アジアのライバルを醜く描いた本が日本でベストセラーに
大西哲光
ニューヨークタイムズ 2005.11.19
【東京11月14日】漫画『嫌韓流』で若い日本人女性は「現在の韓国は日本が造ったと言っても過言ではなくてよ!!」と声高に言う。またこの本には「韓国の文化には何ら誇るべきものはない」とも書かれている。
中国人が人食いに明け暮れていると描いた漫画本「マンガ中国入門」では、日系人女性が「現代の中国で、思想、文学、芸術、科学、制度など、魅力的なものは何一つないわよねえ」と言っている。
 Sharin Yamano/Shinyusha 漫画「嫌韓流」で若い日本人女性が「現在の韓国は日本が造ったと言っても過言ではなくてよ!!」と言う。
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中国人と韓国人を下劣に描き彼等との対立を主張するこれらの二つのコミック本は、この4ヶ月間日本のベストセラーの座を疾走中である。
アジアの仲間に対する歯に衣着せない強弁的な表現、しばしば侮蔑用語を含み、それらは日本とその他アジア諸国の関係悪化の根底にあるしがらみを明らかにしている。
そしてそれは大陸から離れたイギリスと同様の日本のアイデンティティの不安を示唆している。この1世紀半の日本の歴史の大半は脱亜西洋化の目標を掲げたものである。今日、中国と韓国の台頭は、経済外交文化面でのアジアのリーダーの座にある日本へのチャレンジであり、それが日本で彼等に対する新たな嫌悪を生んでいる。
ドイツ文学研究家の西尾幹二さんは「新しい歴史教科書をつくる会」の会長であり、その国粋主義団体は日本の戦時中の残虐行為の記述を中学の教科書から取り除く運動を強力に進めて来た。
西尾さんは日本が近隣諸国とどのように付合って行くかという問題には無頓着で、福沢諭吉(近代の日本の著名な知識人の一人)が「日本は西洋の優れた国々と競い、アジア、特に進歩の遅い中国や韓国から離れるべきである」と言った1885年と何も状況は変わっていないと言う。
「なぜ彼等は成長しないのか不思議だ。彼等は変わらない。何故中国と韓国は何も学ばないのか不思議だ。」と西尾氏は言う。
このコミック本に韓国に関するコラムを書いた西尾氏は、福沢が主張したように「日本は中国や韓国から自らを切り離すべきである。」と言い、「現在私達は韓国と中国を無視出来ない。経済的にそれは難しい。でも精神的に私達の心の中では、冷静を努めそういう態度を続けるべきである。」とも語った。
ワールドカップで日韓が共同開催した2002年、韓国がライバルとして台頭した事実は多くの日本人を打ちのめした。韓国は日本よりも勝ち進んだ。同じ時期に韓国のテレビドラマ、映画や音楽のいわゆる「韓流」ブームが日本やアジア諸国で起こり、しばしば日本のポップカルチャーにとって替わった。
女性を中心に起こったその「韓流」ブームは、特にインターネットにおいて対抗運動を招いた。若手漫画家の山野車輪氏は自らのウェブサイトで「嫌韓流」の発表を始めた。
「嫌韓感情は、ワールドカップ以来爆発的に広がった」と晋遊舎の編集者の丹下晃秀さんは語る。これまでのところ36万部の売り上げがあり編集者達を驚かせたが、それは彼等が考えている以上に嫌韓ムーブメントが強いことを伺わせる。
もう一人の編集者のヤマナカ・ススムさんは「私達はそんなに多くを期待していなかった。でも蓋を開けてみたら想像を絶する人数の人達が同じ感情を持っていたということだ」と語った。
300ページ程度で価格も10ドル程度のそれぞれのコミックは、公的機関、知識人や主要ニュースメディアなどで多少の批評を引き出している。例えば日本で最も保守寄りの全国紙の産経新聞は「(その韓国本は二国間の問題の)バランスを失わないように、きわめて冷静に描かれてあったのである」と書いている。[*1]
一橋大学日本近現代史の吉田裕教授は「国粋主義者や修正主義者が日本の国民一般のディベートを圧倒し、誠実な歴史観の主張が黙殺されている。レイプオブ南京のような歴史を否定する運動が台頭するのは、自信を失いつつある国家のための一種の「宗教」である。自信の欠落から癒しの物語が彼等には必要であり、私達がその話は事実と違うと言っても彼等には何の意味もない」と語った。
続編を執筆中の「嫌韓流」の著者はインタビューに応じない。この本は韓国の「正しい」理解を追求する10代の日本人の要を主人公にしている。物語の第一章は2002年のワールドカップで韓国のサッカーチームがどのように不正を行なったかが書かれており、後の章では韓国の現在の成功は日本の植民地支配の恩恵であると要が知ることになる。
西尾氏は「韓国が世界主要国にランクされるのを可能にしたのは日本であって彼等の自力でない」と語った。
しかしこのコミック本は図らずも、長年のアジアへの優越感と西洋への劣等感という日本の矛盾したアイデンティティを示すこととなる。本に登場する日本人キャラクターは大きな目で、金髪で白人の外観を持ち、韓国人は黒髪で細い目で非常にアジア人の外観を持っている。
多くの日本人が気付いていないこの特殊な美的感覚は日本のポップカルチャーに潜み、それは19世紀後半の明治維新において日本の指導者が「西洋帝国主義を止める最善策は彼等と競う事である」と決断したことに起因している。
1885年に福沢諭吉(昨今は近代日本の知識人の父の地位に復帰し、一万円札に印刷されている)は「脱亜論」を書き、そのエッセイは日本のアジア侵略と植民地化政策を実証するものと多くの学者が考えているものである。
福沢はアジア近隣諸国が遅れている事実を嘆いていた。
福沢は「西洋文明人の眼を以てすれば、三国の地利相接するが為に、時に或はこれを同一視し、支韓を評するの価を以て我日本に命ずるの意味なきに非ず」と書き、アジア近隣諸国に関して「(日本はアジアを抜け出し)むしろ、その伍を脱して西洋の文明国と進退を共にし、その支那、朝鮮に接するの法も、隣国なるが故にとて特別の会釈に及ばず、まさに西洋人がこれに接するの風に従て処分すべきのみ」と書いている。[*2]
これらの感情に起因して、日本人は白人の外見を大衆向けの絵に描くようになった。最大の変化は日露戦争時 (1904-05) で、戦争を描いた絵では日本人はロシア人よりも長身で高い鼻の、ヨーロッパの敵よりも更にヨーロッパ人に見えるように描かれている。
長山靖生さんは「日本人は敵よりもハンサムでなくてはならなかった」と語っている。
新刊のコミック本『マンガ中国入門』は中国人を人食いと売春に明け暮れる人々に描く。ここでも同様の現象が見られ18万部の売り上げがある。
この本は中国を「世界の売春大国」と称し、証拠もなしにセックス産業が国全体の産業の10%を占めると書いている。中国は病気の出所とされ、小泉純一郎首相が「日本の殆どの伝染病は中国から来ていると聞いている」と言っている様子を描いている。
この本は日本の戦時中の中国における残虐行為を(事実とすることを)拒絶している。10万人から30万人の中国人が日本兵によって殺害されたと歴史家が言う南京大虐殺 (1937-38) を、国民に反日感情を植え付けるために中国政府によって広められた捏造であると却下している。
この本はまた日本帝国軍の731部隊(生物兵器の研究や生体解剖、切断手術やその他の人体実験を中国人その他の囚人に行なった)は実際には日本兵を守るために編成されたとしている。
『マンガ中国入門』の監修の黄文雄さん(66)は「中国で唯一魅力的なのは中華料理だけである」と言う。台湾出身の作家である黄氏はで中国に関する本を50冊以上書き、何冊かは食人に関して、その他は「日本人は戦時中の中国の残虐行為の被害者である」との内容である。「マンガ中国入門」の著者の漫画家のジョージ秋山氏はインタビューに応じなかった。
台湾の悪意的な反中主義者と同様に黄文雄氏は猛烈に日本ひいきであり日本に40年在住している。今年始めの中国の反日デモは彼の読者層を広げたと黄氏は語った。氏の著書の今年の売り上げは100万部に達した。
また黄さんは「私は中国に感謝しています、本当に。でも彼等が更にデモをやってくれたなら、私の本の売り上げは200万部に達していたはずなのでがっかりした。」と語った。
それにしても「アジアの仲間」と必死に韓国を持ち上げ、黄文雄氏を「悪意の反中主義者」と表現したりと、相当痛々しいですね。この韓国に対する無条件の思い入れは何なのでしょうか。
ここで書かれている「白人コンプレックス」は、中国人や韓国人も相当なものである意味日本人も足下に及ばない面もありますが、カナダの白人社会で育った大西記者本人こそが強烈な白人コンプレックスの持ち主なのでしょう。今どき白人の方が優れているなんて思っているようなこういう思考回路は今時欧米でも時代遅れです。
そもそも日本の漫画のデフォルメキャラの場合、可愛さを表すのに幼児的な要素や愛玩動物的な要素を取り入れているから、全体的に丸っこくなったりつぶらな瞳になる訳であって、日本の漫画に出て来る白人キャラはそれとは全然違います。この人全く分かってないですね。
むしろアメリカの漫画に出て来るアジア人キャラは、人種が「キャラ」になるという多人種国家ならではの背景があるので(例えば『ジャングル大帝』みたいに、動物の種類がキャラになるようなコンセプトと近い)、だから『ムーラン』みたいにアジア人的な特徴の黒髪やらをやたらと大袈裟に描いたりしますが、日本の漫画も理解せずに勝手な分析をする大西記者も所詮はカナダ育ちの移民に過ぎないのだなという印象です。