
日本鯨類研究所と共同船舶株式会社、調査船団の船長らによるシー・シェパードおよびポール・ワトソンに対する妨害差し止め請求裁判に関して、本日 (米国時間17日) 控訴裁判所 (高等裁判所) がシーシェパードが公海上において日本の調査捕鯨船舶へのの500ヤード (457.2m) 以内への接近を禁じる仮差止命令を出した。
この決定が公表されたのは日本時間の本日午前11:00前後と見られる。[>>1]
この処分は、シーシェパードおよびその協力者が公海上において、日本の調査捕鯨に関わる全ての船舶に対する物理的攻撃や安全航行を危険に晒す行為を禁じるとしたうえで、500ヤード以内の接近を禁じるとしている。
この仮差し止めは控訴裁判所が公式に判断を下すまで有効とされる。
この訴えは2011年12月9日にシーシェパードの本部のある米国ワシントン州の連邦地方裁判所に対してシーシェパードの妨害船の調査捕鯨船舶に対する妨害行為や接近を禁じる仮差し止めを求めて起こされたものである。
それに対し、今年2月17日に同地裁は、1) 妨害差し止めを行なえば捕鯨が継続される、2) シーシェパードによる深刻な被害は起きていない、3) 原告が豪州裁判所命令に違反しているとして訴えを却下したため、原告側は4月11日に米国第9巡回控訴裁判所に対し、1) 調査捕鯨の是非は裁判の争点ではない、2) 深刻な被害はいつでも起こりうる、3) 日本はオーストラリアの南極大陸領有権を認めていないとして上訴していた。
そして今年10月9日の法廷での37分の録音では[>>2]、裁判官は、1) 人間への暴力と鯨への暴力の公共性を考える必要がある、2) シーシェパードはスクリューにロープを絡ませるデモまで行なっている、3) オーストラリアの南極海の領海主張と「鯨サンクチュアリ」に関して米国は認めていないとし、日本側の主張を概ね受け入れていた。
以下、本日公表された米国控訴裁判所の仮差し止めの内容。原告に「個人」として名を連ねている小川知之氏は調査母船「日新丸」の船長、三浦敏行氏は第三勇新丸の船長である。
提出済
2012年12月17日
モリー・C・ドワイヤー書記官
米国控訴裁判所 発表用 |
日本鯨類研究所(日本の研究財団)
共同船舶(日本企業) 小川知之(個人) 三浦敏行(個人) 原告 - 上訴人
v. シーシェパード保護協会 (オレゴン州の非営利法人) ポール・ワトソン(個人) 被告 - 被上訴人
No. 12-35266 D.C. No. 2:11-cv-020430RAJ 命令 |
リチャード・A・ジョーンズ(地裁判事主宰) 2012年10月9日に主張・提出 ワシントン州シアトル 裁判長:アレックス・コジンスキー、巡回区裁判官:ワラス・タシマ、M・スミス page 2
被告のシーシェパード保護協会とポール・ワトソン、そして彼等と協力行動するいかなる種類の当事者 (集合的に「被告」とする) に対し、南極海において原告の日本鯨類研究所、共同船舶会社、小川知之氏、三浦敏行氏の従事するいかなる船舶、又は同様のいかなる船舶上のいかなる人物 (集合的に「原告」とする) への物理的攻撃、又はそのようないかなる船舶の安全航行を危険に晒すと見られる航行方法を禁じる。 いかなる場合においても、被告が公海上を航行する際に、被告は500ヤード [457m] よりも原告に接近してはならない。 この差止命令は米国連邦上訴手続規則第8条と米国連邦民事訴訟規則第62条 (g) に従って布告され、私達がこの訴えの本案に関する見解を出すまでの間有効とする。 "For publication". United States Court of Appeals for the Ninth Circuit, Dec 17, 2012. (PDF)
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シーシェパードは裁判所命令に従わない意向
今回シーシェパードの反応は早く、裁判所の公表以前の本日午前7:46には声明を出しているが、「ワトソン船長のコメンタリー」と題しながら通常のスタッフが書いた風の「ワトソン船長は語った」という表現になっているなど、よほど慌てたのか設定がおかしくなっている。
ここではどうして米国の裁判所がオランダやオーストラリア船籍の船と多国籍チームに仮差し止め命令を出せるのかから始まり、オーストラリアの南極大陸領有権主張を前提とした同国裁判所の日本の調査捕鯨操業停止命令を引き合いに出すなど、米国の裁判所の決定には従う義務はないという主旨の事を述べている。
しかし米国に本部を置くシーシェパードは同国で税控除のNPO法人登録をしているなど日本に対する豪州裁判所のケースとは異なり、米国の司法に従わないという事は米国での資格や権利を放棄する事に繋がりかねない。
通常ワトソンの声明の目的の大部分は支持者向けのメッセージと日本に対する牽制であるが、キャンペーンでのメンバーの士気が盛り下がらないために詭弁を使いながら強気発言をするというのはこれはいつもの通りである。
JAPANESE WHALERS FIRE THEIR FIRST SHOT OF THE SEASON – AT SEA SHEPHERD |
2012年12月17日 (日本時間18日7:46)
日本の捕鯨者がシーシェパードに最初の銃弾を撃つ ポール・ワトソン船長のコメンタリー 日本の捕鯨船団は戦闘態勢にあるようだ。 彼等は本日、米国第9地方裁判所のシーシェパードとポール・ワトソンへの命令によって開始の銃弾を撃った。 2012年2月にシアトルのリチャード・ジョーンズ裁判官によって仮差し止め命令が却下された事実にもかかわらず、裁判所命令は1ページの命令を認める電子メールだった。 完全に前例のない手段で、聴聞会が開かれる前に、2013年9月に予定されていたこの問題の裁判の前に、第9巡回区の3人の裁判官によって命令が認められた。 多国籍クルーを乗せてオーストラリアとニュージーランドから公海とオーストラリアの南極EEZに出るオランダとオーストラリア船にどうして米国の裁判所が命令を出せるのか、それは複雑な状況である。 シーシェパードはこれから何をするのか? シーシェパードの立ち位置は明確である:私達の船舶、幹部や乗組員は鯨の殺戮割当ゼロの達成に100%コミットしている。 日本がオーストラリア連邦裁判所を軽視してその領海内の鯨を殺す事が出来るなら、国際法で条文化された捕鯨サンクチュアリの目的は何なのか? 私達は日本の捕鯨船団が日本を出発する前にこの判決を待っていたのだと予想している。 船を出そう --- 深い海しか目指してはならない 鯨のために [訳:岩谷] (原文:英語)
"Japanese Whalers Fire Their First Shot of the Season – at Sea Shepherd". Sea Shepherd Conservation Society, December 17, 2012. |
関連報道:
現在のところ英語メディアでは、オーストラリアのシドニー・モーニング・ヘラルド紙の有名な反捕鯨ジャーナリストのアンドリュー・ダービー記者の1つの記事を除いてまだ報じられていないが、ダービー記者は独自にワトソンへのインタビューを行なっている。

捕鯨者がシーシェパードへの命令を勝ち取る
2012年12月18日 16:40 (日本時間14:40)
アンドリュー・ダービー
日本の捕鯨者は、南極海での反捕鯨団体シーシェパードの彼等の船舶への攻撃を制限する命令を米国の裁判所で勝ち取った。
米国第9巡回控訴裁判所による決定に関して、シーシェパードのリーダーのポール・ワトソンは火曜日に「多少驚かされた」と表現した。
米国の地方裁判所が今年の初めに命令を却下する決定を下した事に対して日本鯨類研究所が控訴をしていた。
タシマ・コジンスキー裁判長はその決定において、シーシェパード、ワトソン氏、そして彼等のために行動する誰でも「南極海において原告の日本鯨類研究所、共同船舶会社、小川知之氏、三浦敏行氏の従事するいかなる船舶への物理的攻撃を禁じる」と述べた。
共同船舶はICRの捕鯨船団を運営し、小川氏と三浦氏はその幹部と見られる。
この命令はまた、いかなる人物や船舶も、捕鯨船団の安全航行を危険に晒すと見られる航行方法を禁じている。
「いかなる場合においても、被告が公海上を航行する時に、被告は500ヤード [457m] よりも原告に接近してはならない」としている。
この命令はシーシェパードの本部のあるワシントン州で同団体に対する日本のケースの本案に関する見解を裁判所が出すまでの間有効となる。
ワトソン氏はオランダとオーストラリア船籍と多国籍乗組員にわたるこの状況は複雑だと話した。
「米国の裁判所が公海上の非米国船への司法権を語るのはいささか驚かされた」
出港して日本周辺の水域を動いていたにもかかわらず、日本の船団は今年はまだ南極に出発していないと見られると話した。
「恐らく日本の船団は出航前にこの命令を待っていただけだと思う」と彼は話した。
「彼等が到着した時に私達が我等の鯨を守るために断固たる態度を示す事を知るだろう」
Darby, Andrew. "Whalers win injunction against Sea Shepherd". SMH.com.au, December 18, 2012 - 4:40PM.
日本鯨類研究所サイトより関連情報:

シー・シェパード及びポール・ワトソンに対する妨害差止め請求裁判について
共同プレスリリース
2012年12月18日
財団法人日本鯨類研究所
共同船舶株式会社
本日(現地時間17日)、米国第九巡回裁判所は、財団法人日本鯨類研究所と共同船舶株式会社が求めていた、シーシェパードによる南極海鯨類捕獲調査船団への妨害行為の差止めを認める仮処分命令を発出いたしました。
シー・シェパードの妨害行為は、調査船団及び乗組員の生命・財産を脅かす危険な行為であり、財団法人日本鯨類研究所及び共同船舶株式会社は、今回の米国第九巡回裁判所の判断を歓迎します。
この命令では、シー・シェパード、ポール・ワトソン及びそれらと呼応して活動する全ての者に対して、南極海において、日本の調査船やその乗組員を物理的に攻撃すること、また、船舶の安全な航行を脅かすような方法で航行することを禁じています。
また、公海を航行中に、日本の調査船に「500ヤード(約457メートル)以内に近づいてはならない」とも命じています。
この裁判所命令は、第九巡回裁判所が、現在未決である正式な判決を下すまでの間効力を有します。シー・シェパードは、今年も妨害船を出港させ、調査船団に対し物理的な攻撃を行うことを明言していたため、先日、財団法人日本鯨類研究所と共同船舶株式会社は、第九巡回裁判所に迅速な判決を求める要請を行いました。
昨年12月、財団法人日本鯨類研究所と共同船舶株式会社は、シアトルのワシントン州連邦裁判所に、南極海において行われる第2期南極海鯨類捕獲調査(JARPAII)に従事する船舶や乗組員の安全が、シー・シェパードおよびポール・ワトソンの活動によって損なわれないよう、シー・シェパードによる調査船団への妨害差止めを求める提訴を行いましたが、連邦裁判所が妨害差止めの仮処分を認めないとの判断を示したため、第九巡回裁判所へ上訴していました。
第九巡回裁判所命令:http://www.ca9.uscourts.gov/datastore/opinions/2012/12/17/12-35266.pdf
問い合わせ先:
共同船舶株式会社 伊藤 03-5547-1930
日本鯨類研究所 大曲 03-3536-6527
・シーシェパード裁判で上級裁判所へ控訴 (日本鯨類研究所 2012年4月11日)
・シーシェパードおよびポール・ワトソンに対する妨害差し止め請求裁判について(第2報) (日本鯨類研究所 2012年2月17日)
・シーシェパードおよびポール・ワトソンに対する妨害差し止め請求裁判について (日本鯨類研究所 2011年12月9日)
日本語メディア報道
記事名 | メディア | 日時 | |||
12月18日 | |||||
• | 反捕鯨団体に妨害禁止仮処分 米裁判所
|
NHKニュース | 21:32 | ||
• | シー・シェパードの捕鯨妨害差し止め 米裁判所が仮処分
|
朝日新聞デジタル | 20:42 | ||
• | シー・シェパードの妨害禁止、米裁判所が仮処分
|
Yomiuri Online | 20:18 | ||
• | 調査捕鯨妨害差し止め認める 日本鯨類研究所提訴に米高裁
|
共同通信 | 20:17 | ||
• | シー・シェパードの妨害行為を差し止め 米裁判所が仮処分命令
|
msn産経ニュース | 19:32 | ||
• | 妨害差し止めで仮処分=米裁判所がシー・シェパードに−鯨類研
[WSJ]
|
jiji.com | 18:54 |
裁判経緯の関連記事:
・妨害差し止め仮処分認めず 調査捕鯨訴訟で米地裁 (共同通信 2012年2月17日)・日本鯨類研究所 妨害中止求めシー・シェパードを提訴 (sponichi 2011年12月10日)
・シー・シェパードを提訴 日本鯨類研「調査捕鯨を妨害」 (朝日新聞 2011年12月9日)
参考サイト:
・2011.3.7 インドへ渡ろう (東 晋平 オフィシャルブログ 2011.03.07)脚註:
- ^ PDFファイルのプロパティは日本時間18日9:45で、遅くとも11:38には発表されていた事は確認済。
- ^
オリジナル: " Institute of Cetacean Research, et al. v. Sea Shepherd Conservation Soci, et al., No. 12-35266". United States Courts for the Ninth Circuit, 10/09/2012.
PropagandaBuster. "Sea Shepherd and Japan go to court, the audio". YouTube, 2012/10/11.
日本語要約: 『【テキサス親父】爆笑!シー・シェパード裁判 控訴審の録音と内容』. テキサス親父日本事務局, 2012/10/14.
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