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中国がハワイの領有権を主張 クリントン発言のソース


 クリントン国務長官が一昨日の講演で、最近の会談で中国側が「ハワイの領有権を主張出来る」と発言した事を明らかにしたという、またもや中国らしい仰天ニュースが産経新聞に報じられている。

 これは文脈的には11月20日のカンボジアでの第7回東アジアサミットで行なわれたと見られる米中高官の会談でのやり取りだと思われる。
 クリントン長官によれば、中国側が「ハワイの主張をする事も出来る」と発言した事に対し、長官は「やってみて下さい。我々は仲裁機関で領有権を証明する。これこそあなた方に求める対応だ」と応じたという。

 その質疑応答においてクリントン長官は、国際社会において国際ルールを守るように中国に関して働きかけている事、南シナ海問題に米国は直接タッチしないがASEAN諸国の努力を支持する事、(太平洋) 地域の安全を脅かす領有権主張は米国としては容認出来ない事、そしてそのためには立ち上がって声を上げていかなければならないと話している。

 クリントン長官はまた、中国が可能な限り最大限の主張をする俺様論理の国である事にも言及し、中国が古い領土問題を持ち出す動機は資源問題だと指摘している。

 これは11月29日にワシントンDCのニュージアムで行なわれたフォーラム『変容する傾向2013』(Transformational Trends) におけるヒラリー・クリントン国務長官の30分余りのスピーチの最後の質疑応答で言及されたものである。
 質問を行なったのはアジア太平洋安全保障プログラムの新アメリカ安全保障センターの研究員で、中国が国連海洋法条約を異なる解釈をし平和的でない軍事活動を行なっている事に対して米国が何を行なっているのかの質問に対する答えとして述べられている。

 一方、スピーチ全体の内容は昨今のイスラエルやシリア問題、エネルギー革命、新興国との経済体制、そして対テロ戦などで、幅広いテーマについて語られている。

11月29日、ワシントンDCでスピーチを行なうヒラリー・クリントン国務長官。(Foreign Policy)





 以下はクリントン長官が中国の問題に言及した質疑応答部分の訳。産経新聞で言及されていた部分は赤文字で表記。

海外政策グループの『変容する傾向2013』での演説より

演説
ヒラリー・ロドハム・クリントン
国務長官
ニュージアム
ワシントンDC
2012年11月29日

(抜粋)

質問:
 アジア太平洋安全保障プログラムの新アメリカ安全保障センターのオリアーナ・スカイラー・マストロです。私が中国に関する質問をするのは驚く事ではないでしょう。

 長官は国連海洋法条約 (UNCLOS) に言及したが、批准が米国により多くのレバレッジを与えるという点には同意する。
 しかしご存知のように、中国はUNCLOSへの異なる解釈をしており、特に海軍や時には民間船舶の航行において平和的と言えない活動を行っているが、それは同条約に保護はされないと思われる。
 私は二国間の緊張の増加を伴う最近のインペッカブル事件やEP-3は害を及ぼすかもしれないと感じている。

 私の質問は:中国が経済的・外交的に米国の存在を不安定要素と考えているというのが、より包括的な見方であると私は思う。中国首脳との対話では、そうではないと彼等に確信させるために何を行なっているのか? 自分を説得力があると感じるのか? もしそうでないなら主な障害は何なのか?


クリントン:
 その質問に答えるには精神分析の専門家が必要かもしれない。なぜなら米国は大西洋のパワーであるように歴史的に150年以上も太平洋のパワーであり、太平洋は両国にとっても実際全ての国にとっても十分に大きいものだと、私達は可能な限り明確にして来た事は確かだからだ。
 私達はその [太平洋] 地域に多くの真面目な関係の条約同盟国があり、私達は貿易パートナーやその他の商業関係を持っている。
 だからこそ私達はそこにいるのであり、それは現在も未来も続くものである。そこにいるという事は、責任あるステイクホルダー (利害関係者・大株主) である事は何を意味するかを中国や同地域内の他国と共有するという、私達は自分達自身の視野を持っている事を意味し、あなたが言及している全ての地域に関して中国もそうであると願っている。

 南シナ海での中国の行動規範に対処するASEAN諸国の努力は、これは私達が確実に支持するものである。
 私達は関わってなく何もしてなく、それは彼等が自分達でやる事だ。
 しかし21世紀において、平和と安全保障を維持しようとするなら、不安定さ、緊張や潜在的衝突を招くいかなる領土主張も容認は出来ないためそれは重要な事である。

 だから私達は中国側に説明して来た。
 彼等の回答は「我々が主張するものは我々のものだ」である。
 私達の回答は「だから私達はプロセスとメカニズムを持っており、あなた方の主張は他国も主張している事だ」である。
 私達が抱えている問題は南シナ海だけでなく中国と日本の間の問題がある東シナ海もそうである。なぜなら米国はグローバルパワーであり、私達は同じ事を北極や地中海でも見る事が出来、つまりこれは南シナ海だけの問題ではない。

 確かな事は、中国は彼等が出来る限りの広範囲の主張をするという事だ。
 しかし、領土問題から知的所有権問題まで全てにおいて安定と平和と繁栄を維持するためのルールが必要なら、私達はこれらの幅広い教義を支持するために立ち上がって声を上げなければならない。

 また私達がいかなる領土も要求せず、いかなる領土問題のどちらにも付かない事を十分に明確にして来た。

 だからこれは部分的に、私達が取り組み続けているこれらの長いプロセスのうちの一つである。
 そして東アジアサミットで、カンボジアがサミット終了時にこれらの問題に言及しないコミュニケ (声明) を出した時に、それがフィリピン、シンガポール、ベトナムその他の国に遮られたのは良い兆候である。なぜならこれらの国は自国のために立ち上がる権利があるからだ。
 そしてそれがこれらの問題を解決するための行動規範とプロセスを私達が見たい理由である。

 だからこれは進行中の問題だと私は考える。問題を掲げ続ける事に近道はない。
 この事に関する私達の長い議論の一つで、中国側の対談者の一人が言った:
 「我々はハワイ (の領有権) を主張することもできる」
 私は「やってみてください。我々は仲裁機関で領有権を証明する。これこそあなた方に求める対応だ」 と言った。

 だからこれは皆にとっての学習プロセスだと私は思う。どうしてそれらの古い領土問題が今になって表に出て来るのか?
 なぜならそれは資源問題であり、彼等は採掘をしてそこに何があるかを見たいからである。そして彼等は実質的な利益を得られると考えている。
 しかしそれは正当的な方法で行なわれなければならない。そしてそれが私が国連海洋条約への加盟を強く提唱している理由であり、それはこれらのケースに対する協力関係を強化するからだ。

(以下略)

Remarks at the Foreign Policy Group's "Transformational Trends 2013" Forum. U.S> Department of Foreign State, November 29, 2012.



2003年1月以降に「未来の中国地図」として中国のネットに出回り出したネチズン作と見られる地図。[この地図に関する解説]
 中国の領有権の主張として代表的なのは、歴史上のどこかでシナ王朝の領土となった事のある地域、現在支配している諸民族の歴史上の最大領地、歴史上のどこかでシナ王朝に朝貢した事のある周辺民族の領土という、現代の国際常識における国家と領土の概念とはかけ離れた中華思想によるものである。

 そして更に、シナ王朝の歴史文献などで古代より存在が知られていたという地域も潜在的中国領として認識するという、つまり「イギリス人が発見する以前よりシナ大陸ではオーストラリア大陸の存在は知られていたからオーストラリアは中国領である」といった主張も中国のネット言論辺りでは散見される論法であるが、尖閣諸島への主張はこういった種類のものである。

 このハワイに関しては恐らく、「アメリカが統治する以前はハワイには王朝があり、ハワイ王朝とシナ王朝の間に貿易関係があったから中国領である」といった訳の分らない主張と思われるが、こういった論法も中華思想的には筋が通るのだろう。
 中国が国内向けには沖縄・奄美の領有権を主張している論拠も、琉球王朝が明朝や清朝に朝貢した事があるから中国領だという主張である。

 いずれにしても、アメリカ側は中華独特の領土観だけでなく、最大限を主張するという中国のジャイアニズムに関しても認識しているようだが、これまでも数十年にわたって散々産業・軍事スパイを中国にやられているアメリカは中国の本質は十分に理解しているようである。





関連記事:
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関連エントリー:
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コメント

足跡帳でのお返事ありがとうございました。
既にご存知の情報だったんですね。失礼しました。

「我々が主張するものは我々のものだ」…まさに中華思想。
それにしても、アメリカの国務長官に「ハワイの領有権を主張することもできる」と言うとは…
それだけ大国になったと考えているんでしょうか。

  • 2012/12/01(土) 16:31:00 |
  • URL |
  • かつらぎ #NL852uQM
  • [ 編集]

かつらぎさん

いえ、署名の周知活動ご苦労様です。ただ現実問題生活必需品でなくなっている捕鯨問題の性格上、数でアプローチする署名は効果の高い方法とは言い難い状況ではありますので、難しいところではあります。

中国の場合は、歴史的に国土の広さ(勢力範囲)が国力を表すという価値観を持っている国ですが、そういった19世紀の帝国主義的価値観を未だに持っている訳で、その「強い中国」が国民的願望であってそれを内外に示す事が求心力に繋がるという、常に虚勢を張っていないと内部崩壊する危険のある国ですので、ある意味強迫観念と自己呪縛なんですよねあれは。^^;

それにしても歴史的な中華思想が現代の共産党のスローガンである「56の民族の団結」に上手くアレンジされているので、彼等が周辺民族は全て本来は中国の一員と考えるのは政治的な要素もありますね。

  • 2012/12/01(土) 21:46:01 |
  • URL |
  • 岩谷文太 #gJtHMeAM
  • [ 編集]

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