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ハワイ州で人体展禁止が法制化

 昨年後半に、米国の人体展が中国の公安局と官営企業が絡んだ人体闇市場からプラスティネーション人体を入手し、そこに死刑囚の銃殺死体が利用されている疑惑に関して特集を組んだが、今年に入ってから新しい動きがあるのでアップデートとして追加エントリーを数本書いてみる。

 昨年の2月にABCニュースの『20/20』が綿密な取材で中国の人体闇市場をスクープして以来、疑惑の火中にある米国のプレミア・エキシビション社が運営する人体展の一つ『BODIES展』(BODIES... The Exhibition) が昨年6月14日から今年の1月18日までハワイで開催された事を受け、1月21日にハワイ州下院財政委員長で日系2世のマーカス・オオシロ (大城) 議員が、人体の売買と商業展示を禁じる法案を提出、3月10日に下院を通過、4月14日に上院を通過、5月5日に両院の最終承認を受け、6月12日にリングル知事の承認を経て法制化となり、ハワイ州が全米で初の実質的な人体展禁止法を制定した州となっている。

 全米各地で開催されているプレミア社の人体展『BODIES展』と『人体の暴露展』(Bodies Revealed)は、その開催地各地で倫理的・宗教的な見地からその都度社会的問題になり、それにABCニュースのスクープが拍車をかけ、既に昨年よりフロリダ、ニューヨーク、ペンシルバニア、ワシントンなど全米各州や連邦議会で人体取引規制や人体展禁止法案が検討されるなど法制化の動きが出て来ているが、うちカリフォルニア州では法案が提出され議会の承認を受けながら「優先順位が高くない」の理由で知事のサインを得なかったという段階まで至っており、今回のハワイの前例から今後は全米でこの動きが進む可能性もある。


ハワイ州下院2008年度予算委員会でのマーカス大城議員 (中央) (Hawaii House Blog) [A]


[特集『人体展と中国の人体闇市場』トップページに戻る]






 以下はこの7月13日にこのニュースを報じたABCニュースの記事。紫文字はこれまでの経緯の説明部分でこれまでの記事と同一文章の部分。



ハワイ州でリアル人体ショーが差し止め
物議を生んだ中国のリアル人体展を禁止する合衆国で最初の州はアイランドステート
アンナ・シェクター
ABCニュース 2009年7月13日

 中国の「引き取り人のない」人体を展示する有名なショー『BODIES ... the Exhibition』、ハワイ州はこの営利人体展を禁止する最初の州となった。


ハワイ州はこの営利人体展を禁止する最初の州となった (Bodies/ABC News)
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 このアイランドステートの議員達は、中国の死刑囚によって利益を得ているる可能性がある限り、アジア系住民が多く居住するこの州において受け入れられるものではないと述べた。

 このショーを主催するプレミア・エキシビション社 (本社:アトランタ) は、全米、ヨーロッパとアジア各地での『BODIES』展で巨額の収益を得ている。

 下院財政委員会のマーカス大城委員長は、人体の出所を突き止めたABCニュースの『20/20』を見て、州法案を提出したと述べた。

[20/20の調査番組はここをクリック]

 2008年の調査によって、中国で盛んな人体闇市場の存在と、死刑囚を含む死体が一体200-300ドルで売られていた「人体取引」現場の様子の自称「人体闇市場のディーラー」による証言が明らかになった。

 大城議員は「以前はショーがまさかハワイに来るとは思っていなかったが、それが現実に起こった時、これらの人体を商業目的で展示する事をハワイは黙認しないと心を決めた」とし、「ハワイにはアジア系住民の人口が多くこれは非常にゆゆしき問題である」と付け加えた。

 また、新法では人間の死体の悪用に対して1000-5000ドルの罰金が課せられる。

 大城議員によれば、ハワイの主要な歴史博物館でハワイ原住民の宗教上儀式で用いられる人骨を展示しており、その展示を許可する州法条項があるという。
 今回の法案への批判的意見として、これらの古代遺物の展示と中国人のプラスチネーション人体に違いはないとの主張がある。

 ハワイでの展示を支持している『Publius808』というあるブロガー[>>1]は「展示に行って学ぶものはあったのに、もしこれらの人体が無許可使用であったならそれはとんでもない事」としながらも、「しかしこの法律は科学とアートに対する一部の人の偏見であり、それは陳腐で未熟な考えである」と書いている。


人体はどこから来たのか?

 プレミア社は、展示されている人体が死刑囚であるとは認めず、全ての人体は中国の大連にある医科大学から来たもので、どの展示用人体にもいかなるトラウマの証拠は認められないと保証されたと主張した。
 しかし大学関係者は『20/20』に対して、大学側が米国での展示に人体を提供したのは「事実ではない」と述べた。その代わり、医科大の教授が運営する個人企業から人体が供給された事を取材班は突き止めた。当初医科大は人体を供給していたが悪評判がたったために撤退している。

 『20/20』の報道を受けて、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ検事総長がその企業の調査を初め、2008年5月にプレミア社とクオモ検事総長のオフィスは合意に至った。この法的合意によりプレミア社は新たに入手する人体に関して故人の同意を証明する事が義務づけられた。

 プレミア社は、展示している人体が死刑囚であるという疑いを払拭する事が出来ない旨を、ニューヨーク展会場とウェブサイト上に明確に表示する事、そして疑惑を知っていたら見に来なかっただろうという見学者に対して返金をする事を義務づけられた。クオモ検事総長はまた、プレミア社の義務が遂行されているかどうか2年間第三者団体によってモニターされる事を義務づけた。

 プレミア社は、「(標本が死刑囚でないという) 中国側の説明を信用するしかなかった」と主張している。

 プレミア社のアーニー・ゲラー代表は2008年2月にABCニュース『20/20』に対し、中国の取引相手から供給された人体の一部が死刑囚の可能性があるという疑いに対し「驚愕した」と語っている。ゲラー氏は同社の医療スタッフがそのような何の証拠も見た事がなく、取引相手から「これらは大連医科大学から来た合法的な引き取り人のない人体」と保証されたと述べた。 ゲラー氏は「もし私達の取引相手にもそのような事が起こるなら、私達はこの事に対し直ちに手を打たなければならない」と語っている。


複数の州の議員達が答えを求めている

 カリフォルニア州とペンシルヴァニア州の議員達も昨年、遺体の展示に対する故人の同意の証明を義務とする法案を提出しているが、これらの州の知事が法制化するためのサインをしなかった。今年になってフロリダ州も法案を提出している。

 『20/20』の報道の後に、米国議会もショーを差し止める法案を提出している。トッド・エイキン下院議員 (ミズーリ州) 中国人の人体の米国輸入を禁じる法案を21人の議員と共同提出をしているが、それは法制化に至っていない。

 プレミア社のブライアン・ウェインガー代表弁護人はこの件に関するコメントに応じなかった。

[ABCニュース調査ホームページはここをクリック]

[訳=岩谷] (原文:英語) (関連リンクおよび本文中リンクは元記事の通り)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。
Schecter, Anna. "Hawaii Shuts Down Real Human Bodies Show". ABC News, July 13, 2009. [魚拓 1 2 3]

 この人体売買・展示取締法は当初は、人体の売買を取り締まるHB28と商業展示を取り締まるHB29の二つの法案として提出され、最終的にHB28の修正にHB29が組み込まれる形で可決・承認されている。






ハワイの人体売買・展示取締法は非常にシンプルな内容

 以下は6月12日に知事承認された5月5日の最終修正版の訳で、下線の引かれた部分は最終案で追加された部分。ハワイ州はカリフォルニアと違い改訂のプロセスがウェブ上に出ていないので具体的な変遷は分らないが、最終案は「死体;禁止;罰則」のタイトルで、内容的には、1) 人体の売買禁止、2) 人体の商業展示の禁止 (例外事項が幾つか)、3) 医学教育や研究を除いた人体使用禁止、そして「人体」と「博物館施設」の用語の定義のみという、カリフォルニア州の法案AB1519に比べて、あっけないほどに内容は非常に短く簡素なものである。


知事の承認
2009年6月12日

下院
2009年度第25回州議会
ハワイ州

法令118
H.B. NO.28
H.D. 1
S.D. 2
C.D. 1




条令法案

人間の死体に関連して

ハワイ州議会により制定

セクション1. セクション327-38のハワイ改正法令は以下に書かれた通りに修正される。

§327-38 禁止;ペナルティ
(a)人間の死体を受け取る事の報酬として、何人も金銭やその他の価値のあるものの支払い、提供や約束をしないものとする。
(b)金銭やその他の価値のあるものの支払い、提供や約束の報酬として、何人も人間の死体を供給しないものとする。
(c)何人も人間の死体を商業目的で展示しないものとする;人間の死体の展示に対して以下のサブセクションには適用されないものとする:
 (1)死後80年以上経過したもの;
 (2)人間の歯や毛髪のみ;
 (3)通常の範囲での展示、又は葬儀施設や同様の葬儀や追悼式典において故人を見る事;
 (4)宗教崇拝の対象;
 (5)連邦、州や郡の機関、連邦や州法で認可された高等教育の公立・市立の施設、又は連邦、州や郡の保健研究に関する給付金を受けている個人関連が所有する教育や研究目的による展示物;
 (6)博物館施設の所有するもの;
[b](d)いかなる大学、病院や施設は、医学教育・研究目的を除き、以下の人体を用いないものとする。
[c](e)このセクションに違反する何人も [1000ドル] 5000ドル以下の罰金、又は1年以内の禁固、又は両方が課されるものとする。
(f) このセクションで用いられる:
 「人間の死体」の意味は:
 (1)循環や呼吸機能の停止が不可逆状態、又は脳幹を含む脳全体の全機能の停止が不可逆状態;許可された医学スタンダードに見合った死の判定がされたもの;そして
 (2)組織、器官その他の人体パートを含むプラスティネーション人体 --- 人体の水分と脂肪分をポリマーに入れ替えて腐敗しないように保存されたもの。
 「博物館施設」は以下に該当する公立・私立の非営利施設:
 (1)米国博物館協会認可、又は認可されたカレッジや大学の一部;
 (2)恒久的に教育や美学を第一目的として組織されているもの;
 (3)実体的な物件を所有し、それらの物件を手入れし、それらを定期ペースで一般展示するもの;

セクション 2. この条例はその発効日以前に確定した権利や責任、既に問われたペナルティ、既に開始した訴訟に影響しない。
セクション 3. 撤廃される法令文は鉤括弧と抹消線で示してある。新たな法令文は下線で示してある。
セクション 4. この条令は承認によて実施される。

[訳=岩谷] (原文:英語)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。
Hawaii State Legislature 2009 Regular Session. "GM735", Filed 6/12/2009; Report: Aug 06, 2009 at 3:01:16 AM.
Hawaii State Legislature. "HB28 HD1 SD2 CD1", Introduced: 1/21/2009; Report: Aug 06, 2009 at 3:03:23 AM.



ハワイのアラモアナセンターの『BODIES展』に列を作る見学客。(Around Hawaii) [B]
 タイトルでは「人体売買の禁止」となっていても[>>2]、条令本文では報酬の受け渡しを禁じておりリースもアウトになるため、大連鴻峰生物化技社からプレミア社にリースされている人体標本[>>3]をハワイに持ち込む事は困難になり、展示目的に遺体を使用する事への故人の同意の有無や、死体の出所の証明の有無を問わず一律に商業展示を禁止しているため、短くてシンプルながらもプレミア社など人体展開催者に抜け道を一切与えない徹底した取締りとなっている。

 しかし、1月23日の法案提出以降にハワイで報じられた記事を追ってみると、最初からここまでシンプルで強権的な法案ではなかったようで、むしろ当初はカリフォルニア州の法案と同様の内容だったものが、4ヶ月の審議で結果的にほぼ内容全体が差し替えられる形で決着しているようである。

 1月27日に下院衛生委員会の承認が出た時点では、展示する事に対する故人の同意が証明されなければ人体展は許可されない[>>4]もので、それを認可するのは州衛生局[>>5]という、死刑囚の死体の使用の疑惑を報じた昨年のABCニュース[>>6]や「プレミア社は死体の出所、死因、同意の有無を自力で確認出来ない」というニューヨーク州のクオモ検事総長の調査結果[>>7]を意識し、カリフォルニアの法案を下敷きにしたものになっていた。

 それが下院司法委員会 (2/10) と下院財政委員会 (3/4) の承認を得た時点にまで至って、州衛生局側が予算と対応体制を理由に難色を示し、この法案自体が禁止を目的とするものだと法案そのものを批判[>>8]したため、恐らく衛生局をその責任から外す事を条件に全ての商業展示を禁ずるという、どうも政治取引的な決着でこのような形の法令になったのではと思われる。


死刑囚使用の疑惑が払拭されない事が法制化の大きな理由


大連医科大の随鴻錦教授の元助手とされる人物から提供された、銃殺死体の取引現場の写真。(Laogai Research Foundation/ABC News) [C]
 アメリカで一番アジアに近い州でアジア系住民の多いハワイで、中国人死体展がハワイの華僑社会に与えたインパクトが大きかった事[>>9a]、それからペンシルバニア州の時と同様にハワイでも労改基金会の呉達弘代表、そしてカリフォルニアのフィオナ・マ議員が証言を提出するなど、中国国外の華僑によるアンチ中共キャンペーンが実を結んだような結果にも見えるが、それでも審議過程の可決プロセスを見ても殆どの審議で反対ゼロという、それがアジア系やアンチ中共のみならず圧倒的支持で通過した法案である事も一方では事実ではある。

 そして法案提出以来ハワイで報じられたメディア記事でも、その圧倒的支持の大きな理由として言及されているのがやはり、昨年ABCニュースが報じた死刑囚使用の疑惑、そしてプレミア・エキシビション社が死体の出所も死因も同意の意思の有無も把握しておらず、その証明の手段も持たず、そしてその提供元が中国公安局であるというアンドリュー・クオモ検事総長の調査結果であり、そして刑務所を管轄する中国公安局が「引き取り人がない」と表現するものは中国においては死刑囚を意味するものという呉弘達氏の指摘[>>10]辺りから提起された、「死刑囚闇取り引き」という人体展に常に付きまとう疑惑のインパクトの大きさがまず第一にある。

 法案HB28と29の審議に議会証言を提出したのは、ハワイ大学の学部長や教授など医学会の専門家から海洋生物研究基金の代表、そしてカリフォルニア州で人体展禁止法案を提出したフィオナ・マ議員と労改基金会の呉弘達代表などそうそうたるメンバー:

ジョン・コーボーイハワイアン・アイ基金代表
グレノン・ギンゴマンタ・パシフィック・リサーチ基金代表
スコット・ロザノフハワイ大学マノア校解剖学生化学生理学部学部長
マリタ・ネルソンジョン・バーンス医科大解剖学教授
姜鴻ハワイ大学マノア校地理学教授
フィオナ・マ (馬世雲)カリフォルニア州下院議員
ローレンス・ロステキサス医科大ヒューストン校神経解剖学教授
ジョン・ホワイトホノルル市民
呉弘達労改基金会代表
エンジェル柳原ハワイ大学マノア校神経生理学教授
Hawaii Legislature. "Session 2009 Testimony"

 ここでは「Testimony」(証言) と表現されているが、実際はそれぞれの審議会に提出された手紙やFax書面の事で、それら証言では、商業目的の人体展示への倫理的疑問、プレミア社の死刑囚使用の疑いのある中国からの不透明な人体入手、法輪功など中国での人権と臓器問題など、特に中国が入手経路である人体に対する疑問が提起されている。

 そして議会証言のうちグレノン・ギンゴ氏からは、中国人には「遺体を埋葬するのは無傷で」という文化的習慣があって、その理由が「死体に冒涜を加える事はその人物の来世の運勢に悪影響を及ぼす」であり[>>9b]、だから中国からそれほど大量の献体があるはずがないという、カリフォルニアのフィオナ・マ議員と同様の指摘がされているが、この法案の本質はやはり、世界全体の死刑執行数の過半数以上を行ない、死刑囚から臓器窃取を日常的に行なっている[>>11]一党独裁国家から大量の「引き取り人のない死体」が流出している事への大きな不信感という事だ。


 次回は、今年4月にパリの裁判所がプレミア社の人体展『Our Body展』のフランスでの展示の差し止め判決を出した件に関して扱う。





~人物~

マーカス・R・大城
ハワイ州議会下院議員、ハワイ州議会下院財政委員会委員長


2003年10月31日、ホノルルのクムカフア劇場で怪談劇を演じる大城議員 (Starbulletin) [D]
 この法案を提出したマーカス・R・大城議員は、ハワイ州議会下院第39地区代表で、ハワイ大学マノア校卒業後、オレゴン州のウィラメッテ大学法学院で1988年に博士号を取得した法律系弁護士で、専門分野は財産プラン、ヘルスケア、不動産など。これまでにホノルル市・郡のマネージメント・アナリスト、ハワイ消費者救済協会弁護士、そしてハワイ州検察局副官を務めた人物。

 大城議員は1959年ホノルル生まれの日系2世で、父親が沖縄県具志川市 (現・うるま市)、母親が那覇市首里の出身。2007年にオアフ島でホームステイ中に殺害された新潟県佐渡市の渡辺真澄さん (当時21) が行方不明だった時に、ハワイの日系人議員が中心になって捜査協力を行った「渡辺真澄さんを捜す会」に名を連ねるなど、現地の日系人協会、特に沖縄ソサエティに積極的に参加している方のようである。
 昨年2008年7月には普天間飛行場の運用停止を求めてハワイの米太平洋軍司令部から門前払いされた伊波洋一宜野湾市長と面会したりなど、沖縄の基地問題にも関心がある議員である。[>>12]







関連サイト

米ハワイ州で人体展禁止が法制化 (風のまにまに(by ironsand) 2009.7.30)
人体不思議展の標本は、中国提供の死刑囚の遺体だった?本物死体の展示は禁止に―米ハワイ (Record China 2009.7.15)




関連動画

[マイハワイ] Bodies人体展アラモアナセンター (1'10")
MyHawaiiWebMagazine. 『[マイハワイ] Bodies人体展アラモアナセンター』. YouTube, 2008年06月13日.

ハワイでもお祓いみたいな事をやっている。




関連記事

1月27日に下院衛生委員会の承認が出た時点での報道



人体と人体パーツの展示を制限する法案
ピーター・ボイラン 
ホノルル・アドバータイザー 2009年1月28日



STAR-BULLETIN / 2008
各地をまわって開催されている『Bodies ...The Exhibition』で保存処理された死体がポーズを取った状態で展示され、人体構造の働きを見せる。

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下院法案

HB28:人間の死体に関して
人間の死体の売買禁止を追加。用語「人間の死体」の定義にプラスティネーション処理された人体と人体パーツを含める。人間の死体の売買への罰金を最大5000ドルまで引き上げる。

HB29:人間の死体に関して
州衛生局の許可のない人間の死体の商業展示を禁止する。
 州議会での提案は人間の死体の展示を禁止するものになる。プロモーターが死体がどこから来たかを証明し、展示への故人の同意を提示出来ない限りは。

 この法案はマーカス大城議員 (D-39、ワヒアワ) が提出した2つのうちの一つで、人体の販売や展示に関するもの。これは保存された死体や人体パーツを全米や国外で展示してまわっている『BODIES展』によって高まった懸念から出て来たものである。

 もともとは中国の公安局から受け取った中国の国民や居住者の死体を展示するこの展示会は、7月14日からノードストロムの近くのアラモアナ・センターで行なわれた7ヶ月間のホノルル展を最近終えたばかりである。この展示はアトランタのプレミア・エキシビション社が創設し、同社は標本に関して、WHO認可の医大病院の大連医科大から来た引き取り人のない死体であると主張している。

 大城議員は「ハワイが全国で、この手の人類と人体に対する冒涜と悪用行為を禁止する最初の州になる事を確実にしたかった」と述べた。


 この展示会が開かれる以前には、展示には州の認可を必要としなかったが、大城議員の法案は衛生局が人体の出所と故人の同意を確認して認可を発行する事を義務とするものである。>>脚註5に戻る]

 州衛生局のスーザン・ジャクソン副代表は、衛生局はこの法案の意図するものを尊重するとしながら、それは州通商消費局が行なうべき業務であるとの理由で法案を支持しなかった。

 州下院衛生委員会の公聴会の後ジャクソン氏は「私達はこの件をあくまでも事業規制問題として見ており、これらの展示会が公衆衛生と安全を脅かすものではない」と述べた。


 プレミア・エキシビション社は昨年、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ検事総長から中国の死刑囚を展示した疑いで調査を受け法的合意に至っている。

 この合意において、プレミア社は人体の死因と出所、遺体展示に対する故人の同意を示す書類を入手する事に同意をしていた。

 それ以前に入手した引き取り人のない死体に関しては、同社は「この展示会はもともと中国の公安局から受け取った中国市民か居住者の死体を展示している。中国公安局は中国の刑務所から死体を受け取った可能性がある。展示されている死体が中国の刑務所に投獄された人物でない事を自力で確認出来ない」との但し書きを表示しなければならない。

 この法的合意はニューヨーク州の外では適用されない。


 ハワイ大学マノア校の地理学の姜鴻教授は、中国政府が人体の出所に関して嘘をついていると思われるため、展示会には行かなかったという。
 彼女は「中国人の家族が身内の肉体を金のために売るとは考えられない。それは文化的に禁じられている」と語った。
 姜鴻氏は展示されている人体は中国の囚人であると信じている。
 「人体の出所が何か不明確なものがある限り差し止めを支持する。中国政府からいかなるコメントがあっても信用しない。展示会で私達が見る人体と中国での囚人迫害に接点があると考えると、それは大きな懸念である」と述べた。


 医学関係者は大城議員の法案を支持するため、人体展は教育目的ではなく、引き取り人のない人体の使用への不審を提起する証言を提出した。

 ハワイ大学ジョン・バーンズ医大解剖学部ののスコット・ロザノフ学部長は「インフォームドコンセントすらも人体の公開展示を正当化はしない。このプログラムに教育的意図を少しも感じない。私の見たところでは、展示の開発過程と展示会そのものに社会的価値の値打ちに欠けている。この展示会の人体が中国の囚人であった事はほぼ間違いなく、人体の調達と展示への同意があった証拠が全くない」と述べた。

 また昨日には、大城議員が引き取り人のない死体の売買に罰則を設ける法案を提出した。 「私には、衛生局が引き取り人のない死体に関する法令をどのように実施するかに幾らか心配がある。それらが適切に扱われて保護される事を確実にしたいと思う」と述べた。

[訳=岩谷] (原文:英語) (写真は元記事付録)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。
Boyan, Peter. "Hawaii legislator seeks new laws in response to 'Bodies' exhibit". Honolulu Advertiser, January 28, 2009. [魚拓]




人体と人体パーツの展示を制限する法案
AP通信 2009年1月28日 1:30 HST

 ハワイ州議員達の判断は、人体はモールに展示されるにはふさわしくないという事だ。


STAR-BULLETIN / 2008
ノードストロムの隣のアラモアナ・センターで開催されていた『BODIES展』の頭部血管展示の頭蓋骨は多方向から見られる。
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 この法案は『BODIES展』のような人体と人体パーツの公開展示がハワイで再び行なわれる事を防止するものである。

 ハワイ大学地理学の姜鴻教授は議会で「これらの死体が中国の囚人であるという疑いがあり、それは私にとって重い懸念である。彼等の身内や知人が親しい人の死体を販売したいと思う筈がないと思う」と証言した。

 昨日下院衛生委員会で承認された案は、故人が展示される事を知ってそれに同意した事を、こういう展示会が証明する事を義務とし、それが満たされない限りプロモーターは州内での営業許可が下りないというものである。>>脚註4に戻る]

 この事業を請け負っているアトランタのプレミア・エキシビション社に、昨日コメントを求めたが電話やメールでの返信はなかった。

 マークス・大城議員 (民主党、ワヒアワーポアモホ) によれば、1月18日までハワイの最大ショッピングモールのアラモアナ・センターで行なわれた『BODIES展』への住民の批判の声が上がった事を受けてこの法令の話が出て来たという。

 法案を提出した大城議員は「文化的宗教的理由の両方で、私達は故人の肉体を最大の敬意を持って扱わなければならず、これは基本的な事であり、それは人格を持っていた人達の身体である」と述べた。

 昨年の夏、ハワイ州に人体展が来る前に、この企業は人体が中国の死刑囚のものでなく、医療検査スタッフが肉体的損傷やトラウマの証拠は見付けられないと保証している。

 しかし姜鴻氏は、その企業が人体の出所を確認出来ないため、それらの人体が抑圧された法輪功学習者の懸念があると反論する。

 この法案は死体が80歳以上か、歯か毛髪のみ、葬儀や宗教儀式に関連したもの、博物館の所有物であるケースを除いて、許可のない人体展示を禁止するものである。

[訳=岩谷] (原文:英語) (写真は元記事付録)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。
Associated Press. "Bill would restrict display of human bodies, parts". Star-Bulletin, 01:30 a.m. HST, Jan 28, 2009. [魚拓]




死体の公開展示使用への制限が制定へ
スターブルティン 2009年1月29日 1:30 HST

 アラモアナ・センターでの、中国から来た皮膚のないミイラ人体のバーナム&ベイリー・サーカス風の展示会は、先週末に7ヶ月に及ぶ開催の幕を閉じたが、次回に開催される時は精査を受けるべきである。マーカス大城議員が提出し今週下院で承認された法案成立が、死者への敬意の保証に必要なものである。

 この法令は、人間の毛髪や歯や、葬儀や文化遺物での人体展示を妨げるものではない。

 生きているようなポーズを取る死体が集められた『BODIES展』に欧米全体で1000万人を越す人々が足を運んだ。アトランタのプレミア・エキシビション社が運営するこの展示会はアラモアナ展を終了、先週ダブリンで開始され、アイルランド人権委員会の精査を直ちに引き起こした。

 死体保存は液体成分を化学ポリマーやプラスチックに置き換える方法であり、それはドイツの科学者でプレミア社のライバルであるグンター・フォン・ハーゲンス氏が開発したものである。過去10年でプレミア社は死体展示で2億ドルを上回る収益を上げている。同社は3年前に中国からの安定した人体供給に対して2500万ドルの支払いに合意している。


 しかしこれらの人体は誰なのか? プレミア社は、それらが中国公安局が大連医科大に提供した引き取り人のない身元不明の死体であるとの主張を固持しているが、大学のスポークスマンはそれらの人体の出所に関しては知らないと主張している。

 ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ検事総長は、2006年のマンハッタン展の調査の後、「厳然たる事実は、中国で拷問を受け処刑された可能性のある人体の展示でプレミア・エキシビション社が利益を得ているという事である」と結論を出し、「(プレミア社が) 死体の死因や出所を提示出来ない始末である」と述べた。

 ニューヨーク州との法的合意において、プレミア社は「それぞれの人体は人体パーツの出所と、死因、そして遺体使用に対する故人の同意を示す書類を入手する」事に同意している。

 この法的合意はまた、プレミア社が、ニューヨーク展における人体と人体パーツが「拷問や処刑を受けた中国の囚人のものでない」事を確認出来ないとウェブサイトと広報において明記する事を義務とするものである。この日までにプレミア社のウェブサイトは「プレミア・エキシビション社は標本の出所を自力で保証する事が出来ない」との声明を掲載した。


 昨年の北京五輪での女性体操の金メダルを獲得した若い女性に関する論争で、中国政府が提供した出生証明書のように、書類が存在したとしてもそれすらの信憑性は疑わしい。
 ダブリンの欧州議会メンバーのガイ・ミッチェル氏は「中国での事実とは政府が事実とした事である」と述べた。

[訳=岩谷] (原文:英語) (写真は元記事付録)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。
Star Bulletin. "Enact restrictions on cadavers shown in public exhibits", 01:30 a.m. HST, Jan 29, 2009. [魚拓]




州議会は「人体展」禁止を画策
死体展示を防ぐための下院法案29
リン・ナカガワ
ハート・オブ・ハワイ 2009年2月7日 15:32



『BODIES展』は人体展示の倫理的見地に関する論争を生んだ。Photo: online
 下院法案29は、衛生局の許可のない人間の死体の商業展示を禁止するためのものである。ワヒアワ地区の民主党員のマーカス大城議員が法案を提出した。この立法処置はノドストロムの近くのアラモアナセンターで人間の死体や人体パーツを展示した『BODIES展』を受けてのものである。この展示は2008年6月から今年の1月18日まで開催されており、それは全米や世界規模で展開されている。

 この展示ではもともと中国の公安局から受け取った中国市民の死体を展示している。この展示会を運営するアトランタのプレミア・エキシビション社は人体の合法性という立場を固持し、標本はWHO認可の医大病院の大連医科大から来た引き取り人のない死体であると主張している。しかし下院法案29は死体展示を合法化するために故人による同意を義務とするものである。これによって『BODIES展』はハワイで禁止となる見込みである。

 ハワイ大学マノア校の地理学教授の姜鴻氏はホノルル・アドバタイザーとスターブルティンに対し、死体は死刑囚のもので中国政府が嘘をついている可能性があると述べた。

 この展示が開催された時点のハワイ州では許可が必要とされなかったため、大城議員が行動を起こしたのだという。大城議員は「ハワイが全国で、この手の人類と人体に対する冒涜と悪用行為を禁止する最初の州になる事を確実にしたかった」と述べた。この法案は死体が80歳以上か、歯か毛髪のみ、葬儀や宗教儀式に関連したもの、博物館の所有物であるケースを除いて、許可のない人体展示を禁止するものである。

 法案の反対者側は、それが死後の人権において正しい方向の方法であると信じており、金と時間の無駄であると呼びかけている。

 2009年2月10日 (火) に、この修正議案は賛成14、反対0、棄権2で可決された。

[訳=岩谷] (原文:英語) (写真は元記事付録)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。
Nakazawa, Lynn. "Legislature eyes 'Bodies' ban". Heart of Hawaii, Feb 7, 2009, 3:32 PM. [魚拓]


下院司法委員会 (2/10) と下院財政委員会 (3/4) の承認を得た時点での報道


論議を呼んだ人体展を規制する法律が、下院委員会の3つのハードルを通過
展示に許可を出す事になる衛生局のみが法案に反対
ジェレミアー・リヴェラ
ハワイレポーター 2009年3月5日 9:11

 人間の死体の商業展示を取り締まる事になる下院法案28と29は、火曜日に財政委員会を通過した。この法案は最近ホノルルのアラモアナ・センターで開催された問題の『BODIES展』が拍車をかけたものであり、早ければ来週のクロスオーバーで上院に通過する可能性がある。

 下院財政委員長のマーカス R. 大城議員 (民主39、ワヒアワ、ウィットモアビレッジ、ポアモホ) が提出したこの法案は、3つの委員会の通過に殆ど反対はなかった。


 州衛生局のスーザン・ジャクソン副局長は局を代表して反対を提出した。法令が通過した場合は衛生局が展示への許可の担当する事になるからだ。
 ジャクソン氏は法案29に関して「書いた通り、衛生局はこの方策を支持しない。この法令はこのような展示を禁止するのを正しい事だとしているように見える」

 現状では法案29には認可プロセスを設立する財政充当がなく、州局が削減を求められている時に新たな機能を受け入れる事に対して幹部が懸念を持っているとの事だ。

 以前に提出された衛生局員の証言では、この方策が目指すものを尊重するとしながらも、この手の展示が公衆衛生と安全を脅かすものではないと主張されていた。>>脚註8に戻る]


 社会的関心はその大部分において、展示されている人体の出所に関する論争が中心になっている。展示に人体を供給しているアトランタのプレミア・エキシビション社のために、中国の引き取り人のない囚人が営利目的に売買されているとの主張がある。

 しかしそのような訴えは立証されていない。プレミア社がそれらの標本の出所を確認する中国政府発行の書類を提供出来るとここ数年メディアでは報じられていた。しかし識者からは中国政府が信用出来ないと批判された。

 ハワイ大学マノア校の姜鴻教授は「人々の権利を奪い彼等の肉体を暴行する共産党が支配する政府である。彼等の書類を信用する事は人命に対する無責任な行動である」と書いた。

 またプレミア社の代理人が展示されている故人の身元を把握しておらず、営利目的に遺体が使用される事への同意書が提示されていない事を注視すべきであるとの批判もある。


 労改基金会の呉弘達代表はその証言で「プレミア社の業務への私達の分析は、展示されている人体の一部が処刑された中国の囚人である際立った可能性を示している」と書いている。

 来世に関する文化的主義のため、これらの告発は中国人コミュニティに衝撃を与えた。ハルアロアのグレノン・T・ギンゴ氏の証言によれば、肉体への冒涜は来世にわたってその人物の運勢に悪影響を与えると多くの中国人が信じているそうだ。

 呉氏は声明に加えて、カナダの人権問題弁護士のデビッド・メイタス氏とカナダの元国務長官デビッド・キルグール氏による「血まみれの収穫」と呼ばれる中国政府に関する独自調査に言及した。

 彼等の調査では、囚人からの臓器窃取と営利目的販売における中国政府の役割を確認したとされている。そのような主張は1980年代からされており「そこに繋がりがなく出所と適切な同意が確認出来るまで、私達は展示と販売用の人体を受け入れる事は出来ない。人間の命の価値と尊厳はその他のどの主張にも切り札を出す。それはあくまでも教育的・学術的であるべきである」と呉氏は締めくくっている。


 下院法案29は、衛生局の許可のない人間の死体の展示を禁止するもので、法案28は人間の死体の売買を禁止するものであり、実用的定義の変更とより高いペナルティを実行するものである。

 下院衛生司法委員会によって可決された両法案は、火曜日に財政委員会を17-0で通過した。

[訳=岩谷] (原文:英語) (写真は元記事付録)
*本翻訳の転載には許可を必要としないが必ず出典元を明記の事。





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脚註:(脚註を見る)



写真:

  1. ^ Hawaii House Blog. "Rep. Marcus Oshiro - New Vice Chair of CSG West", August 22, 2008.
  2. ^. Wong, Kiman"Bodies". Around Hawaii, September 1, 2008.
  3. ^ ABC News Store. "20/20: Human Bodies On Display -- Where Did They Come From?/Plane Crash Survivor: 2/15/08". [魚拓]
  4. ^ starbulletin.com. "A life of spooky tales inspires actor", Oct 31, 2003.

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