硫黄島より南に150km、ミクロネシア連邦のトラック諸島に1944年2月17日のトラック諸島空爆で水深80mの海底に沈没した、旧日本海軍特設巡洋艦の「愛国丸」が、欧米などのダイバーのための観光スポットとなり、現地のガイドがわざわざ日本兵の遺骨を上甲板に並べたり、宣伝に遺骨の写真が使われたりなど観光の見世物になっているというショッキングな事件が最近話題になっていますが、この件に関して私の知人のしきしま氏が昨日19日に駐日ミクロネシア大使館に電話で問い合わせを行ない、それに関して大使館の見解を頂いたので紹介させて頂きます。
産經新聞 2007/09/15 22:07
![]() 水深45メートルの海底に眠る愛国丸の上甲板には、観光用のプレートと日本兵の遺骨が置かれていた=井上達昭さん撮影 |
連合艦隊泊地であったトラック環礁は昭和19年2月17、18日の両日にわたってアメリカ軍の空襲を受け、艦船43隻が沈められた。戦後、日本政府によって遺骨の一部は引き揚げられたが、大半は船の中に眠ったままだ。
戦没者慰霊と遺骨収集に関心を持つ国際協力機構の井上達昭さん(41)が休暇を取って現地に入ったのは8月末。
「私の関心は愛国丸のご遺骨の状態を確認することでした。ガイドに案内されてたどり着いた愛国丸の上甲板には、船の名前を記したプレートが置かれ、その前にご遺骨が並べられていました」
現地で情報を収集すると、ガイドたちがいくつかの沈船に自分だけの遺骨の隠し場所をつくっていることがわかった。また、ホテルのポスターや沈船観光を手配する旅行会社のホームページには、必ずといってよいほど遺骨の写真が使われていた。
「ガイドたちは欧米のダイバーをそこに案内し、多めのチップを得ているそうです。さすがに日本人とわかるとそこに誘うことはないようですが」
沈船を重要な観光資源と考え、遺骨の引き揚げを“墓あばき”と感じるミクロネシア側は、遺骨の持ち出しを固く禁じている。そのため、日本政府が要請し、相手の承認を得ないかぎり、見せ物となっている遺骨に手が出せないのが現状だ。
「トラック環礁の遺骨の収集については、厚生労働省が終結を宣言しています。予算がつかないというのなら、ボランティアのダイバーを動員するなど、政府には何らかのアクションを起こしてほしい」と、井上さんは話す。そして、自身のできることとして、世界最大のダイバー養成機関「PADI」の機関紙に戦没者と遺族の尊厳を踏みにじる猟奇的なダイバーの趣味を告発する手記を投稿する予定という。
「女ひとり玉砕の島を行く」の著者であるジャーナリストの笹幸恵さん(32)はこう話す。「遺骨を見せ物にするなんて、ダイバーの良識以前に、人間としての良識の問題。その観点から、遺骨の引き揚げを“墓あばき”と感じるミクロネシア側に、日本政府は粘り強く働きかけて、一刻も早く見せ物にされているご遺骨を引き揚げるべきです」
[魚拓]
これは酷いですね・・・
ピラミッドのミイラや遺跡発掘とかならまだしも、まだ同世代の方が存命の、直接の遺族が多数日本にいる遺骨を観光の目玉にして見世物にしているとは、いくら文化の違いがあったとしても、一体世界のどこにたった半世紀前の人間の遺体を観光の呼び物にしてる国があるかを考えれば、これはおよそ尋常とは言えません。
イギリスのダイバー向け観光サイトには愛国丸に関しては「素晴らしいダイビングスポット。第4船倉まで真っすぐ潜水してデッキと船底の間まで入ると、そこには多数の人骨が散乱し、懐中電灯の灯りの中でシュールな世界である」と書かれており、ただの「ミステリー沈没船探検アドベンチャー」ものとして楽しげに書かれています。
以下しきしま氏の日記より
10数年前に日本で臓器移植法案の話が出た当時、なぜ欧米では提供者が出るのに日本では抵抗があるかの議論が出て来たのはまだ記憶に新しいですが、欧米の価値観では肉体は「器」であって、だから遺体は「物」に過ぎないと言う、日本とは決定的に感覚が違う面があるようですが、ひょっとするとだから欧米の観光客からこの「遺骨観光」に特にクレームが来ないのかもしれません。ミクロネシアの文化に関しては全く分かりませんが、一方欧米でも「死者の尊厳」の意識は高いので、その対象における「肉体」のウェイトの違いによる温度差はあるのかもしれません。
しかし、ミクロネシア大使館の見解や、「墓あばき」を法律で禁じてる辺りを見る限りでは、「死者を弔う」と言う人類共通の概念はミクロネシアも例外ではない筈ですが、産經新聞にあるように、観光客向けに「遺骨をきれいに並べてる」にも関わらず、「墓あばきだから遺骨は持ち出せない」と言うのであれば、遺骨を並べたり、観光ダイバーを船の中にまで立ち入らせる時点で既に「墓あばき」であり、そもそもこれは詭弁な物言いに聞こえます。
しきしまさんによれば、一昨日もミクロネシア大使館は対策に追われて朝から会議などで大忙しの様子ですが、それでもこの見解を見れば、やはり大金を払ってダイビングの許可を得るなど、太平洋の諸島国家としては観光収入が欲しい本音が見え隠れはしています。まあでも全体的な印象ではイギリスの観光サイトのタチの悪さが際立ってるので、やはり客あっての商売なのでしょう。
ちなみに産經新聞の写真の説明では、愛国丸の甲板にあるプレートは観光用と書いてありますが、これは実際には1994年と2001年にミクロネシア人、日本人、アメリカ人ダイバーによって設置された慰霊碑です。
および『御遺骨事件 ミクロネシア連邦』(2007.9.20)より
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