されるために大連の工場に送られたとの事[>>26]


 米国での展示会のイニシアティブを握っているのは大連側で、人体に関する故人の同意の有無や死因などの書類を大連側が一切提供していない事、それから発明者のハーゲンス氏の市場を乗っ取る形での中国人主導のバッタ屋人体展が国際的に跋扈している構図が見えて来る。


次回に続く

初稿:2008年8月20日、「カーネギー科学センター元科学コーディネーターの主張」追加:2009年8月12日、エレン・キャッツ氏の記事の訳追加:2009年9月20日






関連資料:

ワシントン州下院法案 HB1253 (2007年1月15日)
H-0328.1

下院法案1253
ワシントン州第60回州議会2007年通常審議

ディッカーソン、シュアルバーク、キャンベル、サントス、ケニー、ミュラー議員による法案

2007年1月15日、健康管理委員会において初審議。



 人間の死体の商業展示に関する法令:州法68.50に新セクションを追加。

ワシントン州議会によって制定:

新セクション. Sec. 1. 州法68.50に新セクションを追加;および刑罰の制定。

(1) (a) 故人の有効な許可書類のない商業目的の人間の死体の展示は違法である。有効な許可書類は故人の遺言か州法68.50又は68.50.540、あるいは州法68.50.160で死体処理の権限を持つ人物によって作成されるものとする。衛生局長官又は長官の指名する人物は、展示に先駆けて展示認可のための書類の妥当性を判断するものとする。
(b) 人間の死体は、認可された博物館や高等教育機関の所蔵物である時、このセクションに乗っ取って所持されるものとする。
(2) このセクションは人間の死体の展示に適用されない:
(a) 100歳以上;
(b) 人間の歯や毛髪のみ;
(c) 通常の展示の一部か、州法18.39で許可された葬儀又は同様の葬儀や追悼会の一環として遺体を見る事;
(d) 宗教崇拝の対象として。
(3) このセクションへの違反は、州法9A.20において刑罰対象の非行である。検事総長または適切な検事が、サーストン郡又は違反が起こっている又は起こりそうな郡の上位裁判所でこのセクションの違反への訴えを起こすものとする。
(4) このセクションで用いられるように、「商業目的」とは観客が料金その他を請求されるいかなる展示をも含む。


[訳=岩谷] (原文:英語)
Washington State Legislature. "HB 1253 - 2007-08"


フロリダ州上院法案 SB2554 (2007年3月2日)

上院法案 SB2554

フロリダ上院 -2007SB 2554
クリスト上院議員によって提出


12-1086B-07

タイトル未定の法案

  死体に関する法令;州法§406.61の修正;州解剖委員会の承諾のないプラスティネーション人体の州内への持ち込みや州外への持ち出しと社会教育目的の人体の展示に関して、そのような輸送や展示の少なくとも30日以内に、展示の場所や期間などを州解剖委員会に通知した、州内のアメリカ博物館協会認可で科学技術センター協会所属の科学センターへの認可を与えるもの。

フロリダ州議会によって制定される:


セクション1. フロリダ州法セクション406.61は以下の通り修正される:

 406.61:人体の売買や州外への持ち出しの禁止;例外事項、罰則 --- このセクションで説明されている人体や人体パーツを売買する何者も、又はフロリダの知られた医学部や歯学部を除き、人体や人体パーツを州外に持ち出す又は受け取る何者も第一級の犯罪行為として州法775.082と775.083によって罰せられるものとする。

 しかし、この項は、解剖学委員会が教育や科学目的での人体標本を州外に持ち出す事を禁止するものではなく、州法406.11に基づいた人体や人体パーツや組織を合法的検査や調査、又は検死を促進するために運ぶ事を禁止するものではない。

 医学教育や研究目的で人体や人体パーツを州に持ち込み・持ち出しをする人物、施設や組織は、解剖学委員会にその意図を通知し、委員会から承認を受け取るものとする。

 米国博物館協会認定で科学技術センター協会所属の州内のいかなる科学センターも、州解剖委員会の承諾のないプラスティネーション人体の州内への持ち込みや州外への持ち出しと社会教育目的の人体の展示に関して、そのような輸送や展示の少なくとも30日以内に、展示の場所や期間などを州解剖委員会に通知するものとする。


セクション2. この法令は2007年7月1日に実施されるものとする。

[訳=岩谷] (原文:英語)
Florida Senate. "Senate Bill sb2554", March 12, 2007.
The State of Sunshine. "Florida Legislature: Top Ten Amusing Bills for the 2007 Session", March 12, 2007.





関連記事:

2006年8月に、ニューヨーク・タイムズが米国で初めて、中国発の人体の出所の怪しさを報じ、プレミア・エキシビション社がそれらが「引き取り人のない死体」と言及され、ハーゲンス氏と隋鴻錦氏の確執に関して報じられた記事。


中国が展示用ミイラを製造
デビッド・バーボザ
ニューヨーク・タイムズ 2006年8月8日
Ryan Pyle for The New York Times
中国の大連で、世界中の博物館で展示するための人体パーツを準備する工場職員

【大連 (中国)】この沿岸都市の輸出製品製造業エリアの裏側に隠れている物。それは現代ミイラ工場としか表現出来ないものである。

Multimedia

動画:中国の恐ろしい新工業


Ryan Pyle for The New York Times
中国の大連のプラスティネーション協会で展示用人体を準備する職員。このような施設は中国で近年に数カ所オープンしている。

 一連の無票の建物の中では、数百人の中国人の労働者が組み立てラインに座ったり、人体を手入れ、解剖、保存、再処理を行い、国際的な展示会マーケットのために準備している。
 化学保存料のホルマリンで満たされたステンレス容器の中の死体の頭の覆いを作業チームが持ち上げ始めた時、一人の中国人管理者が「カバーを外せ。顔を見よう。顔を見せろ」と言った。

 この作業の立案者はドイツ人科学者のグンター・フォン・ハーゲンス博士 (61) で、彼のショー『ボディワールド』は世界で過去10年間で2000万人を魅了し、保存された皮膚のない人間の死体のはっきりした筋肉と丈夫な組織で2億ドル以上を稼いだ。
 しかし今、数百万人の人々が『ボディワールド』と同様の展示会を見に押し寄せ、不気味な新しい地下産業が中国に現われた。

 政府の取締りは殆どなく、安値な医大労働や、入手し易い死体や臓器の豊富さに --- その多くが中国とヨーロッパから来ているように見える --- この数年間で少なくとも中国に10箇所の人体工場がオープンしている。これらの企業は展示会からの注文で定期的に応じ、日本、韓国や米国に保存死体を発送している。

 人体ショープロデューサーの熾烈な競争は、著作権窃盗と、臓器やその他人体パーツの盛んな地下取引の繁栄を許していると評判の国家における不正人体取引競争への非難を引き起こした。


 ここ中国では、誰が人体ビジネスにいて、人体がどこから来るかを見付けるのは容易ではない。中国で人体展を開催する博物館は決まって、誰が人体を供給したかを突然「忘れた」と言い、公安当局者達は人体に関して彼等が何をしたかのストーリーを定期的に変え、そして大学はそのキャンパスでの人体保存実施の存在を最初は認めたものをその次には否定したりする。

 人権活動家達はそれらの展示を、精神病患者や死刑囚の体を使っているフリークショーであると批判している。6月にここから300キロ北東の丹東市では警察が農村で10体の死体を発見した。政府によればこれらの人体は、人体保存ビジネスに不法に関わった外国人が融資した企業に使用されたとの事。


 不法人体取引の拡大の懸念から、中国政府は7月に人体の売買を禁止する新法を発令し、研究目的以外の人体標本の輸出入を制限した。しかしその法律が工場にどのように影響するかは不明確である。

 マンハッタン南のサウスストリート・シーポートで現在開催されている『BODIES展』を創設した世界最大の展示企業のプレミア・エキシビション社は、その新法をまだ見ていないとし、コメントを拒否した。

 フォン・ハーゲンス氏は、彼がヨーロッパで研究所を運営し、展示では中国人の人体よりもヨーロッパでの献体を主に使用しているため、新法が彼の業務に差しさわる事はないとし、新法を歓迎するとしている。

 新法では、中国人の人体が米国での展示用に輸出される事を防ぎ、数千万ドルの損失が生じる可能性がある。
 1990年代にタイタニック号の引上げ品の展示を始めたアトランタの上場企業のプレミア・エキシビション社は、最近中国からの人体の安定供給の保証に対して2500万ドルを支払う事に合意している。人体調達に関する新しいリスクや、市場が飽和する見通しにかかわらず、プレミア社は人体ショーが世界に広がる事に未だに賭けている。
 プレミア社のアーニー・ゲラー代表は「弊社の人体ショーは恐らくタイタニック展を凌ぎ、恐らくそれは半分の時間でそれを達成する」と述べた。(中略)

 ワシントンにあるコンサルティング企業のインフォーマル・ラーニング・エクスペリアンス社で博物館展示を扱っているロバート・ウェスト氏は「それは驚異的ショーであり、このような物は1980年代の恐竜ロボット展以来見た事はない」と述べた。この産業は人体の出所への疑問に常に付きまとわれる。プレミア社は、公安局が医大に与えた引き取り人のない死体を使用しており、死刑囚や不自然な死因のものは一つもないと表明している。


Ryan Pyle for The New York Times
ダチョウを持った職員と一緒の、施設長の科学者グンター・フォン・ハーゲンス博士。


Ryan Pyle for The New York Times
神経と血管を露出した手。

 ゲラー代表は「弊社は直接 (人体入手に) 携わっていないが、道徳的に法的に正しい事を望んでいる」とし、「私達は全体のプロセスを辿り、そこに死刑囚の可能性はない」と述べた。

 しかし、大連の税関局と大連医科大学の関係者は、プレミア社への供給者が人体を入手し海外での展示に輸送した事を示す記録がないと言っている。
 大連医科大の広報のメン・シャンツー氏は「それらの人体がどこから来たかが分らない」と述べた。


 大連で1999年に最初に大規模人体保存工場を開いたハーゲンス氏は、新法を受け入れるとしている。
 ハーゲンス氏のプラスティネーション協会とプレミア社の激しい競争は、著作権と『Body World』の名称の権利に至るまで全てにわたって法廷に持ち込まれた。それぞれがライバルに対し、中国から人体を得る非倫理的な行動に関わっているとお互いに主張している。
 ハーゲンス氏は「全ての模倣展示会が中国から来ており、その全てが引き取り人のない死体を使用している」と述べた。

 プレミア社の代表のゲラー氏はハーゲンス氏に反論する。「彼は全身人体標本が全て献体と言っているが、臓器は献体でない可能性がある。彼が言っている事を注意深く聞いてほしい」

 この緊張状態の理由の一部は、プレミア社の独占的人体供給者が、ハーゲンス氏の大連に於ける事業の総経理 (社長) であった隋鴻錦氏である事である。ハーゲンス氏の総経理として働きながら隋氏は秘密に大連で自分自身の人体事業を行ったために隋氏を解雇したと主張している。

 大連で人体工場を運営する隋氏はインタビューを拒否した。

 ハーゲンス氏は中国での競争相手への調査を行っているという。中国に工場を開くその他の外国企業と同様に、プラスティネーション協会が中国人の企業家の犠牲になったからである。彼等は「模倣」ショーを始め人体マーケットに参入しているが、人体は適切に保存されていないという。

 これを問題にするために、ハーゲンス氏は大連の施設に二人のジャーナリストを招待し、それが中国での人体保存の最初の中心地であると言った。


 また彼はこのビジネスをなぜ始めたかも話した。東ドイツで育ち、亡命を試み20代で投獄され、その後西ドイツに来てそこで医学学位を得たという。

 1970年代に、水分をポリマーやプラスチックと置き換えて死体を保存するプラスティネーションという方法を考案した。彼は「プラスティネーション人体」とともに世界のツアーを始め、最初の展示は1995年に日本で開かれ、そこで300万人が訪れた。
 最初の頃は、ヨーロッパで人体標本を見せる事は困難であったという。彼はドクターデスとかドクター・フランケンシュタインと呼ばれ、ヨーロッパのメディアは彼をナチスの殺人収容所のヨーゼフ・メンゲレ医師と比較した。

 そしてハーゲンス氏は中国に来て、そこで安い労働力、熱心な学生、人体入手への政府の制限が余りない事を見付け、基本的のは彼の実験と医学研究目的のためにそれらを用い、展示用ではなかったという。
 ハーゲンス氏は、彼の元総経理の隋氏に関して「ここに来た時、中国人の人体に何の問題も生じないと彼は言って、引き取り人のない死体を使う事が出来ると言った。今それは問題があるが、その時は何の問題もなかった」と述べた。(中略)


 大連のおよそ260人の職員が年間約30体の人体を処理する。職員達はまず人体を解剖して皮膚と脂肪を取り除き、そして人体の液体成分を化学ポリマーに入れ替える機械に人体をいれる。彼等は月に200~400ドルを稼ぐ。

 ポジションルームという大きいワークショップでは、約50人の医大卒業生が死体に作業を行う:死体の脂肪を取り除き、座ったり立ったりの姿勢にして、ギターを持たせたりバレーを踊るような恰好にして死体を生きているようなポーズにする。
 ハーゲンス氏は「私の元総経理ですらも『死人を死んだ馬に乗せるポーズに本当に出来るのか?」と言っていたが、これが本当のクオリティだと決めた」と語った。

[訳=岩谷] (原文:英語)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。
Barboza, David. "China Turns Out Mummified Bodies for Displays". New York Times, August 8, 2006. [魚拓 1 2]



脚註:(脚註を見る)



写真:

  1. ^ 大紀元. 『專家學者談「未來中國民主轉型」』, 2006年10月10日 6:51:44 PM. [魚拓]

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コメント

献体したいと思う人は見世物の様にポーズをとらされる事に日本だと多分同意はしないでしょう。
「正義中国国際連盟」がフランス本拠地というのも、さすが自由革命発祥の地ですね。日本でも誠実を盾に「偽証中国国際連盟」を作り、国際的包囲網で膨張する中国を押さえれは゛近隣諸国は平和になれます。
それにしても、「余談」を読むと、生き返るのを恐れて粉々に破壊するかの様です。

  • 2008/08/21(木) 21:50:30 |
  • URL |
  • ねねこ #xdCs4oSQ
  • [ 編集]

ねねこさん

献体した遺体がポーズを取らされて展示をされるという事は、例え本人がいいと言っても遺族がそれを受け入れるのは難しいだろうというのは日本の場合顕著だと思います。

そもそも死体にポーズを取らせるという事自体が、ハーゲンス氏がプラスティネーションの成果を見せたいという発想から始まっていて、ハーゲンス氏自身がテレビ生中継で人体解剖を行ったりとセンセーショナルなイベントを好む人物であって、ここら辺の展示会の写真を見ているとそれが年々エスカレートしていると言うか、いささか悪ノリにも見えなくもないですね。それが医学への貢献であるかと言うと、ポーズを取らせる事そのものは何の意味も持たないと思います。

海外の反共団体はその多くがアメリカのニューヨークかカリフォルニアに本部を置くものですが、その次辺りに来るのがフランスとイギリス辺りではないかと思います。

日本と中国の死生観の違いが見られる面白い例では『牡丹燈籠』の日本版と中国版の違いがあります。日本では新三郎がお露にとり殺される所で終わるのに対し、中国版ではその後二人が悪鬼となり、最後に罰せられて拷問を受け地獄に落ちる所で終わります。
http://www.aozora.gr.jp/cards/001078/files/4999_12230.html

日本の場合は取り合えずお祓いするか成仏させるかという展開なのに対し、中国では死霊も罰する対象なのでしょうか。

  • 2008/08/22(金) 09:20:11 |
  • URL |
  • 文太 #gJtHMeAM
  • [ 編集]

ご無沙汰してます。
支那の価値観の一つに善人は死んでも善人のまま、悪人は死んでも悪人のままという
永久に生前の評価を押し付けるのがありますね。
これの質の悪いところは無実の罪で死刑にされた人間も
支那蓄にとっては極悪人に当たるので遺体をどう扱おうが構わないと言う無茶苦茶な事です。
実際文太さんの調べでも出ている通り法輪功の人々の死体が
使われている可能性が高いです。
それにしても支那蓄は本当に人間なのかと毎度ながら疑いたくなります。

  • 2008/09/01(月) 21:30:56 |
  • URL |
  • 七神 #-
  • [ 編集]

七神さん

「悪人は死後に裁かれる」という概念は、日本にも閻魔大王があるなど、これは比較的世界共通のようではあります。でも中国に死者の尊厳の概念がないかと言えば四川大地震の例を見てもそういう事は全くなく、むしろ強烈に持っているからこそ冒涜行為も強烈に出て来ると、そんな風にも見えます。

一方で李天笑氏の記事には死体を“物”として扱う事に中国では抵抗が強いという興味深い記述がありますが、これは恐らく儒教の影響であり、中国で死刑囚の死体の商業利用が暗黙の了解を得ているのは、文革期に徹底的に儒教を弾圧した中国共産党体制が原因というのが、大紀元などの反共メディア辺りの主張ではないかと思います。

法輪功の件はこれまでも反共系メディアは盛んに取り上げてはいますが、西側メディアへの浸透はまだそこまでは高くはないようです。それが今後どういう動きになるかですね。

  • 2008/09/02(火) 09:57:00 |
  • URL |
  • 文太 #gJtHMeAM
  • [ 編集]

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