トム・シメン氏が1937年に上海で撮影し国外に持ち出したという、第二次上海事変での中国人による日本人捕虜虐殺とされる18枚の写真が1996年にCNNで報じられた記事を前エントリー『上海事変における中国人による日本人捕虜の残虐処刑』で紹介したが、今回はこのCNNの記事を取り上げた中国人の掲示板で起こった議論を紹介する。
これは『英華園』(LKCN) というイギリスの中国語新聞のウェブサイトの中の『英華論壇』という掲示板にCNNの記事が取り上げられたもの。このスレでは英語と中国語が入り交じっており、使われているのが簡体字であるため恐らく大陸中国出身者か又は中国本国からのアクセスであり、うち2名は英文のレベルが高いため英語圏滞在が長い人達と思われる。
以下該当スレッドの全訳。
誰が歴史を捏造しているのか:上海での残虐行為を写真が裏付ける
英華フォーラム掲示板
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初級会員 所属: Junior Members 投稿: 5 登録: 2007.3.1 ID: 48396 |
まずこの写真を見て下さい。![]() それからCNNの記事を見て下さい。 http://www.cnn.com/WORLD/9609/23/rare.photos/index.html (抜粋引用)[1] 1937年の上海界隈でスイス人写真家によって撮影された写真は、すべて中国兵士による日本人捕虜と、日本の軍事侵攻に協力して逮捕された上海住民に対して行われた残虐行為を撮影したものである。 1. CNNの記事からの引用。
YouTube青のハイライトは原文通り。 http://www.youtube.com/watch?v=4tHr5Ht711E |
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![]() 上級会員 ![]() ![]() 投稿: 894 登録: 2006.3.19 出身: 遠い遠い銀河 ID: 35190 |
そう、これは議論を引き起こす題材であるが、これに関して私からコメントする必要があるように思われる。これはCNN発の安っぽいジャーナリズムのようだが、CNNの報道が本当であったとしても日本の右翼の道徳心が向上する訳ではない。 写真に話を戻して、私からは2つ質問がある。 1) ここで日本人捕虜をどうやって識別するのか?2) 出版のためにジョン・シメン氏に投資したのは誰か? | ||||||
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初級会員 所属: Junior Members 投稿: 5 登録: 2007.3.1 ID: 48396 |
返信ありがとうございました。 1) 私は普通の中国人学生であり、歴史学者でも目撃者でもなく、知っているのはこれが中国で一般的な拷問方法だという事である。 2) ジョン・シメン氏はプロパガンダとしての活動はしていない。日本の「右翼」が彼の写真に関して言及していたのを見た事はあるのか? 西欧のジャーナリストの、例えばハロルド・ジョン・ティンパリーは国民党から金を受け取っていたと言われてはいるにせよ。 (某ブログより)[2]![]() (以下原文繁体中国語) (出典:某ブログ)[2] 実際少なからぬ人達が私が南京大虐殺を「否定」していると考えているようだが、私達は最初から幾つかの証拠とされるものを疑っているだけの話であって、写真をもって証拠とは出来ないという事である。例えばアイリス・チャンの本で日本人による斬首写真とされる物は、これは驚くべき事に遼寧省の馬賊の生首写真を持って来たものであったりなど、常識人はこういう物を証拠とは認める事は出来ない。 なおかつ私はこれまで受けた教育の中でそれを理解するだけであり、もし歴史的証拠に相当しない物なら、その存在自体が非常に馬鹿げた事であると考える。 歴史に真相はないと言うが、しかしそれが実の所は必然性のない事でも、いわゆる必然的痕跡が見られる時に、例えば「楊州十日」や「嘉定三屠」など、それらの事件の発生の背景に人口数の増減があれば、それが必然的に事件成立の有力証拠になる。 しかし歴史を捩じ曲げる事は出来ない。国民党政府時代の過去の歴史教育において、長白山上の物語の登場人物が馬賊と関係があるかどうかに懐疑的な人はあり得なかったが、例え関係してたとしても口には出来ず、さもなくば警察に逮捕され二度と口にしない訳である。 | ||||||
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上級会員 所属: Members II 投稿: 1891 登録: 2002.1.14 ID: 791 |
一体何を言いたいのか? 中華民国政府または中華人民共和国政府が、日本捕虜虐待の実情を否定や肯定をしたと聞いた事は一度もなく、その件に関してこれまで提起した事もなく、そもそも中国軍に従来捕虜優待の伝統はない。 あなたが言う歴史の「捏造」とは何ですか? 中国軍が日本人捕虜を優待したと言うなら、それこそ「捏造」と言えるのではないか? 当時、国民の大部分が斬首見物を楽しみにするような国において、このような事が発生するのは普通の事であり、別に驚く事ではない。更に、南京の軍民に対する数十万規模の組織的虐殺と、抗日戦争で死亡した1000万人の中国の軍民とを比べた時に、それは小さな事だろうか? 上記の写真は馬賊の生首か? 証拠を出して欲しい! いつ、どこで、誰がやったのか? 日本が東北を占有した時期の「馬賊」で、張作霖、張学良の東北軍が東北の「馬賊」を征伐するのか? 彼等が馬賊という説は誰が言ったのか? 日本の関東軍、それとも満州傀儡政府か東北軍か? 本物の馬賊や抗日遊撃隊が、馬賊と軽蔑されるという事か? 2番目の写真[3]では、人物Bが走っていて、体が傾いていれば、このような影を完全に形成する事が出来る。 3. 2番目の写真はリンク切れで表示されていない。
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初級会員 所属: Junior Members 投稿: 5 登録: 2007.3.1 ID: 48396 |
![]() 【写真説明】印刷 【写真枚数】一枚 【写真色調】白黒 【写真サイズ】9.2x6.1cm 【写真の出典】 遼寧省図書館 【キーワード】処刑所、公主嶺、1918年以前、馬賊、死体、野次馬 http://www.lnlib.com:8080/was40/detail?rec...channelid=13751 註:青のハイライトは原文通り。
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上級会員![]() ![]() 所属: Members II 登録: 2002.1.14 ID: 791 |
誰が殺害したのか? タイトルが日本語なので、少なくとも日本人による撮影であろうと説明されている。 斬首執行人はどのような人物か? 1918年時点で東北に日本軍は駐屯していた。 | ||||||
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初級会員 所属: Junior Members 投稿: 5 登録: 2007.3.1 ID: 48396 |
>馬族の斬首の写真がこのリンク先で幾つか見られるが、最近その中の写真がアイリス・チャンの『レイプ・オブ南京』で偽って使われた[4] 4. この投稿者 (反対謡言) の2つ前の投稿中の引用からの抜粋。
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![]() 上級会員 ![]() ![]() 所属: Members II 投稿: 900 登録: 2006.3.19 ID: 35190 |
いやいや、こちらこそこのテーマに関して知的なディベートをしたいと思っている。 中国が歴史的に野蛮であったと皆さんがそう言いたいなら、それは十分フェアであると思う。私は否定はしない。巻雲さんも同様に。 私は第二次大戦中シンガポールに赴任していた元イギリス兵と話した事がある。彼は共産主義にも国民党にも何の思い入れがないにせよ、彼が何を目撃したかを私に話してくれた。シンガポールを占領した日本軍が起した残虐行為など。彼の発言は中国のプロパガンダなのか? これらは全て悲劇である。人類の歴史は悲劇だらけであり、もっと悲惨な事は人々が歴史から学ぼうとしない事であって、世界中でまた同じ悲劇が繰り返されるという事である。「道徳的に優れた」はずの米軍人がイラクの民間人に何をしたのか? 欧州各国は二度の世界大戦で大きな対価を支払いそして何かを学んだはずであり、だから欧州各国はホロコースト否定を犯罪とする法律を作った。残念ながら日本の首相は慰安婦に関して未だに論争し、右翼の声はまだ大きいのである。 私は民族としての日本を非難していないが、一部の日本人は頑固であり、彼等は完全に敗北しない限り、その頑固さを守るためなら手段を選ばないように見える。 中国共産党が1989年の真実を受け入れていないとも主張出来る。つまりそういう事である。中国共産党は過去を正視出来ない臆病者である。 しかし、二つの間違いが一つの正しいものを作らないように、他人の間違いを言うだけでは自らが潔白とはならない。それは喧嘩を売るのに手っ取り早い方法になるかもしれないが。失礼を承知で言えば、あなたのロジックはこういう感じである: 私が何か間違っていたら指摘して欲しい。しかし何を指摘出来るのか? 次回に第二点に関して書く。 | ||||||
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![]() 上級会員 ![]() ![]() 所属: Board Masters 投稿: 1542 登録: 2001.8.14 出身: 上海 ID: 117 |
真面目な話、斬首を見せしめにするのは世界の大多数の民族で歴史的に非常によく行なわれたやり方であり、アジアにおいても同じ事である。だから、この写真が中国兵が日本の捕虜や日本に寝返った者に対して行なったものかを説明出来るかどうかが根本的な問題であって、それがこの言論発表の基礎であり、基本なしには議論自体に意味がない。 --------------------私はオープンでありどのテーマでも受け入れる。 chinamusical.net www.chuanqi.org | ||||||
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![]() 上級会員 ![]() ![]() 所属: Members II 投稿: 900 登録: 2006.3.19 出身: 遠い遠い銀河 ID: 48396 |
フランシス・フクヤマ氏が論文でその考え方について書いている。
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[訳=岩谷] (原文:中国語)
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これは興味深いやり取りである。拍子抜けする位に自国の残虐文化を素直に認めている。
中国人というものはどんなに中国共産党が嫌いであっても「中華の体面」へのこだわりはかなり強く、「中華」の対外的評判を非常に気にする面が強烈にあり、だから幾ら内部でいがみあったり揉めたりしても、殊更対外となるとやたらと一致団結する習性があるように見える。
従ってこういう中国人だけの会話など見ると、結構意外な本音が見える事がある。
まずここで登場人物を整理してみる。
反対謡言 fanduiyaoyan | トピ立てした人物でこの掲示板には新入りらしい。主に英語を使っているが、簡体中国語も使うので本土中国出身者と思われる。中国軍の蛮行に批判的、中国の野蛮な文化を認め、アイリス・チャンに批判的。台湾人のブログから引用するなど、どちらかと言うと反中の中国人。 |
天外飛猫 flying_cat | 2年ほどのメンバー。英語しか使わないが簡体中国語は読める模様。中国文化を野蛮と認めつつも日本に敵意を持っている一方、中国政府に批判的で、いわゆる単細胞な反日の反戦平和主義者のようである。 |
巻雲 cirrus | 5年ほどの古参メンバー。反日的であり「馬族の写真」に懐疑的でありながらも、中国の残虐な歴史に対しては当たり前のように受け入れている。 |
Phil | 6年の古参メンバーで、この掲示板の共同管理人の一人。ここでは特に自己主張はなく、写真の真偽に関してのみ言及。 |
この議論をざっと整理すると:
1. | 反対謡言 | CNNの記事を見つけてそれを紹介 |
2. | 天外飛猫 | 写真の真偽に疑問を呈するも、本物の可能性は否定出来ない様子 |
3. | 反対謡言 | これは中国では珍しい事ではないとし、更にアイリス・チャンのニセモノ写真に言及 |
4. | 巻雲 | 「アイリス・チャンのニセモノ写真」に反論しながらも、中国軍の捕虜虐待の伝統は否定しない |
5. | 反対謡言 | 馬族の生首写真の出典を提示 |
6. | 巻雲 | これは日本人による処刑と主張したい様子 |
7. | 反対謡言 | 話の論点はアイリス・チャンの捏造であると一蹴 |
8. | 天外飛猫 | 中国の野蛮性は認めながらも、日本の「右翼」を批判、自らの平和主義思想を熱弁、中国がクロであっても日本がシロとはならないと主張 |
9. | Phil | 話の論点はこれが日本人捕虜の処刑かどうかであるとまとめに入る |
10. | 天外飛猫 | フランシス・フクヤマの論文を引用して「日本のナショナリズム」に話題を振ろうとするがそれ以降レスなし |
全体で言えるのは、ここの誰も中国の残虐処刑の伝統や、中国軍による捕虜虐待を否定していない事であり、結局のところどんなに中国に批判的な中国人でも「日本の右翼が敵」という点では完全に一致団結している点など。彼等の中の構図は「日本の軍国主義=絶対悪=日本の右翼=敵」となっている点、日本国内の戦前悪論やアメリカの「戦勝国の論理」と非常にシンクロし易い、非常に単細胞的な善悪論と「仮想敵の共有による団結」にどんな冷静な人でも支配されている印象がある。
またアイリス・チャンが中国人から見て必ずしも信頼されている訳ではない事、中国人の間でも歴史論議が行なわれていて必ずしも考えが一致してる一枚岩な訳ではない点など、実際に蓋を開けてみれば日本の掲示板とそう変わらない事を向こうでもやっている訳である。
ただやはり彼等の判断基準が、独裁言論統制主義の中国政府を見るような目で日本政府を見ている点、それから自分達の文化を基準に日本人を見てしまっている点はどうしても中国人に全体的に見られる傾向であり、こういう面が彼等の限界と言うかもう仕方がないのであろうとは思う。
ただし日本人と中国人での決定的な違いは、やはり民族のために対外的には本音を殺してでも団結するかであり、やはりそこら辺が彼等の強さと言うか、ロビー活動や外交面で日本が負けている要因だとは感じる。
次回もこのテーマに関連して、1937年の第二次上海事変の数日前に起こった大山中尉殺害事件を8月18日のエントリー以来再び取り上げてみようと思う。
支那事変関連エントリー:
・歴史から消された広安門事件と廊坊事件 (2007.7.11)
・清瀬一郎:東京裁判冒頭陳述 (2007.7.19)
・南京事件考 (2007.8.7)
・東條英機元首相 公的遺書 全文 (2007.8.14)
・英語・中国語版Wikipediaにおける大山事件と第二次上海事変の記述 (2007.8.18)
・中国の死刑写真とBBC『南京大虐殺』の酷似 (2007.10.28)
・上海事変における中国人による日本人捕虜の残虐処刑 (2007.11.4)
・日本人捕虜の残虐処刑写真に関する中国人の議論 (2007.11.9)
・猟奇的な大山中尉殺害事件 (2007.11.14)
・通州虐殺の惨状を語る 生き残り邦人現地座談会 (2009.3.20)
・清朝時代の処刑写真を日本のものとして展示しているサイト (2009.9.26)
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