9月24日の麻生首相の就任の同日に、ニューヨークタイムズが社説で麻生首相を「好戦的なナショナリスト」と呼び、日本の近隣諸国外交など政策に注文をつけ、歴史問題認識などで麻生氏個人を酷評した事に対し、兒玉和夫報道官が同紙の幹部に口頭で反論し[>>1]、外務省は反論文送付を検討、更に日本政府がニューヨークタイムズに反論を投稿 (現時点ではまだ未掲載)[>>2] するなど、一新聞社が一国の首相をつかまえて上から目線で日本を後進国扱いしてご高説を垂れているというNYタイムズの慇懃無礼さと、日本政府ぐるみでのアメリカの一新聞に対して抗議の動きが最近話題になっています。
これは安倍元首相時代にニューヨークタイムズ東京支局長の大西哲光記者が執拗に安倍氏を攻撃していた当時、私も大西記者の記事は何度か扱った事がありましたが、今回のニュースはその時のデジャブのようなニュアンスがあります。
そしてネットを見ても「またオーニシか」のような意見も見られますが、これは無記名の社説であり、実際大西記者が書いたという確証はないものです。
と言っても、そこで終わらせてしまったら面白くも何ともないので多少調べてみました。
| 写真:NYタイムズのウェブサイトの「PEOPLE」で、麻生氏関連記事のページのトップに使われている写真。(Agence France-Presse -- Getty Images) |
以下が問題の社説の全訳で、日本の新聞が引用した部分を赤文字で示してあります。
![]() 麻生太郎氏の復活 ニューヨークタイムズ社説 2007年9月24日 日本の麻生太郎新首相は良く知られた人物であるが、近隣諸国では好戦的なナショナリストとして知られ、好意的には記憶されていない。外務大臣としての2005年から2007年まで、麻生氏は中国や韓国との関係を損ね、東アジア地域の緊張を高めた --- 戦前の植民地政策の成果を賞賛し、戦時中の残虐行為を正当化する一方、中国を危険な軍事的脅威と表現した。 今、長期政権の自由民主党の黒幕達は麻生氏を、過去わずか2年間での4番目の首相にし、彼に「現実主義者」としてのブランドを与えた。 麻生氏は日本の停滞気味の経済の活性化に焦点を合わせると予想される。21世紀の日本を上手く導くためには、外交関係に関してナショナリズムを現実主義に入れ替える必要がある。日本の将来は、最大の貿易相手国である中国や、韓国やその他の急成長を続ける近隣諸国との政治・経済関係の強化にかかっている。 彼は米国政府に対して、インド洋での日本の補給任務の停止を画策する反対運動に対抗すると確約している --- それはアフガニスタンでの米国と同盟軍の奮闘への援助の、日本のリスクフリーのデモンストレーションである。 米国が日本に最も求めているものは、帝国主義的な夢想や、シンボリックな力の誇示によってアジアの怒りを招くような政府ではなく、責任ある戦略パートナーである。 かつては明確にアジアの経済リーダーであった自国が好景気の隣国に負けている事を多くの日本人が恐れるため、ナショナリズムが不穏な政治の復活を歓迎している。麻生氏を有名にした日本の醜い過去へのノスタルジー的幻想の中に答えは見つからない。 その代わり、日本は小泉純一郎元首相が着手した市場改革を仕上げ、経済の近代化を図る必要がある。そして隣国を対等に扱う事によって外交政策を近代化する必要がある。もし麻生氏がこうした手法を採用するほど現実主義的であるなら、首相として成功するだろう。 ニューヨーク紙面版2008年9月25日A28面にこの記事の1バージョンが掲載。 New York Times. "EDITORIAL - The Return of Taro Aso"., September 24, 2008. [魚拓]
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| 訳:Red Fox |
それにしても最後の段落の「経済の近代化」(to modernize its economy) とは、世界第二位の経済大国で世界トップの技術開発王国の日本を後進国扱いとは。
人の国の近代化云々にご高説をたれるよりも、アメリカの都市部に必ず存在するドーナツ化現象によるスラム街と教育格差をまず何とかした方がいい。それから人の国の「外交の近代化」など言ってるよりもアメリカのジャイアニズム外交をまずどうにかした方がいい。
「社説」と「Editorial」
「社説」というものは額面通りに考えれば「社全体としての見解」であり、執筆者名が出ないのが普通ですが、英語圏の「Editorial」の場合も同様に、ニュースの記者が書く報道記事とは区別され編集委員が出版社の公式見解を書くものである点と、コラムニストが個人見解を書くものもそこに含まれるので、「Editorial」とは報道記事ではないという点では共通していても、その定義は「編集委員の見解」であり、必ずしも「社としての公式見解」に限られたものではないようです。
それで、この社説からどの部分を日本のメディアが持って来るかというのもそれぞれの選択であり、アメリカ国民にとってはアジア外交よりもよほどの関心事であるインド洋の補給活動の部分に関して日本のメディアが一切取り上げていないので、この社説が言わんとしている事が挑発的な言葉に隠れて却って見えにくくなっている印象は一方ではあります。
米国のリベラル紙の最大のテーマは11月に迫った大統領選に向けての「アンチ共和党」キャンペーンであり、それから米国経済の混乱がネックになっている要素も決して小さい筈がなく、アフガニスタンで人的危険を伴わない協力で同盟国気取りをしながら、近隣諸国と諍いを起こすよりも経済問題を何とかしろというニュアンスにも読めます。
この社説を書いたのは誰か
しかし、この社説には何となく見覚えのある非常に特徴的な文言が散りばめられていて、結局誰がこの社説の大半を書いたのかはバレバレではあります。例えば以下の部分。
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麻生太郎氏の復活 NYタイムズ社説 2008年9月25日 かつては明確にアジアの経済リーダーであった自国が好景気の隣国に負けている事を多くの日本人が恐れるため、ナショナリズムが不穏な政治の復活を歓迎している。麻生氏を有名にした日本の醜い過去へのノスタルジー的幻想の中に答えは見つからない。(訳:Red Fox) |
当ブログがこれまでに扱った記事にも似たような文言がちらほらと見られます。
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アジアのライバルを醜く描いた本が日本でベストセラーに 大西哲光 (ニューヨークタイムズ 2005年11月19日) そしてそれは大陸から離れたイギリスと同様の日本のアイデンティティの不安を示唆している。この1世紀半の日本の歴史の大半は脱亜西洋化の目標を掲げたものである。今日、中国と韓国の台頭は、経済外交文化面でのアジアのリーダーの座にある日本へのチャレンジであり、それが日本で彼等に対する新たな嫌悪を生んでいる。 ワールドカップで日韓が共同開催した2002年、韓国がライバルとして台頭した事実は多くの日本人を打ちのめした。韓国は日本よりも勝ち進んだ。同じ時期に韓国のテレビドラマ、映画や音楽のいわゆる「韓流」ブームが日本やアジア諸国で起こり、しばしば日本のポップカルチャーにとって替わった。(訳:Red Fox) Onishi, Norimitsu. "Ugly Images of Asian Rivals Become Best Sellers in Japan". New York Times, November 19, 2005. [魚拓] [全訳]
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アメリカンルーツへの日本の執着 大西哲光 (ニューヨークタイムズ 2007年3月14日) 捕鯨に対する外国の反対が日本国内の愛国的心情を煽ったのはいささか驚きではある。…捕鯨における日本の強硬姿勢はまた、ナショナリスト的なツボを刺激したのである。(訳:Red Fox) Onishi, Norimitsu. "Whaling: A Japanese Obsession With American Roots". New York Times, March 14, 2007. [魚拓 1 2] [全訳]
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日本のナショナリストにとってY染色体だけが意味がある 大西哲光 (ニューヨークタイムズ 2006年3月12日) 女系天皇反対は、より大きなナショナリストの運動の一部であり、その運動は中国と北朝鮮に更に厳しい姿勢を求め、日本の過去の戦争の歴史への修正主義を強調し、そして日本民族の特別性の神話を押し付ける。(訳:Red Fox) Onishi, Norimitsu. "To Japanese Nationalists, Only the Y Chromosome Counts". New York Times, March 12, 2006. [魚拓] [全訳]
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この方は普段は割と機械的に記事を書くのですが、「日本の伝統」とか「ナショナリズム」「皇室」「神話」「第二次大戦問題」「日本VS特亜」という問題になると、途端に物凄く主観的で個人的偏見に満ちた断定的な内容になり、言いたい事があり過ぎてまとまり切らず全体を読んでも何を言いたいのか分からないような記事になるのが特徴です。今回の社説も「アンチ共和党」「経済問題」のような米国読者向けのメッセージは分かりますが、全体を読むと結局何を言いたいのか落としどころのない社説になっています。
この「ナショナリズム」というものは、アメリカ人の視点から見れば、911直後の米国ナショナリズムの高まりがアフガン進攻を支え、その流れでイラク戦争に繋がったという辺りがオーバーラップするだろうし、「ナショナリズム=戦争賛美」みたいなイメージは米国のリベラル新聞の読者に対しては、反イラク戦争辺りのツボにうまく嵌ればそれなりに訴えるものはあるでしょう。
大西記者はこの社説と同じ日に麻生新首相就任の記事を書いています。
![]() 政権政党のベテランが日本の新首相 大西哲光 ニューヨークタイムズ 2008年9月24日 【東京】日本の政治のトップのポストを勝ち取るために長年闘って来たベテラン政治家の麻生太郎氏は、水曜日に衆議院で正式に内閣総理大臣に指名され、この2年間で4人目の首相に就任した。 麻生氏 (68) は首相としての最初の会見で、既に景気後退局面入りしているとみられる経済の立て直しが最優先課題であると述べた。また、アフガニスタンでの米国主導の戦争への援護としての、インド洋での海上自衛隊による評判の悪い給油任務の継続を公約した。 しかし麻生氏は、3週間前に福田康夫前首相が突然辞意を表明して以来、他の全ての問題よりも大きくのしかかっている問題に関する質問に答えるのは避けた その答えによっては、それぞれ1年しか持たなかった2人の前任者よりも麻生氏の内閣が更に短命政権になる事が判明するかもしれないのだ。 半世紀以上も政権を維持したが、過去2年間の一連のスキャンダルや不始末のエピソードで急激に支持が低下した麻生氏の党の自由民主党は、来年9月までに衆議院の解散・総選挙を実施しなければならない。しかし新政権発足時のお決まりの反動による支持率上昇を利用するために、早ければ11月に選挙が実施されると予想されている。 昨年の参議院選を勝利した野党の民主党に勝つためにその反動が十分であるかどうかは、この数日以内に日本の主要新聞が行う世論調査がヒントになるだろう。 麻生氏の党が権力にしがみついたところで、大量に議席を失えば彼は已むを得ず首相と総裁の両方を辞任する事になる。 その新しい地位で選挙に向けて、麻生氏は政権政党の自由民主党内の盟友や身近な顔ぶれを任命し、選挙に向けて内閣を組織した。 麻生氏は「基本的に私はこのメンバーで選挙を戦うことになる。われわれとしては、どう戦うかといえば、正々堂々と戦う」と述べた。[>>3] 首相自身と同様な、自由民主党の右派出身のメンバーを含む麻生氏の内閣は、イデオロギー的には福田政権よりも更に右寄りである。またそれは財政の引き締めや改革にそこまで熱心でないと見られる麻生氏のような議員数人を含み、特に農村地域で支持を集める伝統的族議員に対してよりオープンである。 財政支出拡大に賛成する元経済産業大臣の中川昭一氏 (55) が財務大臣に選ばれた。その国際業務の手腕が未知数にもかかわらず中曽根康弘元首相の息子の中曽根弘文氏 (62) が外務大臣に任命された。中曽根氏はポーランド、リトアニア、ラトビアとの友好議員連盟会長を務めている。 日本はアフガニスタンでの戦争に関連する米国その他の船舶へのインド洋での給油活動を継続して来た。問題のアフガニスタン作戦の見通しであるが、来年1月の期限切れまでは法的に認可されており、野党の民主党が継続に反対をしている。 ニューヨーク紙面版2008年9月25日A16面にこの記事の1バージョンが掲載。 New York Times. "Japan Gets New Prime Minister, Veteran of the Governing Party", September 24, 2008. [魚拓]
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おやおや、署名記事ではもっと露骨に「麻生はすぐに辞めろ」と言っているようなもの (笑)
この人は安倍元首相の時も狂ったように「ナショナリズム」云々と記事を書きまくって、福田前首相関係の記事は殆ど書かなかったという、真面目に政治記者をやっているのか訳が分からない方ですが、麻生首相になって以降はまたあの独特の大西節が見られそうなので、これからは楽しみですね。 (笑)
いずれにしても、日本の首相交代のニュースに関する社説を誰が書くかと言えば、東京支局長のあの方を差し置いて一体誰が書くのかという事になります。
おまけ:
ニューヨークタイムズのもう一人の記者
「Shinzo Abe」「Yasuo Fukuda」「Taro Aso」「Junichiro Koizumi」などのキーワードで、ニューヨークタイムズの日本関係の政治記事を検索してみると、ここ2年ほどでコンスタントに記事を書いている記者として出て来る名前が、大西哲光記者とマーティン・ファクラー記者の2名です。このファクラー記者 (41) はフリー契約のニューヨークタイムズの東京特派員で、以前はAP通信の記者として北京に滞在していたという経歴の方のようですが、政治や社会問題を主に扱う大西記者に対して、ファクラー記者は政治や社会関連の他には経済問題を得意とする方のようです。日本語を流暢に話すようです。
日本の新首相に関する社説を書く可能性のある人物としては、フリー契約のファクラー記者がその候補に入るとは思えませんが、ファクラー記者が22日に麻生氏の自民党総裁選に関する記事を書いているので、その論調を比較するために参考までに訳してみました。
ちなみに、ニューヨークタイムズのウェブサイトの「PEOPLE」で、麻生氏関連記事のページのトップにこの記事が使われています。
![]() 日本の与党は麻生氏をリーダーに選ぶ マーティン・ファクラー ニューヨークタイムズ 2008年9月22日
【東京】日本の停滞した経済を活性化する公約をした率直な物言いの保守派の麻生太郎氏が、与党の自由民主党によって次期首相となるため選出された。 元外務大臣の麻生氏は総裁選で余裕で2/3の票を獲得し、初の女性候補を含む他の候補を負かした。党の衆議院での優勢から水曜日の本会議で麻生氏が福田康夫首相の後任となるのは確実視されている。 一年以内に2人の首相が惨憺たる支持率で退任するという、半世紀に及ぶ政権で最悪の危機から抜け出すよう党を率いる麻生氏 (68) はその期待を担っている。 総裁選の最中、麻生氏 (ah-soと発音) は実利的な経済問題に焦点を当て、法人と個人消費に対する減税を公約した。 時にはアジアの隣人を怒らせた自称タカ派の麻生氏は、早急に右翼的議題に持ち込む事を避ける現実主義者として広く知られている。裕福な産業一族の御曹司の彼はまた、日本の漫画のファンであり、次期首相に関する全国調査ではコンスタントにトップの座にいた。 問題は麻生氏が早ければ11月に予想される重要な国政選挙の前に、幻滅している日本の有権者を呼び戻す事が出来るかどうかである。自由民主党は麻生氏が前任者達の辞職、強力な新対抗勢力や経済低迷でよろめいている党への支持を回復する期待をしている。 就任の挨拶で麻生氏は真面目なトーンで、自国の最高地位を獲得するためのその長年の大望を振り返り、党と日本を率いる事は彼自身に課せられた「天命」(mission) であると語った。来たる総選挙に勝利し自由民主党の政権を守る事に全力を注ぐと決意を述べた。[>>4] 米国に次いで世界第二位の経済大国の日本が、ウォール街の混乱に対して多少の役割を果たした時、麻生氏が就任する事となった。 麻生氏は、現在進行中の金融危機に関して日本は今のところ比較的無事であり、世界経済の不景気を好転させるために経済を活性化する事が日本に求められていると述べた。 麻生氏は土曜日に [街頭] 演説で「米国は大恐慌に匹敵する金融危機になりかねない状況だ。日本は何らかの形で内需を喚起しなければならない」[>>5]と述べている。 政治評論家らは、10月に予定されるかもしれない衆院選は、分裂しがちな自由民主党を活気づけ、幻滅している日本の有権者の共感を得るメッセージを見つける麻生氏の能力へのテストとなると指摘している。 ニューヨーク紙面版2008年9月23日A12面にこの記事の1バージョンが掲載。 Fackler, Martin. "Japanese Party Chooses Aso as Leader". New York Times, September 22, 2008. [魚拓]
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大西記者とファクラー記者のどちらの論調が24日の社説により近いかは言うまでもないでしょう。
ところで、この記事は23日の紙面版に載ったものですが、なぜか同じ記事の大幅に修正されたものが翌日のウェブ版に掲載されています。青文字の部分が修正、赤文字は追加された部分。
![]() 日本の政権政党が新リーダーを選ぶ マーティン・ファクラー ニューヨークタイムズ 2008年9月23日
【東京】日本の停滞した経済を活性化するために、旧態依然とした政府への回帰を提唱して来た率直な物言いの保守派の麻生太郎氏が、与党の自由民主党によって次期首相となるために選出された。 元外務大臣の麻生氏は総裁選で2/3の票を獲得し、初の女性総裁候補を含む他の候補を容易に負かした。党の衆議院での優勢から水曜日の本会議で麻生氏が福田康夫現首相の後任となるのは確実視されている。 一年以内に福田氏とその前任の安倍晋三氏の両方が惨憺たる支持率で退任するという、半世紀に及ぶ政権で最悪の危機から抜け出すべく党を率いる、土曜日に68歳になった麻生氏は党の期待を担っている。支持者にとって麻生氏は、グローバルな金融市場の混乱で日本が自国の不況の危機に直面している時に、舵取りに安定した手を差し伸べるベテラン議員でありセメント企業の元社長である。 政治評論家にとって麻生氏は、日本の経済を部分的に解放し小さな政府に持って行った10年掛かりの改革を脅かす、党の多額消費のやり方への先祖返りのような人物である。彼等はまた、戦前日本の帝国拡大主義の苦い記憶を煽動してアジアの隣国を怒らせた過去のあるタカ派麻生氏の失言に警告を発している。 就任の挨拶で麻生氏は (ah-soと発音) 真面目なトーンで、自国の最高地位を獲得するためのその長年の大望を振り返り、党と日本を率いる事は彼自身に課せられた「天命」(mission) であると語った。来たる総選挙に勝利し自由民主党の政権を守る事に全力を注ぐと決意を述べた。 麻生氏は投票のために集まった自由民主党の議員達の前で「ここに立ってみると、これは麻生太郎に与えられた天命なのだと思う。選挙に勝利した後に初めてこの天命を果たしたと言う事が出来る」と述べた。 総裁選の最中、麻生氏は経済問題を強調し、財政支出拡大と法人と個人の減税を公約として来た。これらの方策は特に自由民主党の伝統的な支持母体である農村地域に向けられているように見える。東京など繁栄する都市に比べて地域経済が遅れを取り不満が増加している地域である。 日本大学の政治学教授の岩井奉信氏は公的支出削減を行った小泉純一郎元首相を例に挙げて「麻生氏は地方の有権者の大量出血を逆転させようとしている。そのためには小泉改革とは異なる方向に日本を持って行くだろう」と述べた。 米国に次いで世界第二位の経済大国の日本が、ウォール街の住宅関係の暴落に対して多少の役割を果たした時、麻生氏が就任する事となった。現在進行中の金融危機に関して日本は今のところ比較的無事であり、これに対する麻生氏の主な対策は、世界経済の不景気を好転させるために日本経済を活性化する事であると示した。 麻生氏は土曜日に [街頭] 演説で「米国は大恐慌に匹敵する金融危機になりかねない状況だ。日本は何らかの形で内需を喚起しなければならない」と述べている。 自由民主党は麻生氏が有権者を呼び戻す国民受けする人物である事を期待しており、低支持率、強力な新対抗勢力や経済低迷の中、早ければ10月下旬にも行われる衆院選に直面している。大規模な企業グループの御曹司の麻生氏は、その大衆迎合の才覚と若者に人気のある日本の漫画好きとして知られており、それは最近の次期首相に関する全国調査で彼をトップにのし上げた。 煙の立ちこめる密室での自由民主党の伝統的な投票よりもむしろ米国の予備選挙のような感じさえ受ける、通常にない位オープンな総裁選に麻生氏は勝利した。月曜日の勝利は過去7年間で4回首相に立候補した長い探求のキャリアの最高点に見えたが、その演説で時には自身の祖父である戦後日本のパワフルな首相の吉田茂氏を引き合いに出した。 しかし、特に第二次大戦中に彼の一族の複合企業「麻生グループ」が朝鮮人を強制労働させた事が発覚したりなど、身内の他の局面もまた彼に付きまとう。麻生氏はまた日本の植民地政策が現在の台湾の高い教育レベルに繋がったとか、朝鮮人に日本名を強制する日本の植民地政策を求めたのは朝鮮人側であるなどの、明らかな失言で批判を招いている。 その保守的な個人見解にもかかわらず、麻生氏は早急に右翼的議題に持ち込む事を避ける現実主義者として敵にも味方にも広く知られている。昨年は外務大臣として安倍前首相の北京とソウル訪問の手筈を整え、それはアジアとの関係改善のために賞賛された。 実際、麻生氏の政治上の顕著な特徴の一つは、政治的風向きによって立ち居値を変えるその能力であろう。麻生氏の29年の政治家としての経歴で彼らしい政策は何かと聞かれて、政治評論家も議員も答えに困っていた。 東京で独立研究所を持つ政治評論家の森田実氏は「麻生氏は彼自身の大望以外に信じるものはない。自党内のタカ派と同様にハト派も受け入れるのを見て来た」と語った。 首相として麻生氏は、日本の中国や韓国との時には短気になる結び付きの改善を引き続き行う事を期待されている。彼はまた、日本政府の伝統的な保護者である米国政府との親密な結び付きに賛成するとも述べて来た。 日本の目標である2012年までに財政収支の黒字化の延期を表明している中、麻生氏は景気対策の規模に関して具体的な事は多くは述べていない。数年のうちに日本の経済が健全に伸び始めれば、その時に財政収支を減らしたいと漠然と言ったのみである。 Fackler, Martin. "Japan's Governing Party Picks New Leader". New York Times, September 23, 2008. [魚拓]
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何かこの二つの版をくらべてみると、検問前と検問後みたいな印象も何となく受けます。例えばフリー契約の記者が書いた記事を会社の方針に合うように上司のチェックが入るといった感じの。
尤もこの「改訂版」の方が詰めた詳しい内容になっている部分も多々あるにせよ、特に後半に大幅に加えられた部分のトーンが、社説に書かれたものや大西記者がこれまで散々書いて来たトーンと非常に共通する部分があるのは気のせいなのか。
ちなみにこれは問題の社説の前日の記事。
関連記事:
9月26日
- 「隣国を尊重すべき」=麻生首相に注文−NYタイムズ (時事通信 9/26 0:52) [記事]
- 麻生新首相に「中国との強調」を“進言”NYタイムズ (産経新聞 9/26 8:17) [魚拓]
- 麻生首相「けんか好きな国粋主義者」とNYタイムズ社説 (読売新聞 9/26) [魚拓]
- 「近隣国との関係強化を」NYタイムズ、麻生首相に注文 (朝日新聞 9/26 21:49) [魚拓]
- 麻生氏は「好戦的な民族主義者」 NYタイムズ社説、不穏当な表現乱発 (産經新聞 9/26 22:42) [魚拓]
9月29日
- 【産経抄】9月29日 (産經新聞 9/29 3:18) [魚拓]
- 【噴水台】麻生語録 (中央日報 9/29 15:58) [魚拓]
ニューヨークタイムズ大西記者の記事の関連エントリー:
・海兵隊員のレイプによる逮捕劇で日本は怒りに焦点を集める (2008.2.13)
・第二次大戦の悲痛な一章を修正する日本政府に沖縄県民が抗議 (2007.10.7)
・日本は第二次世界大戦の性奴隷制度における役割の否定を繰り返す (2007.3.17)
・アメリカンルーツへの日本の執着 (2007.3.14)
・安倍首相は日本の戦争セックスの記録を拒絶する (2007.3.2)
・日本のナショナリストにとってY染色体だけが意味がある (2006.3.12)
・日本の外務大臣、中国の軍事強化は脅威であると発言 (2005.12.23)
・アジアのライバルを醜く描いた本が日本でベストセラーに (2005.11.19)
脚註:(脚註を見る)
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