「またオーニシか!」と言えばそれで通じてしまう程ネット上では有名人になってしまった感のあるニューヨークタイムズ東京支局長の大西哲光記者ですが、最近話題になってる沖縄での教科書検定抗議集会に関して、7日付けで記事を書いているので本日はその全訳を紹介します。
本来はこのNYタイムズの記事の検証の予定だったのですが、この記事をマッチポンプ外圧逆輸入報道した琉球新報の「超訳」がなかなかダイナミックなので、全部やると長くなってしまうため、予定を変更して2回に分けて今回は琉球新報の記事検証、次回は大西記者の記事分析のエントリーとします。
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県民大会参加者の怒り、政府の衝撃報道 NYタイムズ
琉球新報 2007年10月9日(火) 16:15
米紙ニューヨーク・タイムズは7日付で「沖縄県民、歴史改ざんに抗議」[*1]と題する記事を掲載した。9月29日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の写真も掲載。高校日本史の教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」に日本軍の強制があったとの記述が削除・修正されたことに、県民が激しく抗議し、歴史の改ざんは許さないとする県民の意思を日本政府に突きつけた―と報じた。
記事が掲載されたのは日曜版の「ワールドニュース・セレクション」。日本軍の強制があったと話す沖縄戦生存者の証言を引用しながら「軍の強制があったことはこれまで教科書に記載されてきたものの、安倍前政権時に愛国心を明記した改正教育基本法が成立し、その数カ月後に教科書から日本軍に関する部分の記述が削除された」[*2]と指摘している。
また「従軍慰安婦問題では、アジア諸国が一斉に反発したが、今回の抗議集会に11万人以上の沖縄県民が参加したのは、右傾化が進む日本政府への怒りの表れ」[*3]との見方を示した。
過去最大となった県民集会への参加者数に、日本政府内に大きな衝撃が走った様子などについても触れながら、集会では「この問題で、これまで見えなかった沖縄への差別の存在に初めて気付かされた」[*4]「事実を隠そうとする政府に怒りを感じる」という高校生らの声[*5]や「父母や祖父母が語る事実をうそ呼ばわりするのは許せない」などという参加者らの怒りがあふれていた―と伝えた。
ニューヨーク・タイムズ紙はアメリカの代表的な新聞で、総発行部数は終日が120万部、日曜版は160万部(ことし8月末時点)。米国内をはじめ、大きな国際的影響力を持つ。
(平安名純代・本紙ロサンゼルス通信員)
以下ニューヨークタイムズの元の記事です。
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第二次世界大戦の悲痛な一章を修正する日本政府に沖縄県民が抗議[*1]
大西哲光
ニューヨークタイムズ 2007.10.7
【宜野湾市9月30日】既に78歳の高齢で健康もすぐれない金城重明牧師は、第二次大戦も終わり近い62年前に母親と弟妹を打ち殺したその運命の日に関してもはや語りたがらなかった。
![]() Ko Sasaki for The New York Times 米兵と同じ位日本兵に恐怖を覚え、自らの手で母親と弟妹を殺害したのだと金城重明牧師は語った。 |
![]() Ko Sasaki for The New York Times 先月、沖縄の宜野湾市で数千人のデモ参加者が、1945年に彼等の島での集団自決強制の記述を教科書から削除する日本政府の計画を中止するように要求した。 |
手榴弾の多くが不発に終わり、元地区長が木の枝を折ってそれで妻子を殺害したのを見て、金城さんは兄と共にそれに倣った。
「兄と私は生みの母親を死ぬまで打ち続け、私は悲痛の余り号泣しました。それから弟と妹を打ち殺しました」と、金城さんは彼が牧師を勤める那覇中央教会でのインタビューに答えた。
沖縄の人々が帝国軍に集団自決を強制されたとの記述を新しい高校教科書に含める事を、現在日本政府が拒絶しているため、金城さんが彼の身の上話を再びする事に同意したという事だ。
一つの主語の削除、受動態への変更という教科書内容の変更の提案は、数百ページ中でたったの数単語の話である。しかし表面上は細かい文法上の変更でも、それは沖縄諸島での怒りを増大させるには十分であった。少なくとも過去35年間で最大規模の抗議運動が最高潮に達しており、日本政府に衝撃が走った。
日本の高校教科書は過去25年間にわたり、沖縄の人々が帝国軍兵士によって集団自決を強制されたという歴史的事実を受け入れていた。[*2]
しかし半年前に、文部科学省による翌年年度教科書の政府検定では日本軍に関する全ての記述を削除するように指導している。検定意見では沖縄民衆は自発的に自決したか、又は強制と感じたとなっている。しかしそれは一体誰によって強制されたのか?
日本兵が自決しなかった様子を見て自決を思い留まったと言う金城さんは「もし日本軍がいなければ集団自決は決して起こらなかったでしょう」と語った。
文科省は「日本軍が集団自決を強制または命令したかどうか不明」としながら、政策変更を説明する新たな証拠に言及していない。それでもはっきりしているのは発表のタイミングで、日本政府が公立学校で「愛国心」を強調する新法を通過させた数ヶ月後であると言う事だ。[*2]
事実、少なくとも過去数十年に亘り、安倍晋三前首相のような国粋主義の政治家や学者が、日本軍の犯した犯罪についての記述を一掃するために闘って来た。戦時中の性奴隷や大虐殺の記述の消去が最近アジア諸国の怒りを買っているのなら、これはそう言った政府による過去の白塗りが国内で同様の怒りを買った初めての事である。[*3]
米軍基地の再編成に沖縄の同意が必要な福田康夫首相の新内閣にとって、この騒動は深刻なチャレンジとなる。来年11月に出版が予定されその翌年の4月から使用される教科書問題に関して、穏健派の福田首相は妥協点を模索している。
しかし福田首相は難しい立場にいる。教科書検定意見をいきなり撤回すれば党内右派の反発を買い、教科書に政治介入しないと言う政府の長年に亘る主張に反する事になる。
第二次大戦中に唯一民間人の陸上戦を経験した沖縄は、19世紀後半に正式に日本に併合されるまでは、独自の文化と言語を持つ独立王朝であった。戦争中、日本兵は沖縄地元民を信用せず、米国のスパイ活動をするのではないかと恐れていた。
米軍上陸後、日本兵は壕から沖縄地元民を追放し人間の盾として使った。日本兵に占領された村々では数千人が自決したと考えられている。日本兵のいなかった所では集団自決は起こっていない。
琉球大学社会科学の高嶋伸欣教授によると沖縄に対する差別は現在も存在すると言う[*4]。戦争中に米軍が日本本土に侵略するのを食い止めるために沖縄が犠牲になったように、現在でも在日米軍基地の大半が沖縄にある。
教科書問題に対する政府の最初の対応が沖縄の怒りを高める事になったと高嶋教授は言う。地元局は、教科書検定意見への異議申し立てのために東京に行った沖縄県議員が、文科省大臣や副大臣との面会が出来なかった様子を報じた。その一人である沖縄県議会の仲里利信議長は、教科書問題に不快感を示し、62年の沈黙を破って自らの戦争体験を語った。
仲里さんの家族が難を逃れたガマ (濠) では、彼の家族に日本兵が2個の毒入りおにぎりを手渡し、仲里さんの妹といとこに与えるように言った。彼の家族は山に逃れ、そこで弟が亡くなった。
「私はもう70歳ですが、80歳以上の人達の記憶は薄らいでいます。だから今が私達が抵抗出来る最後のチャンスなのかもしれません」と仲里さんは語った。
沖縄県議会と各自治体は教科書検定意見撤回を要求する意見書を可決し、抗議運動の計画を始めた。最も大規模な集団自決の幾つかが行なわれた島々の80代の人達が初めて口を開いた。教師達は集団自決に関して異例の時間をかけるようになった。
県立南部商業高校社会科教諭の上江洲由直さん (36) は、検定意見の政治的背景について生徒に「点を結ぶ」事を試みる事だと説明した。
「この検定意見は我が国の特別な時に起こっているものです。防衛庁が省に昇格し平和憲法の改正の話が出ています。」と上江洲教諭は語った。
最近の授業を受けて、生徒の玉城美智恵さん (18) は「事実を隠すこの国を恥ずかしく思います」[*5]と感想を述べた。
上の世代の沖縄人とは異なり、18歳の末吉歩さんは沖縄に対する差別は感じた事はないとしながらも[*4]、「これは実際に起こった事。私は今そう感じます」と語った。
その翌日の9月29日に、宜野湾市で主催者が期待した5万人を遥かに上回る11万人以上の人が教科書検定に対して結集した。それは1995年の米国の3人の軍人による12歳少女暴行事件に抗議する8万5千人の大会を上回り、1972年の沖縄の本土復帰後では最大の集会となった。
戦争生存者の話を聞いた参加者の多くが見るからに心を動かされていた。
仲村ツユさん (65) は「私には耐えられない」と、特に2人の高校生が「私達のおじいちゃん、おばあちゃんが嘘を言っていたということでしょうか!」と演説した後に、涙を拭い続けた。
与那原ノブヒコさん (65) と妻のミサコさん (65) は両方が沖縄戦で親類を失っている。
「父は集団自決の事を私に話してくれました。手榴弾を配られた時の事など。歴史を歪曲する事は同じ過ちを再び冒す危険となります」と与那原さんは語った。
また妻のミサコさんは「これは沖縄だけの問題とは思いません。政府の都合によって事実が捩じ曲げられる事は日本全体の問題です」と語った。
以下琉球新報とニューヨークタイムズの比較。
*1. 『沖縄県民、歴史改ざんに抗議』(琉球新報)
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*2. 「軍の強制があったことはこれまで教科書に記載されてきたものの、安倍前政権時に愛国心を明記した改正教育基本法が成立し、その数カ月後に教科書から日本軍に関する部分の記述が削除された」と指摘している。(琉球新報)
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*3. また「従軍慰安婦問題では、アジア諸国が一斉に反発したが、今回の抗議集会に11万人以上の沖縄県民が参加したのは、右傾化が進む日本政府への怒りの表れ」との見方を示した。(琉球新報)
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*4. 集会では「この問題で、これまで見えなかった沖縄への差別の存在に初めて気付かされた」(という高校生らの声や) (琉球新報)
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*5. (集会では)「事実を隠そうとする政府に怒りを感じる」という高校生らの声や (琉球新報)
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さてこのNYタイムズの記事をもう一紙報じている国内メディアがしんぶん赤旗ですが、こちらは非常に正確な訳で、今回の訳に関しても非常に参考になりました。しんぶん赤旗の場合は前半部分のみの報道で後半に関しては全く触れられていません。
しかし琉球新報のこれは幾ら何でも酷過ぎますね。まずNYタイムズの記事を報じてると装いながら内容を改変している点、それから引用表記のルールの基本が全く出来ていない点ですが、これは英語読解力など記者の能力の問題なのか、それとも意図的に印象操作をしているのかは、この記事を見る限りでは何とも言えませんが、ロサンゼルス通信員という方なので恐らく確信犯の後者でしょう。そもそもロス通信員なら宜野湾市の抗議集会で直接取材した訳でないだろうし、NYタイムズに書かれてる以上の余計な情報が入るのが不自然というもの。
そういうクリエイティビティ溢れる琉球新報には『創作芸術大賞』を進呈したいと思いますw。
次回は大西記者の記事自体を検証してみようと思います。
関連エントリー:
・沖縄集団自決問題 NYタイムズ記事検証 (2007.10.17)
・沖縄集団自決問題 今度はロイター通信 琉球新報報道の怪 Part2 (2007.10.21)
・沖縄のレイプ事件 海外での報道 (2008.2.16)
関連記事:
「集団自決」検定意見で米紙報道 「日本政府に沖縄が抗議」 (しんぶん赤旗 2007.10.9) [魚拓]
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【ワシントン=鎌塚由美】米紙ニューヨーク・タイムズ(七日付)は、「集団自決」検定意見について日本政府に抗議する沖縄の人々を紹介。十一万人の県民大会が開かれた宜野湾市から特派員電で伝えています。 「第二次世界大戦の悲痛な一章を見直す日本政府に沖縄の人々が抗議」と題し、七十八歳の牧師、金城重明氏らの体験を紹介。同氏は、自決を迫られ、母親と弟と妹を「泣きながら、殴り殺した」ことを告白。「日本軍がそこにいなければ、集団自決は決して起こらなかった」と同紙に語りました。 「集団自決」について同紙は、米軍が沖縄に上陸後、「日本軍は避難所から住民を追放し、人間の盾として使った。日本軍が占拠した村々では数千人が自殺したと考えられる。日本軍のいなかったところでは、集団的自殺は起こらなかった」と紹介。 「検定」問題については、日本の高校教科書は過去二十五年にわたり「沖縄の人々が、帝国陸軍兵士によって集団的自殺を強制されたという歴史事実」を受け入れていたにもかかわらず、文部科学省の検定意見で「日本軍に関するすべての表現を削除」することになったとしています。 そのうえで「強制・命令したかどうか不明」との理由で検定意見をつけた文科省は「政策変更を説明する新たな証拠に言及していない」と指摘し、「はっきりしているのは発表のタイミングが、日本政府が公立学校で『愛国心』を強調する新法を通過させた数カ月後」だったことだと紹介しました。 また「事実、過去十年にわたり、国粋主義の学者や安倍晋三前首相のような政治家が、日本軍が犯した犯罪についての教科書の記述を清めるためにたたかってきた」と述べ、日本の歴史わい曲勢力の存在に触れています。 |
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