Red Fox

ネバダ核実験博物館

 ネバダ州ラスベガスに核実験博物館(原爆博物館とも訳されている)がオープンしたとの報道を見たのは2005年3月のTBSのニュースサイトでした。ネバダ州の12分の1を占める(岩手県位のサイズ)広大な荒野地帯がネバダ核実験場となっており、その歴史に関する博物館です。

■Nevada Testing Site Historical Foundation
(ネバダ核実験博物館のウェブサイト)
http://www.ntshf.org

 その年の夏にラスベガスに立ち寄ったので、せっかくなので核実験博物館を見て来ました。「どんなアトラクションがあるのか」と期待していたのですが、結局のところ、報道で見た印象とはかなりかけ離れたものでありました。

Photo: AJ Software & Multimedia

「核実験博物館」ラスベガスに開館
TBS 2005年3月29日 16:47

 核実験の博物館がアメリカ・ラスベガスにオープンしました。中には「核爆発の威力が体験できる」というアトラクションさながらの展示もあり、被爆の悲惨な実態を知る日本とアメリカの核兵器をめぐる考え方の違いが浮き彫りとなっています。ラスベガスにオープンした「核実験博物館」では核実験だけでなく、核兵器の開発以来の歴史についてなど豊富な資料とともに幅広い展示がされています。

 日本に関連したものは1954年の水爆実験で被爆した「第五福竜丸」についての簡単な展示がある他、広島、長崎に投下された原爆については「核爆弾の使用こそが犠牲者を最小限に抑えて、戦争を終わらせる方法だと結論付けられた結果、2つの核爆弾が軍事産業の拠点に対して落とされた」といった言及がされています。

 核兵器がアメリカの発展と世界の平和にいかに貢献したのかを誇らしげに主張する展示で大部分が占められていますが、その中でも博物館の目玉と言われているのが劇場です。核爆弾の威力を体験できるようにと椅子が揺れ、前方からは空気が出る仕組みになっています。映像にあわせて振動する椅子、大音量の爆発音、噴き出す風・・・。「グラウンドゼロ」と名付けられたこのコーナーはスクリーンに映るおぞましい映像を除けば、まるで遊園地の体験アトラクションです。こうしたショッキングな内容があるにもかかわらず、博物館の展示は中立的ですばらしいという反応が目立ちました。

「とてもよい展示だと思います。核の歴史は私たちの歴史の一部ですし、全ての人が見るべきだと思います」

「すばらしい博物館だと思います。核実験を支持している人と反対している人との双方の見方がわかるようになっていますから」

 確かにアメリカ人の視点から見た中立的な立場で核の歴史をまとめたものかもしれません。しかし、核兵器を体験アトラクションにするような、あまりに楽観的な姿勢は若い世代にどのように映るのでしょうか。

「(グラウンドゼロは)とってもかっこよかったわ!だって、動いて椅子が揺れて、まるで爆発の現場にいるみたいだったもの。すごいわ!」  こうした核の娯楽化を象徴しているのが土産(みやげ)売り場です。キノコ雲を扱った商品がずらりと並んでいる他、広島と長崎に落とされた原爆のキーホルダーまでもが売られているのです。

「(Qなぜあのような土産物を?)アメリカ人は時として恐ろしい出来事をジョークにする傾向があります。確かに適切なこととは言えませんが・・・」(核実験博物館 ジョンソン館長)

 日本人の感情を逆なでするのは本意ではないとして、館長は「商品の陳列を再検討する」と話しますが、「博物館を維持していくため、売れる商品を置くのはやむを得ない」という本音も漏らしました。

 原爆が投下されてから今年で60年、こうした博物館が造られたという事実は核兵器をめぐる日本とアメリカとの根本的な考え方の違いが長い時間を経た今も何も変わっていないという現実を象徴していると言えそうです。(29日 16:47)

http://news.tbs.co.jp/ram/news1161449.html


写真:LLNL
 この報道で「核爆発の威力が体験できるアトラクション」と言われているものは、実際には『核実験の歴史』の15分程度のドキュメンタリー映画で、その爆発シーンで重低音の爆音が出るだけで、これは単に映画館の音響システムと同レベルのもので、椅子が動いたり揺れたりということは全くなく、ベンチの下にあるスピーカーから出て来る重低音に過ぎず、とても「体験アトラクション」と言えるような代物ではありませんでした。爆発シーンは全体で3回ありました。また、風が出たと言っても、気が付くか付かないか程度のもので、それも確か映画のオープニングの一箇所のみでした。

写真:週刊WEBマガジン
 記念グッズには、全体的には「実験で吹き飛ばされる建物」「原子のデザイン」「実験場の地図のイラスト」など核実験場にまつわるものをデザインしたもので、きのこ雲をデザインしたものはそのうちのごく一部でした。

 TBSの記事中の『広島と長崎に落とされた原爆のキーホルダー』とは、「広島・長崎投下の際のきのこ雲の写真を基にデザインしている」と言うように聞こえますが、実際は『ネバダ実験場における核実験時のきのこ雲』の写真を基にデザインされています(広島と長崎の原爆の爆発時のキノコ雲を地上から撮影した写真は存在しない)。もちろん原爆とは広島と長崎に落されたものなので、原爆のキーホルダーを『広島と長崎に落とされた原爆のキーホルダー』と言うのが間違いではないとしても、TBSは敢えて誤解を招く表現を意図的に使っているという印象です。

写真:週刊WEBマガジン
 実際にそこに行き自分の目で見たところ、TBSの報道はアトラクションとグッズのみを集中的に誇張や曲解も含めて書かれており、意図的に視聴者に悪感情を持たせるようなものであったという印象です。確かに私自身、在米日本人の立場として、原爆に関しては複雑な感情はあります。しかしながらTBSの視点は著しく主観的であり、意図的に情報を操作し視聴者の反感を煽っているものです。


写真:NTSHF
 核実験資料館は、第五福竜丸やアメリカ国内の核実験反対運動、実験に関わった兵士の被爆症も取り上げ、また冷戦構造において核開発競争が避けられないものであったなど、核開発のネガティブな面にもかなり触れているので、スミソニアン博物館(ワシントンDC)の『エノラ・ゲイ』展示の「原爆投下を徹頭徹尾正当化したもの」に比べて、遥かに中立でましなものの印象です。ただし広島・長崎の死者数の表示がなく、被爆状況の写真が殆どないとか、第二次大戦に関する記述が全体的にかなり少なく、一方では現代の対テロ戦争に関しては正当化しているなど、やはりアメリカの限界というものも同時に感じました。

写真:NTSHF
 10年前に「エノラ・ゲイ」展示に行った時は、「原爆は結果として多くの日本人を救ったのだから正しかった」という、退役軍人組織にコントロールされた、余りにも短絡的で一方的な主張で塗固められていて、日本人としてはかなり不快なものでしたが、核実験博物館に関しては、そういった次元のものではありませんでした。

 実際、全ての展示の説明文を丁寧に読んでいたら、とても一日で見切れる量ではないので、私も結構飛ばし読み状態でした。実際に取材をした方の日本語観光ガイドのサイトがありますが、ここに詳しいことが書かれています。私が見たのもこういった感じです。

■観光スポット 原爆博物館』(週刊WEBマガジン ラスベガス大全) http://www.lvtaizen.com/sight/html/atomic.htm

 カジノで有名なラスベガスですが、何でラスベガスに核実験博物館があるのかと思ったら、ラスベガスは実験場に隣接しており、地下実験の振動がラスベガスの建築物に影響を及ぼすと言う理由も実験禁止の理由の一つだったとか。




 ネバダ核実験場での1957年10月7日の核実験のカラー映像。核実験博物館で上映されてる映画にもこの映像が含まれている。

オペレーション・プランバブ
Operation Plumbbob
(3'47")
Posted by Vizaar (2006.11.24)
1957年5月28日と10月7日の間に行われた「オペレーション・プランバブ」は、ネバダ核実験場 (NTS) の歴史で最も大きく長期間で、最も論議をかもしだした核実験シリーズである。これは29回の爆発から成る第六回実験シリーズで、そのうち2つが全く核反応をしなかった。21の研究室と政府機関が参加している。「オペレーション・プランバブ」の実験の大半が大陸間弾頭ミサイルと中距離ミサイルに貢献しているが、そこではまた対空防衛と対潜水艦弾頭のための小規模核反応の実験と、民間と軍用施設に対する43回の攻撃実験、放射物や生物医学の実験と、航空機構造実験が行われた。「オペレーション・プランバブ」では米国の当時の核実験プログラムでは最高タワー実験が行われた。核実験の一つには米国核実験始まって以来の大規模演習が付随した。


 なお核実験博物館の映画で説明されていたのは、この時代にはまだ放射能の人体に対する影響がそこまで認識されておらず、核爆発見学ツアーなどが行われその結果軍関係者などに被爆症が多発し、それ以降核の危険性が認識され始めたとか。勿論日本に原爆が投下された当時はアメリカも核兵器に対する認識はその程度であったと言う事です。




ご訪問有り難うございました。

日頃ランキングにご協力頂きありがとうございます。
  • 『With2人気ブログランキング』は、ランキングサイトからのアクセスが多いので参加しておりますが、これはバナーアイコンをクリックしてこのブログ上から直接ランキングサイトにアクセスする事でカウントされる仕組みになっており、1つのIPアドレスは1日に1カウントまでです。クリックを宜しくお願い致します。m(_ _)m

  • 『ブログ拍手』はFC2独自のデフォルト機能で、これはランキングではありませんが、各エントリーの反響に関する参考にさせて頂いております。

当ブログからの引用
  • 当ブログはリンクフリーとするので、私の文章及び訳の引用にその都度許可は必要とはしませんが、引用元の明示を必ずお願いします。また当ブログ上の引用記事や写真等は著作権の関係上可能な限り出典元を明記しておりますが、それらの二次転載によるトラブルに関しては責任を負いかねます。

リンク先
  • 引用記事や写真には出典元提示のために元サイトのリンクを埋めてありますが、特にウィンドウズユーザーの方に関しては中国サイトなどウィルスに関する安全の保証は出来ないので、海外サイトのうち大手メディアを除く個人サイトなどはクッションURLを埋め込む事で対応しておりますが、そこから先は十分注意して個人の責任でお願い致します。

コメント
  • 基本的マナーの欠落したコメントや返事の必然性のないコメントに対してはレスはしません。リンクやメアドのないステハン投稿者(こちらから追跡出来ない相手)による中傷、荒らし目的などのコメントは予告なしに削除およびアク禁に、悪質なものに関してはIP公開などの手段を取る事もあります。なお、レスがついたコメントを削除または内容の差し替えを行う行為はルール違反なので以後閲覧禁止とします。

トラックバック
  • コメント欄やTBを解放していないブログ、キーワード系や宣伝・営利目的ブログ、および当ブログとは著しく無関係の内容のTBは受け付けておりません。

コメント

まぁ、一時期は(今でもそう思ってる人はいそうですがw)「でっかい爆弾」程度の認識ですからね・・・・アトミックソルジャーみたいな事例はごろごろありますし。

ちなみに、中国軍は爆発の直後に騎兵隊が突撃するという漢らしい訓練をやってましたw
馬用のマスクをつけた馬に乗った防護服の騎兵がサーベル振り回してる映像はある意味素敵な絵でしたよw

>>祥平さん
戦後にGHQの検査機関が被爆者を対象にいろいろ検査をやって、全く治療行為を行わなかったため「人体実験」だと恨みを買っているようですが、その12年後のアメリカの核実験の様子を見ても、それでも危険性は認識してなかったようで、話になりませんね。

中国の核爆発騎兵隊はこれですね? 何ですかこの前時代的な発想はww
http://www2.ttcn.ne.jp/~heikiseikatsu/VCD_2.htm

なんですかこの中国の訓練は?(笑)
無知というのは恐ろしいですね。

>>baoさん
これだけでエントリーが出来そうなネタですね。大昔のような大砲で敵の城壁を破壊してそこに騎兵隊が攻め込むようなノリだったんでしょうかね。w

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

ホームページ アフィリエイト レンタルサーバー FC2ブログ 専門学校